さつじんすてっぷ! いち、に、さん!

ヘビーなしっぽ

殺人ステップ その一 プロローグ


「はっ、あはっ、はは、ははは!」


路地裏で、一人の少女が何かを殴っていた。

いや、違う。殴っているのではない。

その手に握られた鋭利な刃物を、倒れている男の腹に幾度となく突き刺し続けている。

奇怪で怪奇な笑い声が路地裏をコンサート会場に変貌させ、飛び散る血液が音楽を飾る。

少女の纏う赤く色づいた服からは、ツンと鼻を刺す鉄の激臭が漂い、ぴちゃり、ぴりゃりと音を立てながら一滴ずつ血液が滴っている。



この世界は、いつの頃からか異世界と混合していた。

元々魔法なんて概念は存在していなかったし、それこそ異世界だなんて絵空事の様なもの…というか絵空事だった。

しかしいつの頃か、唐突に世界は異世界と混合した。

混ざって一つになった世界は、今までの科学力などはそのままに、新たにたくさんの概念を得た。

魔法。スキル。武器。地形。生態系。

ファンタジーな小説にありがちな、魔物だとか、魔王だとかいう存在が無かっただけマシだっただろう。

もちろん世界は混沌に包まれ、秩序の二文字を忘れ去った。

そんな中、その様な異能と呼ぶにふさわしい力を得てしまい、暴走する連中なんてたくさんいた。

ヤクザだったり、マフィアだったり。それこそ、力に酔いしれた一般市民だったり。

先程も同じことを言ったがもう一度言おう。世界は混沌に包まれた。


そんな状況の中、血に染まった少女がいた。

殺人を愛し、殺人を生業とする。

人殺しに魅せられ、人殺しを渇望する。

死体で戯れ、死体を味わう。

常人とは決して呼べない。そんな少女が。


唐突だが、はじめに言っておこう。

この物語は、バッドエンド…というか、少女が殺される物語だ。

世間体に見れば、限りなくハッピーエンドだが。

少女が死ぬことでこの物語は結末を迎え、少女を殺すことでようやく世界には秩序が戻る。


これは、この少女が後世まで語られる連続殺人犯…いや、快楽殺人鬼となり…いや、既になっているな…まあいい。

そして、少女が殺されるまでを描いた物語なのだ。


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