第2話 袖を引いて、手を繋ぎたくなる。
悠くんと並んで歩く帰り道は、いつもよりゆっくりだった。
手は繋いだまま。
でも、なんだか今日は、もっと近づきたくて仕方がない。
指先が触れているだけじゃ足りない。
もっとぎゅっとしたい。
もっと、彼の温度を感じたい。
そんな気持ちが胸の奥からじわじわ溢れてくる。
「ひより、歩くの遅くない?」
「……う、うん。だって……手、繋いでるから」
言った瞬間、自分で自分の言葉に恥ずかしくなって、
視線が勝手に下を向く。
悠くんは少し笑って、私の歩幅に合わせてくれた。
「ひよりって、ほんとに手繋ぐの好きだよね」
「す、好き……だよ」
「なんで?」
「……悠くんの手、あったかいから……」
最後のほうはほとんど囁きみたいになってしまった。
言ったあと、耳まで熱くなるのが自分でもわかる。
悠くんは照れたように笑って、少しだけ指を絡めてきた。
その仕草がくすぐったくて、嬉しくて、また胸がいっぱいになる。
でも……それでも足りない。
もっと近づきたい。
もっと触れたい。
もっと、もっと。
気づいたら、私はそっと悠くんの袖をつまんでいた。
「ひより?」
「……ん」
「どうしたの?」
「な、なんでも……ないよ」
言えるわけない。
“もっとぎゅってしたい”なんて。
でも、袖を引っ張る指は、勝手に動いてしまう。
悠くんは少し考えるように私を見て、それから優しく笑った。
「ひより、もしかして……もっと繋ぎたいの?」
「っ……! ち、ちが……っ、ちがわないけど……!」
否定しようとして、できなくて、
結局どっちつかずの言葉が飛び出してしまう。
恥ずかしすぎて、顔が一気に熱くなる。
「言ってくれたらいいのに」
「……い、言えないよ……」
「なんで?」
「……恥ずかしいもん……」
小さく呟くと、悠くんは繋いでいた手をそっと引き寄せて、
私の手を両手で包み込んだ。
「じゃあ、俺から言うね」
「……え?」
「ひより、もっとぎゅってしていいよ」
その言葉だけで、胸がぎゅっと締めつけられる。
嬉しくて、苦しくて、泣きそうになる。
「……して、いいの……?」
「もちろん。ひよりがしたいなら、なんでも」
その優しさに、心が溶けてしまいそうだった。
私はそっと、繋いだ手に力を込めた。
ぎゅっと握ると、悠くんも同じ強さで握り返してくれる。
その温度が、指先から胸の奥まで染み込んでいく。
「……もっと繋いでたい……」
「うん。ずっと繋いでよう」
帰り道、私たちはいつもよりゆっくり歩いた。
袖を引いて、手を繋ぎたくなる気持ちは、
今日もまた止まらない。
次の更新予定
好きがこぼれて止まらない犬系彼女の、10の恋。 ここあ @PLEC所属 @rideno351
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