好きがこぼれて止まらない犬系彼女の、10の恋。

ここあ @PLEC所属

第1話 名前を呼ばれるだけで、好きが溢れる

「ひより」


その一言だけで、胸の奥がふわっと温かくなる。

放課後の廊下、帰り支度をしていた私の名前を、悠くんが呼んでくれた。

ただそれだけなのに、どうしてこんなに嬉しくなるんだろう。

顔が勝手にほころんで、足が自然と彼のほうへ向かってしまう。

「ん、どうしたの?」

自分でもわかるくらい声が弾んでしまって、ちょっとだけ恥ずかしい。

「帰ろ...一緒に」

悠くんは、いつもの落ち着いた声でそう言った。

その“いつも通り”が、私にはたまらなく嬉しい。

「うんっ!」

返事が早すぎた気がして、少しだけ視線をそらす。

でも、悠くんはそんな私を見て、ふっと優しく笑った。

その笑顔を見ると、また胸の奥があったかくなる。

ほんとに、好きがこぼれて止まらない。

並んで歩きながら、私はそっと彼の袖をつまんだ。

 手を繋ぎたいけど、言葉にするのはまだちょっと照れくさい。

でも、袖を引っ張るくらいなら......いいよね?

「ひより、手......繋ぐ?」

やっぱり気づかれてた...


小さく頷くと、悠くんの手がそっと私の手を包んだ。

あったかい。

指先まで、心まで、全部が満たされていく。

「今日、なんか嬉しそうだね」

「えっ......そ、そうかな」

「さっき名前呼んだとき、すごい勢いでこっち来たよ」

そう言われて、耳まで熱くなる。

「だって......呼ばれたら、行きたくなるもん」

「なんで?」

「......好きだから」

言った瞬間、胸がきゅっとなる。

恥ずかしいけど、でも言わずにはいられなかった。

悠くんは少し驚いたように目を瞬かせて、それから優しく笑った。

「俺も...好きだよ、ひより」

その言葉を聞いた瞬間、心臓が跳ねた。

嬉しくて、胸がいっぱいで、涙が出そうになる。

「......ほんとに?」

「ほんと。名前呼んだだけでそんなに嬉しそうにしてくれる彼女、可愛すぎる」

「可愛くない......」

「可愛いよ」

手を繋いだまま、悠くんが少しだけ指を絡めてくる。

その仕草がくすぐったくて、でも嬉しくて、また顔が熱くなる。

「ひよりって、呼ぶたびに嬉しそうにするよね」

「......するよ」

「なんで?」

「......好きだから」

さっきと同じ言葉なのに、今度はもっと素直に言えた。

悠くんは私の頭をそっと撫でてくれた。

その手の温度が、心の奥まで染み込んでいく。

「じゃあ、これからもいっぱい呼ぶね」

「......うん。いっぱい呼んで!」

名前を呼ばれるだけで、こんなに幸せになれるなんて。

自分でもちょっと単純だと思うけど、でも止められない。


悠くんが好きだから。

帰り道、繋いだ手はずっと離れなかった。

名前を呼ばれるたびに、胸の奥から“好き”がこぼれていく。

今日もまた、好きが止まらない。

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