いつもどおり
高校3年の冬、私は教室の窓際でノートに文字を並べながら、外の雪を眺めていた。
粉雪が静かに舞い落ち、白く積もる校庭を覆う。
暖房に温められた空気と、冬の冷たさが混ざり、胸の奥が少しざわつく。
「雪花、そっちの問題もう解けた?」
陽向が隣に来て、私のノートを覗き込む。
大学受験の直前で、皆が必死に問題を解いている中、陽向はのんびりと鉛筆を転がしながら笑う。
「うん、なんとか……」
私は小さく答え、文字をなぞる。
でも、手先の冷たさや胸の奥に走る疲労感は隠せない。
陽向は私の様子に気づかず、楽しそうに笑っている。
その無自覚さが愛おしくもあり、胸を締め付ける。
昼休み、教室の窓から雪景色に目を落とす。
友達の笑い声、紙が床に落ちる音、机を叩く小さな音――
すべてが遠く感じられる。
でも、陽向の笑顔だけは、すぐ近くにある。
「雪花、なんかつかれてる?」
「ううん、めっちゃ元気!」
私は笑顔で答える。
嘘は簡単だ。
でも、この小さな嘘が、私の命を少しずつ削っていることを知っている。
放課後、廊下を二人で歩く。
受験直前で教室はざわめき、塾のチラシを持った先輩たちが行き交う。
私はゆっくり慎重に足を運ぶ。
陽向は軽やかで、私の歩幅に合わせて少し待ってくれる。
その優しさが、胸に小さな痛みを生む。
「雪花、帰り道、塾まで一緒に行く?」
「うん……大丈夫」
嘘を重ねながら、私は今日も陽向と同じ時間を生きる。
好きな人といる時間を守るためなら、どんな痛みも耐えられる――そう思う。
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