第36話 制裁
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世田谷区のとある一軒家での出来事だった。
赤木晴斗はガムテープで雁字搦めにされた状態で恐怖に震えていた。
奥では父と母が数人の男たちに殴られている。
さらに奥では祖父と祖母が殴り殺されて、亡骸が横たわっていた。
「うぅぅぅぅぅぅぅ!」
父がそう叫ぶと男たちは「うるせぇ!」と言って、さらに殴り続ける。
「なぁ、金はもっとあるんだろう? 金目の物があるところを全部言わないとマジで殺すよ?」
そう言って、男達が父の口に張られたガムテープを剥がすと「ゴロツキどもが! 私を誰だと思っている! 私は大石重工の専務だぞ!」と大声で叫ぶ。
しかし、男たちは金槌で父を殴り続ける。
「貴様ら・・・・・・」
「専務さんって、偉いんしょ? だったら、金持っているよね?」
「おい、さっさと見つけたら、あれをセッティングするんだろう? 早めにやろうぜ?」
大体、何で、僕の家がこんなに堂々と強盗に遭わないといけないんだ?
僕が何をしたと言うんだ?
「晴斗君とか言うんだよね?」
茶髪の男が屈んで、こちらをヘラヘラと眺める。
「依頼主からさぁ、言われているんだよ? 薬物を売りさばいていた、実行犯の最後の一人が君だってさ? 俺、依頼主から君に会ったら、そう言うように言われたんだけど、何か、分かる?」
薬物の売買?
あれはつるんでいた学生グループの言いなりになって、学内で売りさばいていただけだ。
僕は悪くない!
「晴斗・・・・・・お前は何をしたんだ?」
父が顔面を血だらけにしながら、鬼の形相でこちらを眺める。
「父さん・・・・・・その・・・・・・」
「正直に言え! 何が目的でそんな犯罪に手を染めた! 金か? 金ならば唸るほどにあるだろう! それをお前は・・・・・・私は失脚するじゃないか!」
そうだよ。
父さんは常に昇進の事しか考えずに僕のことなんか一つも見ていなかったじゃないか?
僕は一人でいたくなかったんだ。
小さい頃はあれだけ大好きだった、祖父と祖母とも高校生ぐらいから考え方に違いが出てきて、まったく、話が合わなくなってしまった。
それ以降、僕は誰からも褒められず、自尊心も育たずに不良グループと行動を共にするようになって、一人でいることは無くなった。
一人ではなくなった。
だが、自分の小遣いは漁られ、年中、殴られ、蹴られていた。
普通に考えれば、そんな集団とは距離を置くのが当たり前だろう。
だが、僕は一人になりたくなかった。
一人でいても平気になれる程の自尊心と強さを持ち合わせることが無かったからだ。
だから、集団から孤立するということを避ける為であれば、犯罪をするという行為へのハードルは低かった。
これは全部、父のせいなんだ。
全て、父が金だけを僕に与えて、愛情を与えなかったから・・・・・・
「説教は済んだ? 金目の物ある?」
そう言って、父はさらに暴行され続ける。
「おっ? 金庫開いたぞぉ!」
「マジで?」
「近くにメモがあったから、その通りにやったよぉ!」
「うわっ? 金庫の意味ねぇじゃん?」
そう言って、男たちはガサゴソと父の書斎へと行く。
全財産が奪われていく・・・・・・
この家の崩壊だ。
「じゃあ、全部貰ったから、帰るわ? それとさ?」
男がある箱を置いていく。
そこにはタイマーが仕掛けられていて、五分で止まっていた。
「置き土産、人生最後の五分を楽しみなよ?」
そう言って、男たちはぞろぞろと家から出ていく。
「うぅぅぅぅぅぅ!」
「晴斗ぉぉぉぉぉぉ! お前のせいだ! お前のせいでこうなった!」
タイマーが五分から四分三〇秒を切る。
あれは・・・・・・爆弾なのか?
そうだとしたら、僕は死ぬのか?
大学で好きな女の子にもそっぽを向かれ、同学年からバカにされ、体の良いパシリとして扱われ続けた。
僕の人生が終わる?
そんなの嫌だ!
僕はまだ、学生生活を完全には楽しんでいない!
僕はまだ、死にたくない!
「うぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「晴斗ぉぉぉぉぉぉぉ! 貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!」
父の怒号と母のすすり泣きが聞こえる中で、僕は叫ぶしかなかった。
タイマーの残り時間が無情にもカウントされていく。
続く。
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