第35話 手打ち
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事件から三日後。
黒陽会会長の藤宮勇作は名古屋のフランス料理店の一室で目の前にいる、近畿黒陽会会長の石橋仙一を眺めていた。
「人の息子に手を出して、何か言うことは無いのか?」
「おたくらもウチの浜を殺したやろ?」
お互いが睨み据える中で藤宮は「結果論として言えば、国会開会中に抗争を控えると言うヤクザの不文律を破った罪は重い。先にやったのはそちらだ。あんたの指だけでは済まされないと思うが、どうなんだ?」と開口一番、切り出した。
「あれは半グレのガキどもがやった事や? ウチらは関係無い」
「じゃあ、何で、浜があのガキどもの事務所にいて、ウチの組員に撃たれたんだよ!」
藤宮は珍しく、声を荒げる。
「状況証拠って奴が揃っているんだよ! あんたたちはヤクザの風上にも置けねぇぞ! ウチの息子にも手を出して、本気でウチと戦争するなら容赦しねぇぞ!」
藤宮がそう言うと、石橋は「何や、そっちが強引な手段使って、会長の座を強奪したんが、悪いんやないか? 本来やったら、関西の連中が黒陽会の会長になる慣例があったんや? それをな、お前は崩したんやぞ! 罪が重いのはお前の方や!」と口から唾を出しながら、怒鳴る。
「実力が無い負け犬の遠吠えにしか聞こえねぇな? お前らが政治力、武力、経済力、シノギの能力全てで俺に劣るから、会長職も手に入れられなかったんだ? 今更、そんなのを嘆くなよ?」
「あんたとは本気でいつか、決着を付けんとあかんなぁ? というよりはウチの浜がやられたんや? どうするんや?」
「ウチの息子も殺されかけた」
「死んでへんやん! ふざけるなよ! 準構成員に育て上げていて、何が、可愛い我が子で収めようとしてんねん! あんな化け物だと知っていれば、こっちも手を出さんかったわ! おかげで浜があんなクソガキに撃ち殺されたんやぞ!」
「もはや、隠す必要もないか?」
「当たり前や? おたくらもお坊っちゃんの大学への潜入が出来なくなるとアカンやろうなぁ? 提案やけど・・・・・・いくらで片を付けようか? 指は無しやで?」
藤宮はにんまりと笑い出した。
「金で解決か? 浜が浮かばれないな?」
「今の時代はヤクザに任侠なんてのは無い、断言する。金や、世の中は金や、それだけで納得しないならば、こちらにもあるでぇ、奥の手?」
「言ってみろ?」
「東京の学生に売っていた、薬物のシノギの権利はおたくらに渡す。半グレのガキどもに任せていたが、あれはダメや、ウチも関東進出を狙っていたが、やはり、関西が一番や。あんたらにあれはやる」
上々の成果だ。
石橋は昔気質のヤクザの傾向があると思えたが、案外に柔軟性があって、助かった。
「分かった、それで手打ちで行こう、警察の捜査を攪乱する」
「藤宮・・・・・・お前、どういうからくりになっているんや? 警察の捜査をこうも攪乱させるなんて? 何を使ったんや?」
「石橋、我々はヤクザだよ、悪人なんだよ? 故にどんな行ないも出来るのさ?」
そう言って、藤宮は子牛のポワレに舌鼓を打つ。
そして、電話をかける。
結鶴にだ。
「ご苦労だった、仕上げをしてもらう、アルバイトの連中は揃っているだろうな?」
(問題ありません)
「終わったら、休め。夏休みになったら、本部へ来るのも忘れるな」
そう言って、藤宮は電話を切った。
「自分の息子に最後の最後で何をさせるつもりや?」
石橋が険悪感を目に現す。
「シノギだよ、結鶴は私の後継者にする」
藤宮は赤ワインを飲みながら、微笑を浮かべていた。
続く。
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