第30話 不穏分子
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中田恭介は渋谷署に戻ると、すぐに令の言っていたことを思い出した。
原宿署での事件においては渋谷署は距離的には近いので、応援を出せるという形で介入できるとしてだ。
現段階では令の仕入れた情報が中田の頭の中を支配していた。
要するに警察内部に内通者もしくは捜査の妨害工作を仕掛けている奴がいるらしいということじゃないか?
ヤクザさんがふざけた事をしてくれるなぁ?
そのおかげで件の結鶴坊やと言われる野郎が、好き放題やらかしているワケだ。
ふざけてやがる。
中田はそう思いながら、地域課の小太りの巡査に目を向ける。
橋本巡査か。
勤務態度はどちらかと言えば、悪い方で非番の日はアイドルの追っかけをして、金銭的には年中金欠の典型的なゴンゾウ(不良警察官の隠語)と来た。
都合よく、コイツが内通者というワケではないと思うが・・・・・・
「よう、橋本?」
橋本はおどおどとしながら、こちらを向く。
「中田係長、何か御用でしょうか?」
「最近、どうかなぁとか思って? お前、アイドル追っかけているだろう?」
「そうですね? JPN47の握手券を買う為に粉骨砕身しています。最近は地下アイドルにもはまっておりまして、新宿でドルフィンッ子という名のアイドルたちのコンサートへ行くのですがーー」
JPN47とは日本全国からご当地出身のアイドルを集めた、グループらしいが、中田からしたら、どうでもいい話だ。
その情熱を仕事にぶつけろ、橋本。
だから、お前は周りからもバカにされる、ゴンゾウでしかないのだ。
というか、よく、警察官採用試験に受かったな、こいつ?
中田は橋本を思いっきり嘲笑したい気分になっていた。
「中田係長。よかったら、ドルフィンッ子のコンサートにーー」
「行かねぇよ。俺にとって、アイドルはおニャン子の一点張りだ」
「おニャン子って何なんですか?」
ジェネレーションギャップか?
中田はそう思うと橋本に「邪魔したな? それとな?」と言って、同人の隣に立つ。
「余計なことすんなよ? ゴンゾウのくせによぉ? 捜査の邪魔でしょうがねぇんだよ? さっさと、辞めるか、拳銃自殺してくれよ?」
中田がそう言うと、橋本は今にも泣きそうな表情で「それはパワハラじゃあーー」と言い出すが「黙っていろ、お前の勤務評価は最低だ。俺はなぁ、体の良い公務員でございとかでサッカンやる奴が一番嫌いなんだよ。特にお前みたいな趣味ばかりで会社の仕事をしない、サッカンをやりながら、会社の本分を忘れている奴が一番な?」と言って、肩を叩く。
橋本はそのまま、泣き出したが、渋谷署の面々は怪訝そうな顔をして、どこかへ行く。
橋本とは警察内部ではしょせんはその程度の男だ。
しかし、要注意人物であることには変わりはない。
そうだなぁ・・・・・・
中田はトイレへ行くと、個室に入り、令に電話した。
「来るか? 渋谷署? めぼしい奴が見つかったと思うぜ?」
電話の奥で令が息をのむのを感じた。
中田はこの瞬間、何故か勝ち誇った気分を抱いていた。
続く。
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