第22話 脅迫
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警察庁刑事局捜査第一課課長の水野新平警視長は自宅で警察庁への出勤前に朝刊を読んでいると、息子がいないことが気になった。
「新平は?」
「また、朝帰りじゃないですか?」
自分の妻が興味無さそうにそう言うと、水野は気にせずに朝刊を広げていた。
まぁ、問題を起こさなければいいが?
自分の息子は警察官僚には恥じない子だと思っている。
多少の朝帰りは英雄色を好むと考えれば、必要な事であろう。
大学にさえ、通ってくれれば、問題ない。
そう考えていた時だった。
「そう言えば、あなた相手に郵便物届いているけど?」
「郵便物?」
郵便物とはどういう物か?
役職的に何かしらの脅迫物的な事も考えられなくはないが、妻から郵便物を受け取る。
「部屋に入る。中に入るな」
「良いんですか? 会社に行かなくて」
「まだ、時間がある。朝食の後片付けをしなさい」
そう言って、水野は郵便物を持って、自分の部屋に入る。
妻に対して、冷淡且つ暴虐な振る舞いかと思われるが、妻は裏で若い男を作っているのは感知していた。
故にもう、彼女も私には興味が無いのだろう。
私自身も警察庁で課長ポストに就いたので、それ以上の昇進は望まない。
そう思いながら、郵便物を外から撫でる。
ボイスレコーダーだ。
何だ?
私は女遊びもほとんどせずに会社内部でも何もやましいことはしていない。
何なのだ、これは?
そう思いながら、封筒を破り、ボイスレコーダーに入っているファイルを起動する。
(俺はあんたたちを捨てることが出来る)
聞いたことの無い、男の声だった。
(分かっていないな? 俺の親父はなぁ・・・・・・警察庁のーー)
新平?
明らかに新平の声だ。
自身のの息子が父親である、自分の事をひけらかす精神も驚きだが、何故、新平がこんなことに・・・・・・
すると、ボイスレコーダーから銃声が聞こえる。
(あんた、分かっていないな? 父親が偉いだけであって、あんたは無能なんだよ。もう一度、聞く。薬物のルートはどこだ?)
薬物?
何を言っているんだ、この男は?
ウチの息子がそんな事をするわけないだろう?
そんなはずはない。
恐らく、警察庁刑事局の捜査第一課長の私に対する脅迫で、私に対する見せしめなのだろう。
だが、息子は確実にそうしていない。
水野はそう信じ切っていた。
(分かった! 言う! 言うから!)
言うとは何だ・・・・・・
新平、お前は本当に薬物なんかに手を出したのか?
水野は膝から崩れ落ちた。
(だから、縄といてくれよ・・・・・・分かったぁ! クラブだぁ! 六本木のアクロバットってクラブで遊んでいたら、刑罰会の浅野って奴に学内で薬物を広めろと言われたんだぁ!)
刑罰会だと!
あんな半グレ組織と新平は交際していたのか!
水野はもはや、自分の息子の浅はかさに悲しさと怒りが綯い交ぜになった感情を抱かざるを得なかった。
(クラブのVIP会員だったから、サークル仲間で遊びに行っていたら、向こうから接触してきて・・・・・・なぁ、早く、解いてくれよ!)
すると、そこに銃声が響き、ボイスレコーダーの音声は途絶えた。
最悪だ・・・・・・
現職の警察官僚の息子が半グレと交際していただけではなく、拉致、監禁までされた。
そして、生死は不明。
どう、上に報告すればいいんだ?
その時だった。
水野の私用のスマートフォンに見知らぬ番号から電話があった。
相手のかけている場所は家の近くからだった。
「もしもし・・・・・・」
(どうです? 自分の息子がチョンボを犯した具合は?)
成人を超えた、男の声だった。
「何が目的だ? 所属を名乗れ」
(会いませんか? 我々と)
「誰が、反社会勢力などと会うものか! 私は警察庁のーー」
(では、この音声は警察庁に送らせてもらいます)
男はそう言うと「よろしいですね?」と言ってきた。
バカな・・・・・・
そんな事をすれば、私だけではなく、会社全体に迷惑がかかるじゃないか・・・・・・
それだけは何としても、避けなければいけない。
「どうすればいい?」
(言ったでしょう? 会いませんかと?)
「息子は無事なんだろうな?」
「自分の心配をした方がよろしいのでは? では、SMSに指定した時刻と場所を送るので」
そう言って、男からの電話は切れた。
「あなた! 時間よ!」
妻の声が今は無神経に聞こえる。
水野は自分の警察官僚としてのキャリアが終わった事を痛感していた。
続く。
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