第23話 襲撃
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正午過ぎ。
講義が休講になったので、青川学院大学から帰ろうとする帰り道で、結鶴は後ろからベイカー・鈴がやって来るのを感じ取った。
「結鶴君、寝不足?」
「ベイカーのリサイタルに付き合ったからじゃないかな?」
「いや、数日中に寝とけよ。一日、寝倒すとかさ?」
「ちょうど良い具合にバイトが入って、寝倒せなかったんだよな? 結局、あの日は二十四時間営業だし」
「コンビニだ・・・・・・私もコンビニでバイトしているけど?」
そう言って、二人で表参道駅周辺をプラプラと歩いていた。
「バイクは今日無いの?」
「あぁ、直している」
先日のベイカーとのカラオケ三昧の時にタイヤがパンクしたので、バイクを今は事務所に置いてあるのだ。
俺の唯一の友達のバイクが・・・・・・
「そっかぁ・・・・・・」
「バイト行かなくていいのか?」
「私、新宿まで行くけど、結鶴君は違うところ?」
「いや、俺も新宿に行く」
「じゃあ、途中まで一緒に行こうか?」
そう言っている時だった。
目の前のフードを被った男がすれ違いそうになった瞬間に毒針を自分の首筋に当てようとしたのを瞬間的に察知した。
すぐに相手の毒針を持つ、手を取ると、一本背負い投げでフードの男を投げ飛ばした。
「グゥ!」
まさか、こうも早く、刺客が来るとはな?
「ベイカー!」
「何! 何なの!」
結鶴は鈴の手を取ると、すぐに走り出した。
すると、目の前に金属バットを持った、男数人が現れる。
男たちが金属バットを振り上げると同時に結鶴は男一人の目を指で潰すと、右側の男の溝内にボディブローを放つ。
三人目の左にいる男が振り上げた、バットの打撃をベイカーの手を握りながら避けると、右ストレートを男の顔面に放ち、ボディブローを溝内に三発。
最後は膝蹴りで仕留めた。
「行くぞ!」
「何なの! こいつら!」
「俺に恨みを持っている奴らさ!」
「ねぇ、結鶴君、前から思っていたけど・・・・・・」
「何だ?」
「アルバイトって、もしかして、危ない系?」
結鶴は鈴の問いかけには答えずにタクシーを捕まえようとした。
すると、目の前に「結鶴坊やぁ! 俺たちと一緒にあーそぼぅ!」と明らかに堅気でない男達が十数人現れる。
「お前ら、警察来るぞ?」
「警察なんか、怖くないもん?」
「その前にお前を殺して、女を頂く」
下品な笑いが、男たちから漏れる。
十数人対実質的に戦える人間が一人か・・・・・・
街中ですぐに警察が呼ばれ、SNSで拡散される可能性を度外視の暴力を働く時点でこいつらは半グレの可能性が高いが、逃げるにしても、この数の違いじゃあ、追いつかれる。
どうする・・・・・・
そう思った時だった。
トヨタハイエースが目の前に止まり始める。
「おうぅぅ! 何か、楽しいことになっとるやんけ?」
真木がバンの後部座席から降りると、宮崎と大園もその後ろから付いてくる。
真木の手元には日本刀があった。
「えっ・・・・・・あれ、日本刀?」
鈴は唖然とした表情を浮かべる。
「真木! よせ! お前は現役じゃない!」
「この日の為に密かにトレーニングしておったんですわぁ、若! かつては月下の剣豪と恐れられた、ワシが久々に日本刀をーー」
そう真木が能書きを垂れる中で横から、半グレの構成員が金属バットを振り上げる。
「真木ぃぃぃぃ!」
しかし、気が付けば、構成員の両手が切断されていた。
「えっ・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ! 腕がぁぁぁぁぁ!」
「兄ちゃん、いきるのも良いが、ワシの居合はお前の鈍らバットじゃあ、相手出来へんで?」
そういう、真木が不敵に笑う。
「何だ・・・・・・あいつ! やべぇ奴だぞ!」
「てめぇら! 分かってんのか! たった今、お前等は国会開会中に抗争を起こさないっていう、ヤクザの不文律を犯したんだぞぉ!」
「お前らはヤクザやない。だから、そのルールは適用外や、悪ガキども! 宮崎、大園、やれ!」
真木がそう言うと、宮崎がコルトパイソン357マグナムを取り出して、男たちに発砲する。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
「何や! 銃持っとらんのかぁ! ワシも行くでぇ!」
そう言って、真木が男たちの懐へ入ると刀を抜き、一気に四人の男が肉片と化した。
「真木! 宮崎! 大園! よせ! ここは街中だぞ!」
大園はナイフを取り出して、男たちを切りつけて、辺りには鮮血が飛び交う。
気が付けば、最初にいきっていた男一人が取り残されていた。
「申し訳ありませんでしたぁ! 命だけは! 命だけは!」
そういう中でパトカーのサイレンが鳴り響く。
「若! 嬢ちゃん! 乗るんやぁ!」
そう言われた後に結鶴は鈴を連れて、バンへと乗り込んだ。
「えっ・・・・・・もしかしてだけど、結鶴君のアルバイト先って・・・・・・ヤクザ?」
「正解や! 嬢ちゃん! ただし、ヤクザには極道さんと言わないと、五時間は説教されるで! ちなみにこのお方は黒陽会会長の実子にして、次期後継者のーー」
「余計なことを言うな! 殺すぞぉ!」
結鶴がそう怒鳴ると、車内が水を打ったかのように静かになる。
そして、車は急発進する。
「・・・・・・」
「ごめん、黙っていて」
「私・・・・・・帰れるかな?」
「帰すよ。迷惑はかけないつもりだよ」
結鶴は鈴をまともに見られなかった。
最悪だ・・・・・・
ベイカーに俺の正体がバレた。
あれ程に用心していたのに。
結鶴は己の不手際と救援とは言え、やり過ぎた手法を取った、真木たちに恨みを抱かざるを得なかった。
続く。
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