第17話 デュエット

22


 鈴がアイドルの曲を歌う。


 ノリノリで、中々に上手かった。


 だが、自分にとっては根本的な問題がある。


 歌う曲が無い・・・・・・


 そもそも論として、カラオケに行ったことがあまり無いのと、最近の曲を知らないので、何を歌えば良いか分からない。


 仕方ないから、会長が昔歌っていた、演歌を流すか。


 鈴は歌い終えた後に「さっ、結鶴君の番だよ」と言ってきた。


 そして、演歌の独特のメロディが流れる。


「演歌? 凄い、渋いんだけど?」


 そして、結鶴が歌う。


「地味に上手い!」


 とにかく、必死に歌った。


 何故だか、知らないが、必死に歌った。


 選曲の時点で失笑を買うかと思ったが、自分にはこれが精一杯だ。


 そして、歌い終える。


「上手いね?」


「今時の大学生が演歌とか・・・・・・鼻で笑えよ」


「でも、私のお婆ちゃんも演歌好きだから、おかしいことじゃないと思うよ? それにレパートリーが無い、結鶴君にしては頑張った方じゃない? うん」


 鈴がにんまりと笑う。


「ベイカーってさ?」


「何?」


「慣れると失礼な奴だよな?」


「結鶴君だからだよ、こういう言い方出来るの?」


 それ、どういう意味だ?


 若干の戸惑いは感じたが、鈴の二曲目が入る。


 今度は恋愛を歌った、バラードだ。


「愛とかどうだとか多いなぁ?」


 鈴は気にせずに歌うが、歌い終わった後に「人は愛が無いと生きていけないのさ?」と言って、指で銃を作り「バキューン!」と撃つ。


「指で銃を作るとか意外と発想が時代遅れだな? そういうのを好むのはっきり言って、おっさんだぞ?」


「そうねぇ・・・・・・意外とオジサン相手にするの苦にならないんだよね? あっ、変な意味じゃあないよ?」


 結鶴は「そうかい」とだけ言う。


「何! その反応! 本当にそうだから! 私、不倫とか大嫌いだからね!」


「いや、そういうことを強調する奴は怪しいぞ」


「結鶴君は結構なサディストだよね?」


「よく言われるよ」


「優しい人の方が重宝されるよ?」


「あっそ」


 そう言って、結鶴は二曲目に走る。


 今度は特撮の主題歌だ。


「今度は特撮・・・・・・」


 今度も必死で歌った。


 そして、鈴は呆れ顔を浮かべていた。


「うん、地味に上手いんだけどさ? 本当にレパートリー無いの?」


「いや、最近の歌を知らないんだよ」


「・・・・・・ふーん」


 そう言って、鈴は曲を入れる。


「歌うぞ、相棒」


「えっ? デュエットかよ?」


「最近の歌というのをねぇ、叩き込まないと、いい具合にバカにされるよ? 後、みんなが知っている曲とか?」


「知らない、これしか知らないから」


「いいから、歌う」


 そう言って、鈴と一緒にバラードのデュエットを歌う。


 途中で歌詞を見ながら、歌うので、噛んだり、言いよどんだりするが、鈴はよどみなく歌う。


 途中、声を重ねる、いわゆるハモリの部分に入る時、鈴は自信満々に勝ち誇った顔を浮かべる。


「歌唱力で主張してくるなよ・・・・・・」


 結鶴は笑いが堪えられなかった。


 そして、曲が終わる。


「はい、よくできましたぁ」


「・・・・・・十年分のエネルギーを使ったな?」


「早死にするねぇ? まだ、続けよう」


 もう止めてくれ・・・・・・


 そう思っても、鈴は延々と歌い続ける。


 気が付けば、結鶴が歌う回数も減り、二人だけのカラオケ会は鈴のリサイタル会場と化していた。


「ノってるかぁぁぁぁぁぁぁぁい!」


 自己満足極まりねぇ。


 だが、結鶴は心の底から笑っていたことを知覚していた。


 時刻は午前二時三十分。


 任務の準備をしなければ、いけないのは頭で分かっていたが、今、この瞬間が結鶴には楽しくてしょうがなかった。


 続く。


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