第16話 娯楽
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「宮崎、至急、ウチの人身売買リストから適当な女をリストアップしてくれ」
結鶴が切羽詰まった様子でそうスマートフォンで宮崎に通話する。
(品位のある、若はウチの人身売買ビジネスを嫌いますが、腐ったサークルから女でも要求されましたか?)
「鋭いな、俺が児童養護施設出身だから、女を調達しないと入会を認めないと、言われたよ」
(そういうお坊っちゃんはウチのリストに乗っかっている、貧乏人たちじゃあ、満足しないでしょう。良家の令嬢や極端なエリートがとんでもないことをするのが男は見たいんですよ)
「そういう系統にも造詣が深い、宮崎先生ならではの見解だな?」
(その筋のコンテンツのスカウトが売れる奴はそういう定理が働くと言っていました。そうだなぁ・・・・・・若が仲良くしている、あの子を使えば良いじゃないですか? あのハーフの女の子)
若者の間で今ではダブルと呼ばれる存在を旧世代の定義のハーフという言い方をする時点で宮崎はしょせん、紳士的なふりをしていても、教養の無いヤクザである事を物語っている。
結鶴はそれを聞いた瞬間に宮崎に「お前、ハーフじゃなくて、ダブルな? そして、聞き捨てならないが、俺にあの子を売れとか言っているのか?」と静かに問い詰めた。
すると、宮崎が(若のバイオレンスな部分が出ましたね?)とどこ吹く風だ。
「ベイカーにはそんなことはさせない。俺はあの子をーー」
「私が何?」
後ろから、ベイカー・鈴が呼びかけて来る。
「後で電話する」
宮崎は(・・・・・・申し訳ありませんでした)と言うが、乱暴に電話を切った。
「ベイカー、盗み聞きは良くないぞ?」
「いや、私のことを誰かと話していた?」
「気のせいだろう? 自意識過剰だよ」
「一言多いな?」
そう言うと、結鶴と鈴は二人で歩いていた。
「バイトあるんだろう?」
「いや・・・・・・今日はシフト空いているな? 結鶴君もバイトあるんじゃないの?」
「俺は無い」
二人の間で沈黙が走る。
「・・・・・・遊びに行く?」
「何処に?」
「えっ? 学生で遊びに行くって言ったら、限られてくるけど・・・・・・カラオケとかどう?」
「・・・・・・俺、歌下手なんだよなぁ?」
「私は上手いんだよ? 結鶴君、レパートリーが無い方だろうけどさ? 行こうよ」
そう言って、鈴は結鶴の手を引く。
「待て」
「えっ、行かないの?」
「バイクがある、乗れ」
「バイク? 電車で行こうとーー」
「電車代がかかる。苦学生は電車代をケチるもんだろう」
そう言って、結鶴と鈴は駐車場へと向かう。
「高そうだね? そのバイク」
「ホンダCRF250Lだな。貰い物だよ」
「・・・・・・聞いていいかな?」
「何だ?」
「誰から、貰ったの?」
「・・・・・・世の中では父親と言われる存在」
それを聞いた、鈴は「そっ・・・・・・」とだけ言った。
恐らく、このやり取りだけで自分と会長の関係性を察したのだろう。
この子は利口な子だ。
恐らく、ヤクザの関係者という事自体を知らなくても、自分が何かしらの事情を抱えていることも察しているのではないか?
それならば、関係が破綻しても良い。
そうすれば、もしかしたら、彼女を売れと言う、宮崎にも反抗できるかも知れないのだから。
「行かないの?」
「何に?」
「カラオケだよ。結鶴君、レパートリー無いからって、お経とか軍歌とか歌わないでね?」
それを聞いた、結鶴は苦笑いを浮かべた。
「歌うかもな?」
「そしたら、ドン引きだわ」
結鶴は鈴にヘルメットを渡した後にバイクにまたがる。
鈴も後ろに乗って、結鶴の胴体に抱き着く。
「あぁ、ごめん。危ないと思って」
「いや、道理には適っている。行こう」
そう言って、結鶴はバイクを走らせる。
昼下がりの大学は牧歌的だった。
続く。
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