第15話 受ける嘲笑

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 結鶴は鈴と食堂で話し込んだ後にようやく、任務に取り掛かることにした。


 件の学生サークルのある一室前に着くと、深いため息を吐いた。


 国際政治平等研究会。


 平等って言葉が付く時点で、低能な学生のサークルの予感がする。


 時代は新自由主義なんだよ。


 だが、そんな無駄な考えとは別にすぐに冷静な思考に勤めた。


 ここは国際政治を語るサークルとは名ばかりの薬物乱交サークルであることは調査済みだ。


 そんな破廉恥である程度の情報を知っている、学生を拉致、監禁、あわよくば、コンクリ詰めにして、刑罰会との繋がりを掴む。


 そして、そこの製造工場を抑えて、最終的には刑罰会を潰し、薬物のルートを奪う。


 これが会長の厳命。


 ドアの前にいるだけで苛立ちが込み上げてくるが、結鶴は意を決して、ノックした。


「はい、はい」


 ドアから出てきたのは、眼鏡面をした細い色白のガリ勉と言った感じだった。


「・・・・・・何?」


「あの・・・・・・サークルに入りたいんですけど?」


「・・・・・・ダメ」


「えっ?」


「君、ルックス良いから、気に入らないなぁ? 女の子を引き付けるというおとり役にはなるが、僕ら、上級生が困るじゃないか?」


「えっ? そんな、僕は入れないんですか・・・・・・」


 ドストレートに本来の目的を話し始めたぞ、こいつら。


「僕らはねぇ、君のような身体能力に恵まれていて、ルックスも良い男が嫌いなんだよ」


「いや・・・・・・僕、運動神経は悪いですよ?」


「筋肉付いているじゃないか!」


 そうガリ勉が怒鳴ると、奥から「いいじゃないか? 細山田君。彼は有望だよ」と茶髪の塩顔系イケメンの男が現れた。


 これだけのイケメンがこんなサークルにいるなんて、世も末だな?


「ちょっと、入りなよ」


 もう、後戻りは出来ないな?


 一応、サークルには同性愛の志向は無いと聞いているから、男相手に犯されるという事態は想定されづらいが、女がいたら、要注意だ。


 蔑視すべき存在の女から、行為を求められる事程の苦痛は無い。


「えぇ、結鶴君じゃん!」


「何、知っているの?」


「秋山結鶴。可愛くて、体つきが良いっていうアンバランスさとこれまた、アンバランスな寡黙さがたまらないんだよなぁ~」


 そういう、上級生と思われる、女子学生は長い髪をかき上げる。


 こんな、サークルに中々の美人がいるが、それも世も末だという証拠。


「フーン。由美恵が一目置くか?」


 塩顔イケメンはそう言うと「秋山君って言ったか?」と言って、パイプ椅子に座る。


「はい」


「ここ、国政政治を語るサークルだと思う?」


「・・・・・・僕は別の目的で来ました」


 そう言って、結鶴はニタリと笑う。


「このサークルの真の理由を知っているんだね?」


「えぇ」


「・・・・・・将来、有望だね? ウチはガードが固くてね? 何しろ、非合法的な活動を行っている」


「そこまで、話していいんですか?」


「警察に言っても、無駄だよ。ウチの親父が警察庁刑事局の捜査第一課長なんだ」


 最悪・・・・・・


 警察庁の刑事局の捜査第一課長って、やる気が無くて、有名な水野って奴だったな。


 その水野の息子が「結鶴君のお父さんは何やっている?」と聞いてきた。


 親ありきだ。


 子どもは頑張らないで、親の意向と学歴で飯を食っている典型例だ。


 一般社会はただでさえ、人手不足なので、親の力と学歴で飯を食う連中は淘汰しようという空気が育ちつつある中で、自分たちは時代に淘汰される貴族主義者であるという事に気が付かない、愚かなゴミども。


 そう思いつつも、結鶴は「僕、児童養護施設育ちなので・・・・・・」と言った。


 嘘ではない。


「はぁ?」


「いや、あの・・・・・・」


「ダメだな? じゃあ? 親の力使えないなら、君、無能」


 こいつ・・・・・・


 ふざけるなよ、親の七光りどもが?


 しょせんは時代に淘汰される無能な貴族主義者でしかないくせに人の出自を嘲笑う奴が一番嫌いな人種だ。


 ヤクザだとか、妾の子だとか、児童養護施設出身云々かんぬんじゃない。


 一般社会においても、人としてこいつらは欠陥品だ。


 そういう差別主義者は一般社会の人事においても淘汰されるという流れがある中で、未だにこのような差別主義者や貴族主義者に権利や人権が許されるというのが結鶴には許せなかった。


 時代が過渡期にあるとは言え、一部の企業においては未だに貴族主義が蔓延していて、こういう実質的には親と学歴という印籠で飯を食う奴が優遇されるのだ。


 だったら、そういう連中に犯罪を仕掛ける。


 そんな連中相手ならば、いくらでも非道を行なえる。


 こいつらは敵だ。


 ぶっ殺してやる。


 だが、今、その怒りをぶつけたら、潜入が出来なくなり、会長からとんでもないペナルティを与えられる。


 今は堪えるしかない。


 後で全員を殺すが・・・・・・


「そんな? 僕、入れないんですか?」


「秋山君、モテるでしょう?」


「そんなことは無いですけど・・・・・・」


「ウチの大学は美人揃いだからさ、女の子を一人同伴で連れてきたら、入会させても良いよ? 児童養護施設出身の秋山結鶴君?」


 下品な笑いがサークルの部室を包む。


 ぜってぇ、こいつら、全員、コンクリ詰めにする。


「分かりました・・・・・・」


「期限は三日以内だ。早くしろよ、親無し」


「はい・・・・・・」


 演技で泣いているが、ここまで苛立ちを覚えたことは久々だ。


 学生たちに対する処刑方法をリアルに考え始めている自分がいる。


 ただ、問題は女をどう調達するかだ?


 気が乗らないが、ウチの会社がやっている、人身売買に頼らざるを得ないか?


 結鶴は宮崎に相談することを考えていた。


 続く。

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