第14話 接触
19
神田令は寺岡明を引き連れて、新宿歌舞伎町にある真木組の事務所へと向かっていた。
「何度も言いますが、現職のサッカンがマルBと接触すると、後で監察に睨まれますよ?」
「もう、すでに監察には知れ渡っている。俺は本部には戻れないかもしれない」
「そんな・・・・・・警部補昇任試験に落ち続けているからって、自棄にならないでくださいよ」
「寺岡、巡査部長昇任試験を受けるんだろう?」
「・・・・・・気にしています?」
令はそれっきり、黙ってしまった。
そして、真木組の事務所前に行くと、監視カメラの多さや組員の警備の多さが異常が目立つ。
だが、慣れてしまえばどうという事は無い。
二人は真木組の間では顔が知れているので、簡単に中に入れた。
「何や、ボン。ようやく、ヤクザになる決心ついたんか?」
真木組の組長の真木が葉巻を吸いながら、そう語り掛ける。
「結鶴君は元気か?」
「・・・・・・若に何の用や?」
「最近会っていないなと思ってさ?」
「若は忙しいんや? 最近の大学生はタイパ言うて、時間を気にする。お前ら、お巡りと会うのも若にとっては時間の無駄やと思って、ワシが会わせんのや? 用件は何や?」
「結鶴君と話がしたい」
それを聞いた、真木は「若は今、忙しい。アルバイトや勉強ばかりや? 察してくれ。若の堅気な大学生活を邪魔せんといてや?」と面倒くさそうな表情を浮かべる。
真木組が秋山結鶴にここまで、警察と接触させたくない理由は何だ?
以前、まだ、結鶴が高校生だった頃は令も会話を許されていたが、ここ最近は結鶴と会うということ自体が、真木組によって、避けられているような感覚を覚えさせる。
「結鶴君は準構成員じゃないよな?」
「何や、それ?」
「ウチの暴対課は結鶴君がこの組のシノギを手伝っていると踏んでいるそうだ」
「それ、内部情報ちゃうか? 教えてええんか? もっとも、若は一切、ウチのシノギには関わっておらんけどな?」
「じゃあ、何で、事務所に出入りしている?」
「若はなぁ、あぁ、見えて、か弱いんや。高校時代も年中イジメられて、泣きながら、事務所に駆け込んできて、組員がイジメっ子に脅しを入れて、イジメを仲裁したということがあって以降、事務所に入り浸っておるんや。若はあぁ、見えて、頭も悪いから、ウチの組員が勉強も教えておる。高卒とか中卒が大半のウチの会社で大学生が勉強教わる時点で、大学は金があれば、誰でも入れるところいうのが証明されたと思うでぇ」
嘘だな。
結鶴の腹筋が割れているところを令は事務所内で見たことがある。
令も警察内では武闘派で通っているので、匂いで分かるが、結鶴は逆に学校内でイジメられるどころかむしろ、恐れられて、逆に孤立していた口ではないかと思われる。
そして、結鶴が家庭教師のアルバイトをしているのもこちらは知っている。
その結鶴がお世辞にも頭が良いとは言えない、武闘派ヤクザ集団の連中に勉強を教わるとは思えない。
ますます、怪しさが漂うが証拠が無いので、何とも追求しがたい。
「そうかぁ・・・・・・若が警察内でそう思われておるかぁ、対処せんとなぁ?」
「若とか言う時点で、確実に関係者だろう?」
「お前も若が会長の息子というのは知っているはずや?」
妾の子だがな?
だが、結鶴は黒陽会会長の藤宮勇作に正妻の子以上に期待を掛けられていると言うのは、あるルートからの情報で知っていた。
「分かった。結鶴君に神田が来たと伝えてくれ」
「だから、言うたやん。若は忙しいんやって」
「待っていると伝えてくれ。じゃあな」
そう言って、令と明は事務所を出て行った。
そして、尾行が無いことを確認しつつ、新宿署へ戻り、トイレの個室へと向かう。
「男二人でトイレの個室入るのはちょっと・・・・・・」
「黙れ、俺はそんな趣味は無い」
そして、電話をかける。
(もしもし?)
「平岡さん、当たりです。秋山結鶴は関与しています」
電話の向こうにいる、国家情報局に出向している、平岡亜里沙警部補に例はそう伝える。
(刑事の勘ほど、当たらない物は無いけど、神田が対面した結果ならそうね。そうかぁ・・・・・・官邸も秋山結鶴の動向に注視しているのよね?)
「やはり、結鶴は準構成員だと?」
(ずぶずぶよ。殺しの仕事もしているヒットマンで大学内では黒陽会の工作員として、従事しているのよ。ただ、与野党にも黒陽会の影響下にある議員が多くて、ハムもそれを知っているけど、黙認しているというのが事実よ。渋谷でのSPとの騒動の時に動画取られたけど、大して、騒ぎにならなかったのは黒陽会会長の藤宮が国家公安委員長の松木に圧力をかけて、もみ消したと言うのが本当のところよ?)
「大学生のヤクザか・・・・・・頭が良くて、悪いとか一番、質の悪い犯罪者ですね」
(ハムも奴がチョンボ起こすのを待っていてねぇ? SPをボコボコにした時は千載一遇のチャンスだったんだけどさ・・・・・・国家公安委員長まで抑えられているとなると、やりたい放題よね?)
平岡がため息を吐く。
(今のところは暴対課が仕切っていて、刑事部長とかも結鶴坊やと黒陽会まるごと、潰すつもりらしいけど、そういう背景は知っているのかなぁ・・・・・・ハムはそういう大人の事情があるから、結鶴坊やを平穏無事に大学ぐらいは卒業させても良いんじゃないかと思っているらしいけどさぁ)
「堂々と犯罪行為しているじゃないですか?」
(まぁ、内容は酷いと思うけど、制裁する相手が結構な社会悪も中には含まれているから、個人的には結鶴坊やは嫌いじゃないのよ。それに可愛いし)
「面食い」
(うん、ごめんよ。極右集団のハムの中で韓流とかに沼っているぐらいだから、面食いなのよね、私? ちなみに仕事とプライベートは分けているから、北朝鮮には情報流さない。安心してね)
「自分がハムに所属していないのが、これほど悔しいことは無いですよ。そしたら、平岡さんを粛正するのに?」
平岡は失笑を漏らす。
(まぁ、何が狙いかは黒陽会の幹部クラスの協力者から聞いたけど、青川学院大学内で横行している、薬物のルートを警察よりも掴むのが目的らしいよ)
「そして、処刑ですか?」
平岡は(ビンゴ)と言い出す。
(まぁ、大学で薬物を蔓延させているのは刑罰会なんだけどさ?)
アサルトライフルなどで武装をした、例の狂暴な半グレ組織か?
ヤクザと半グレの戦争が起こる可能性があるのか?
「ヤクザと半グレが正面衝突したら、どっちも損すると思うんですけど?」
(だからさぁ、今、国会が開会されているでしょう? 刑罰会と近畿黒陽会が裏で手を結んでいるから、刑罰会を実行部隊にして、黒陽会との抗争を続けたいのよ)
そういう事か。
当然、黒陽会側もヤクザの不文理を反則技で破った、連中を潰す為に警察よりも先に違法手段に訴えて、薬物のルートを解き明かして、それをマスコミにリークする。
そして、それを口実に堂々と戦争を行うのが狙いだ。
裏付けを取らない、マスコミでお馴染みの首都新聞並みの思い込みに過ぎないが、推測としてはそんな感じか。
「それは裏、取れているんですか?」
(幹部が話したからね。本心ではハムも大人の事情があれど、刑事部を裏で操って、全部潰したいらしいよ)
かなり、大事になって来たな。
「まぁ、どうにもならないことですね。分かりましたよ、今度、食事に行きましょう。続きはその時に」
(あんたが食事に誘うなんて! ついに私の魅力に気付いたらしいね! どうする? ヤッても良いよ・・・・・・)
「いや、いいっす。俺、平岡さんみたいなガサツな女嫌いなんで」
そう言うと、平岡は(あっそ・・・・・・私なりの冗談だからね? これ?)とだけ言った。
「男相手でも、セクハラって言うのがあるって知っていました?」
(政治家連中には年中されているから、感覚がマヒしているかなぁ? まぁ、今度、食事しましょう。そして、ホテルへ)
「切りますよ」
(あぁ~)
そう言って、平岡との通話を切った。
「平岡警部補とそんな関係だったとは思いましたが・・・・・・」
「それは無い。先輩としては尊敬しているけど、あの人、ガサツだもん」
「平岡警部補みたいな才女からのアプローチを断るなんて、勿体ないですよ」
「お前にやるよ」
そう言うと、明は顔を赤くする。
「好きなのな? お前、あぁいう、積極的な人?」
「大人な女性という感じがするので・・・・・・」
「止めとけ。後悔するぞ」
そう言って、令はトイレから出て行った。
続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます