第13話 結鶴の反抗
18
宮崎は居ても立っても居られない心境だった。
「若が女の子と普通に話している・・・・・・」
「えぇ、奥手の若があそこまで綺麗な女の子にアプローチされるのは意外ですね?」
真木組の舎弟の大園と若頭の宮崎は双眼鏡片手に大学に出入りする、業者に変装して、結鶴の学内の生活を監視するのが日課だ。
「あれは依頼主の保護対象だろう?」
「ベイカー・鈴、売れない芸能人ですが、良い子じゃないですか? 若が好きになるのも理解できる」
「若が人を好きになるのは考えられないがな?」
そう二人で会話しながら、さも、園庭を刈り込んでいる時だった。
結鶴がやって来た。
「余計な事を言うな。帰れ」
「社長からの厳命ですよ」
「いちいち、監視されて心が休まらない」
「そんな事より、潜入は上手くいきそうなんですか?」
宮崎がそう言うと「めぼしいサークルは大体、調査が進んでいる。潜入の後に深い繋がりがあると思われる、学生を拉致、監禁、拷問して、無理やりに背後関係を吐かせる」と結鶴は答える。
「ヤクザだから、出来る芸当ですねぇ?」
「半グレを攻め入る為の実行部隊と装備を用意してくれ、戦争になる」
「タイマン上等、喧嘩上等って奴ですねぇ・・・・・・」
「会長からバックアップはあるんだろう? 人員と武器を揃えろ」
「分かっていますよ、ただ、警察がうるさいから大変ですよ。どこでドンパチやります?」
結鶴は思案顔になった。
「取引先を抑えられると良いんだがな? 果たして、学生にそこまでの情報が行き渡っているだろうか?」
「末端で使われていると考えるのが妥当でしょうね。若、一応、聞きますが、本気で半グレと戦争するつもりですか?」
「警察が追えない仕組み、理由、口実を考えている・・・・・・なぁ?」
「嫌な予感がしますが、何です?」
結鶴はニタリと笑う。
「連中がいる六本木の溜まり場に行くとか、ダメだよなぁ?」
六本木は半グレの溜まり場であるというのは一般にも知られている事実だ。
それを聞いた、宮崎は呆れたと言わんばかりの表情を浮かべる。
「若一人で向かうと、殺されます。部隊が揃うまでは辛抱してください」
結鶴は「ふふ」と笑う。
「楽しんでますね?」
「社会を知らない学生どもの中で俺は仕事がある事に歓喜している」
「健全な形でお願い致しますよ。それと、ガールフレンドを待たせていますよ」
それを聞いた結鶴は「あいつは友達だよ?」とだけ言う。
「久々に楽しそうな若を見ましたよ。ヤクザの仕事している以外で?」
結鶴は顔を赤くすると「とにかく、部隊は揃えろ。これは戦争だ。そして、キャンパスから消えろ。いいな?」とだけ言って、何処かへ消えた。
「若も男だねぇ? 女の子にのぼせていやがる」
「俺は安心だよ」
そう言って、宮崎と大園は庭園を整備し続ける。
大学というのは相変わらず、住む世界が違い過ぎて、慣れない場所だ。
何の不自由も無いお坊っちゃんとお嬢ちゃんの住む世界。
「どうされました?」
「いや、若は恵まれているなと思ってな?」
「同感です。でも、反乱は起さずに忠義を果たすつもりです」
「俺たちは若の優しさを知っているからな? 心中するさ?」
そう言って、二人はにんまりと笑う。
若こそが黒陽会の希望。
英才教育はさせるさ?
宮崎は太陽の光に目を顰めた。
続く。
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