第11話 アプローチ
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ベイカー・鈴が青川学院大学の渋谷キャンパスを歩いていると、そこには犯行グループにいた、赤木晴斗がいた。
「ベイカー!」
鈴はそれを無視する。
「・・・・・・僕はお前を助けたんだよな? だったら、何で怒っているんだよ!」
「あなただって、犯行グループの一員だったくせに途中で反旗を翻したからって! 大石重工の専務のパパの力を使って、警察から釈放されたらしいけど、私からしたら、あなたもやましい事を考えていた同罪の人間よ! 近づかないで!」
「待ってくれよ・・・・・・僕は止めさせるように言っていたんだ!」
「近づかない!」
鈴がそう言っていた時だった。
秋山結鶴が何か、思案顔でベンチにいた。
良い事を考えついたな?
ここは強硬手段だ。
若干、強引だが、アプローチとしては有りだろうか?
何せ、強硬手段なのだから?
「結鶴君!」
結鶴は「何だよ? 俺は今、夕飯の献立を考えていて、忙しい」とだけ言った。
夕飯の献立を考えていて、あそこまで深刻な顔つきになるだろうか?
それはとにかくとして、鈴は「あの人に延々と絡まれて・・・・・・助けて!」とだけ言った。
「待てよ! 僕はそんなつもりじゃないのに・・・・・・」
すると、結鶴は「メディア君の二〇××年七月号での『コークス・アバネット』特集のメーシー様の写真にサインをしてくれるならば手を打つ」とポーカーフェイスで言い放った。
「えっ? 何て、マニアック・・・・・・」
「悪いか? 俺は特撮を好きな人間を無条件にダサいとバカにする虐めっ子が大嫌いなんだが?」
結鶴君、マジで変わり者だよね・・・・・・
でも、お近づきになるには今しかない!
「分かったよ。本当に特撮が好きなんだね? いいよ、お安い御用だよ。芸能人だし? 助けてくれる?」
「引き受けた」
そう言って、結鶴はこきりと腕を鳴らして、晴斗の前に立つ。
「何だよ・・・・・・お前、ベイカーの何なんだよ!」
「ただのファンだよ。ただ、頼りにはされているがな?」
そう言った後に晴斗が「どけよ!」と言って、結鶴を押しのけようとするが、結鶴は晴斗の手のひらを握ると、一気にひねり上げる。
「うぅぅぅぅ! 何すんだよ!」
「俺を押しのけるなんて、良い度胸だ。だが、俺と本気で喧嘩して勝てると思っているのか?」
「俺はお前と喧嘩したいんじゃないよ! ベイカー! 何とかしてくれ!」
そう晴斗に言われた、鈴は笑いながら、こう言った。
「やっちゃえぇ♪」
それを聞いた、晴斗は唖然とした表情で鈴を眺める。
「止めろぉ! 離せぇ!」
結鶴は手をひねり続けると、晴斗はたまりかねて、そのまま地面に叩きつけられるように投げられた。
よく分からないが、特撮出演時に見た、合気道の小手返しという技にも見て取れた。
「お前・・・・・・こんな事して! どうなるか分かっているんだろうなぁ!」
「そうやって、すぐにパパの力を借りる、無能な子があなた! 結鶴君の方がはるかに格好良いよ」
それを聞いた、晴斗は「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」とその場で泣き叫び始めた。
「結鶴君、行こう」
「ちょっと、かわいそうじゃないか?」
「いいよ、あんないつまでも学校に囚われていて、抜け出せない奴。サイン欲しいんでしょう?」
「・・・・・・あぁ」
そう言って、鈴は結鶴の手を取る。
「ところで、結鶴君さ?」
「どうした?」
「サインペン持っている? 油性の奴?」
「忘れたな?」
どうにも結鶴君は抜けたところがあるんだな?
鈴は走りながら、結鶴のそのような意外な側面も愛おしく思えた。
キャンバスでは晴斗の泣き声が響いていた。
続く。
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