第10話 捜査会議

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 警視庁新宿署では本部刑事部暴力団対策課主導で、捜査本部が立てられていた。


 神田令はそこに初動捜査を担当した身として、出席はしていたが、所轄署のデカなので、発言権は全て、本部のデカにある。


 そして、今回の捜査の主導権を握っているのは暴力団対策課だ。


 たまたま、初動捜査で所轄の刑事課が絡んだから居ただけで、早々に追い出されるのは目に見えている。


 一応は新宿署内の組織犯罪対策課も参加しているが、自分たち、刑事課はある程度になったら、用済みだ。


 令はやりがいの無い仕事に時間を費やす事に徒労感を覚えていた。


「鑑識が薬莢を調べたところ、25ACP弾と判明し、これにより、二五口径が使われたと思います」


 小さいな・・・・・・


 種類としてはベレッタM950だと思われるが、完全にヤクザが暗殺用に使う種類の拳銃だ。


 完全にこれは暴対課が主導権を握る案件だ。


「監視カメラの映像は?」


 捜査本部長の石井刑事課長が大声で捜査員に問いかける。


「SSBC (Sousa Sien Bunseki Center 電子機器の解析などの形での分析で捜査員の支援を行う警視庁内の部署)の支援の下で周辺の監視カメラを捜査した結果、黒づくめのライダースーツを着た男が大型バイクに乗って、逃走している様子が写されてていました。しかし、依然として、正体は不明です」


「骨格と動作を分析して、前科者リストからマルBの該当者に当たれ! マスコミは騒ぎ立てているぞ!」


 時間帯として、夕方の時間帯だから目立っていたのと、監視カメラに映像が残っていたというチョンボのお陰で犯人像には近づきつつある。


 しかし・・・・・・どうにも、この体つきを見る限り、プロのヤクザのヒットマンに思えない。


 俺にはこいつが少年と言ってもいいような感覚を覚えるのだが・・・・・・


 だが、そんな事を言ってもしょうがない。


 暴対部は完全にプロのヒットマンの犯行と見ている。


 自分たち、強行犯係にはどうにもならない。


「国会開会中に与党衆院議員と官僚の子息が殺された。この時点で世論は政治家と黒社会との繋がりに関心が及んでいる。しかし、我々、警察はこの不埒な黒社会に対して、断固として対処せねばならない。事は警察の威信にかかわる、大事案だ。組織犯罪対策部暴力団対策課各員、今は無き、四の字の誇りを胸に捜査に粉骨砕身していただきたい!」


 かつての刑事部捜査四課と組対四課の事を言っているそうだ。


 とにかく、マル暴は四の字に誇りを持っていたが、組織改編で暴力団対策課に再編された後に四の字を失ったことを嘆いている、警視庁OBもいたぐらいだ。


 そんな中で捜査本部長の石井刑事課長がそう号令をかけると、ガラの悪い、暴力団対策課の捜査員たちが「ウェイ!」と声を揃える。


「捜査一課はここで解散だ。みんな、ご苦労だった、ゆっくり休んでくれ!」


 そう言われた、令は本部刑事部捜査一課の主任警察官である、中嶋警部補に「さぁて、タバコ吸うかぁ?」と言われる。


「良いですね? 寺岡来るか?」


「愛煙家は色々と費用がかさみますからね? 僕は勘弁です」


 中嶋とそう言って、タバコを吸いに向かおうとすると、奥から本部暴力団対策課の佐川裕恒警部補がやって来た。


「神田ぁ? お前、まだ、所轄に飛ばされているのかぁ?」


 佐川はにやにやと笑い続ける。


「佐川主任、相変わらず、マルBとの癒着は続いているんですか? 監察にマークされているらしいじゃないですか?」


「バカじゃねぇの? 平成の頃の組織改編でそういうマルBとずぶずぶのサッカンは一掃されたんだよ。それはお前の方だろう? 真木組の組長がお前をヤクザにしたいとかうそぶいているぜ?」


「やっぱり、ずぶずぶですね?」


 それを聞いた、佐川は「あのなぁ? 俺はなぁ、マル暴なんだよ? そのぐらいの情報収集が出来ないと死活問題なんだよ? お前らとは管轄が違うからよぉ。黙っていろよ、素人の犯罪者を追っているくせに」とまくし立てる。


「捜査一課をバカにするんですか?」


 寺岡がそう言うと、中嶋が「よせ!」と言うが、佐川は寺岡の背後に回る。


「威勢が良いねぇ? 政治家の息子さんだから、大目に見るけど、俺に喧嘩で勝てると思うなよ?」


「・・・・・・速い」


 武闘派揃いのマル暴か?


 寺岡も一端のサッカンだから、全く、弱い訳ではないが、あまりにも喧嘩においての実力差が開きすぎている。


 これは明らかな事だった。


「ということだ。神田ぁ? マル暴は面白いぞ? 打診すれば、こっちに来ても良いぜ?」


「気が向いたらでいいですか?」


「待っているぜぇ? 素人の犯罪者追いかけるのが、嫌になったら、いつでも来な? もっとも、うちは組織犯罪が主体だから、金回りの犯罪を追うから、バカのお前には無理かもしれないがなぁ? じゃあ、頑張れよぉ?」


 そう言って、佐川は何処かへと消える。


 最後はけなして去ったか?


 苦笑いを浮かべながら、中嶋と寺岡を眺めると「お前、捜一を裏切るのか?」や「あそこまで、バカにされて敵に尻尾振るのは情けないですよ」と口を揃える。


「マル暴とは関係を円滑にしておきたいんです。今後の為に」


「まだ、この事件に関わんのか? マルBだろう? 今回のマル被は?」


「だとしても、俺たちの出番になるような大事になるかもしれないですよ。準備は怠れない」


 それを聞いた、中嶋「俺はパス。とりあえず、報告書書くかぁ? 俺は家帰りたいがな? お前らもほどほどにしておけよ?」とだけ言った。


「一人しかいないのに?」


「まぁ、それでも家には変わりないさ? お前らも休める時に休まないと死ぬぜ? 俺は報告書済んだら、家に戻る」


 中嶋は妻とは別居状態にあるので、家に帰っても一人だ。


 捜査一課の激務で家族の時間が持てなかった事から、愛想を尽かされたらしいが、どこかしらで関係が改善することをお互いが思っているらしい。


 そう神田が思う中で、中嶋もどこかへ消えて行った。


「報告書、書くか?」


「ですね? ここからが長丁場です」


 そう言って、寺岡は肩を鳴らす


 さて、コーヒーの一つでも買うか?


 夜二十二時過ぎの新宿署は今日も眠らない。


 続く。

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