第9話 嵐の前

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 結鶴は早速、青川学院大学のサークル名簿を引っ張り出して、事務所で眺めていた。


「地味な学生生活をしていた、若が今から、キャンパスライフを謳歌するんですか?」


 宮崎がそう笑いながら、言うと、結鶴は「前々から、疎ましいと思っていたサークルはいくつかあったが、合点がいったな? 何かしらの犯罪が絡んでいるんじゃないかと思っていたサークルが数点ある」とだけ言った。


「合コンの名を借りた犯罪ですか? 大学生ですねぇ?」


「様々な口実を作っていて、それだからな? ちなみに俺の狙っているサークルはそれが可愛いぐらいの目的である、乱交サークルに目を付けている」


 宮崎の目が真剣なものになる。


「薬物を使った交際ですか?」


「病みつきになるらしいからな? ハマると? 特に社会経験が無い、大学生なんて、良いカモだ」


「クソガキどもめ・・・・・・」


「それを操っているオジサンたちがいるのさ? お兄さんもいるがな? ただ、そんな物事の分別を成人越えても分からない、連中に施しをする社会というのも優しすぎて、問題があるように思えるのは俺だけかい?」


 結鶴は笑いながら、そう言う。


「苦労してきた、若がそう言うと重みがあります」


「会長の援助が無ければ、俺は児童養護施設から出て、すぐに貧困生活さ? 末端のヤクザになるか、幹部候補生になるかで大分違うからな? もっとも、それに頼らないと、いけない程に困窮しているのが悲しい事実だが?」


 結鶴がそう言って、パンフレットをめくる。


「嫌ですか? ヤクザが?」


「嫌だね。俺は堅気になれるならば、堅気になりたい。だが、金が無い。だから、大学に潜入したヤクザの工作員をやっている。俺にはそういう形でしか、学費を稼ぐ手段が無い」


「家庭教師があるじゃないですか?」


「出来の悪い、ボンボンのガキを教えて、雀の涙程度の額だ。殺しの方がはるかに割は良い」


「・・・・・・吸います?」


「タバコだろう? 俺は吸わないよ」


 そう言うと、宮崎はタバコを吸い始める。


「学内に潜入して、ブツのルートが判明次第、警察よりも先に叩くのが会長からの厳命だ。学生と構成員は目立たない様に殺しても、構わない」


「・・・・・・血も涙もない」


「社会を舐めてかかっている、学生どもには生きる価値はない」


「そういう奴らこそが悪党どもの食い物にされれば良いが、若の持論ですからね?」


「お前はどうなんだ?」


「俺もねぇ、あぁいう、何も苦労せずに善悪の判断付かずにやっちゃあいけない事をして、大人に泣きついて、権利を主張して、それを許す社会が嫌いでねぇ?」


 結鶴と宮崎は笑い出した。


「よし、ガキどもと背後にいる連中は皆殺し」


「段々、若もヤクザに染まってきますね?」


 それを聞いた、結鶴は宮崎を睨みつけたが、当の本人はどこ吹く風だ。


「副社長! 若! 社長が新大久保で韓国料理を買ってきましたよぉ!」


 大園が新大久保の韓国料理店からテイクアウトを持って来た。


「チーズタッカルビか?」


「そうです!」


 俺の大好物だ。


 結鶴はこれから、学生たちとその背後にいる連中を皆殺しにする事を夢想したことと大好物を目の前にした二点がある為、大学では見せない、満面の笑みを浮かべていた。


 続く。

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