第10話 週末観測と深夜通話
日曜日、午後一時頃、僕は商店街のゲームセンターから出てきて、手にはゲームコインを二枚握っていた。
〈まさか、今でもあんなに純粋なアーケードゲームが楽しめるなんて……ここに来た甲斐があったな〉
昨日は書店、今日はゲームセンター。この週末はなかなか充実している。
ゲームコインを弄りながら、特に目的もなく歩いた。心には特別な感情もなく、ただ一人でいる静けさとだらけた気分だけがあった。
歩いていると、目の前に一軒のカフェが見えた。豊かな緑と模様入りの大きな窓が外観を飾り、リラックスした居心地の良さそうな雰囲気を作り出していた。
〈なかなか良さそうだな……〉
そう評価したが、内心では入りたいとは思わなかった。ただ珍しいな、という感じだ。
ちょうど立ち去ろうとした時、カフェの中の二人の人影が突然僕の注意を引いた——冬雲七海と加藤紗奈だ。
彼女たちはちょうど窓際の席に座り、テーブルの前には半分飲み終わった飲み物と空になったデザートの皿が置いてあった。冬雲のスマホの画面を一緒に覗き込みながら、肩を軽く震わせて笑っていた。加藤の笑顔は自然でリラックスしており、少しいたずらっぽささえ感じられた。学校や屋上では一度も見たことのない、曇りのない表情だった。
〈ふふ、どうやら、二人はうまくやっているようだ……〉
楽しそうに笑い話す二人を見て、心になぜかほっとした。加藤の変化をこの目で見られて嬉しいだけでなく、二人の和やかな友情にも心が温まった。
最初は恥ずかしがり屋で内気で、ほとんど友達がいなかった彼女が、今では楽しそうに笑い、友達と遊んでいる。たった一週間しか経っていないが、この友情と楽しさを、加藤はきっと長い間待ち望んでいたのだろう……
〈佐藤西子……一体何がきっかけで加藤と友達になったんだろう?〉
思わずこの加藤の親友のことを思い出し、彼女たちの過去について考えた。あの日の加藤の異常な表情とパニック状態を合わせると、きっと恐ろしくて忘れられない出来事だったのだろう……
〈小学生の時の親友、偶然の機会、予期せぬ出来事、パニック状態、内向的な性格、異常な表情……まさか……〉
ただの推測に過ぎないが、どうしてもそう考えずにはいられなかった……
〈おそらく、あんなことが起こったんだろう……〉
加藤を見て、突然悲しみと憐れみが込み上げ、自分の考えを否定するように首を振った。
〈でも……そうとしか言いようがない……〉
僕が見とれている間、冬雲が偶然顔を上げた視線に気づかなかった。冬雲は一瞬呆然とし、それから顔に大きな笑みを浮かべ、力強く僕の方へ手を振り、口元で「松本くん!」と呼んだ。
加藤は冬雲の視線を追い、僕だと気づくと一瞬で顔を赤らめたが、次の瞬間には驚きと喜びの笑顔を見せ、冬雲に合わせて小さく手を振った。
〈ああ、しまった、見つかっちゃった……まあいい、暇だし、中に入ってみよう……〉
僕も手を振って微笑みで応え、すぐにカフェに入った。
「わあ、奇遇だね松本くん!こんな近くにいたなんて!」冬雲は僕を席に招き入れた。「一人なの?」
「あ、ええ……松本くん、こんにちは!」加藤の顔は真っ赤だった。「ほんと、偶然ですねはは……」
「ああ、二人ともこんにちは。週末に特に用事もなくて、一人でぶらぶら歩いてたんだ。さっき外で偶然二人を見かけて、ちょっとぼーっとしてた」僕は彼女たちの向かいに座り、ウェイターに飲み物を注文した。「どうやら、二人とも楽しんでるみたいだね」
「あ、そうなんだ!最初の目的は文房具屋だったんだけど、週末だし、ついはしゃいじゃってはは!」冬雲は少し恥ずかしそうに言った。
「そうか。よかったら、聞かせてくれない?」思わず彼女たちの今日の行動が気になった。
「あ!もちろん!ちょうど加藤さんが写真も撮ってくれたんだ。友達との時間をしっかり記録するって言って」
「わ、冬雲さん、松本くんの前でわざわざそんなこと言わなくていいですよ!」加藤は冬雲の言い方に恥ずかしがった。「私、ただすごく楽しかったから、写真を撮っただけです……」
「はは!リラックスしてよ加藤さん、松本くんの前でそんなに緊張しなくていいから!」
「だ、だからって、わざわざ松本くんの話にしなくていいです!」
からかい合う二人を見て、僕は思わず笑い声を漏らした。
「どうやら、二人はとても仲のいい友達になったみたいだね」
「ええ、うん……」二人は互いを見つめ、それから恥ずかしそうにうつむき、なぜか顔が赤くなった。
「えへん、あの……何か面白い写真、見せてもらえる?」理由もなく恥ずかしがる二人を見て、不自然に話題を変えた。
「うん!い、いっぱい撮りました」加藤は我に返り、スマホの写真を出して僕の前に差し出した。
「午前中からずっと一緒で、まずあの文房具屋に行って、限定の手帳を買って、それから……」冬雲は彼女たちの行動を話し、出会った面白い出来事を生き生きと語った。
「うん!そ、それから、映画を見に行きました。それは……」加藤はそばで細かいことを補足した。声は小さかったが、彼女が本当にこの活動を楽しんでいるのがよくわかった。文房具屋のレジで寝ている猫がどれだけ太っていたか、映画のどのシーンが一番面白かったか、飲み物を買う時にわざわざ冬雲の好みに気を遣ったか……などの細かい点は、どれも加藤がこの週末の活動にどれだけ心を砕き、重視していたかを示していた。
加藤の話し方ももたつかず、目には明るさと自信が満ちていた。冬雲も補足した。「今日の映画は加藤さんが選んでくれたんだよ!それにポップコーンも加藤さんが選んでくれて、味が最高だった!すごく気に入った!」
僕はスマホの写真をめくりながら、思わず笑みを浮かべ、加藤のことを嬉しく思った。「そうか。なかなか面白そうだね」
「でしょでしょ!それからそれから……」冬雲は熱心に話し、加藤と一緒に感想を交わした。僕は微笑みを浮かべながら、静かに彼女たちが笑うのを見つめた。加藤は冬雲に引っ張られるように明るく笑い、目には充実感と喜びが満ちていた。
目の前の楽しそうな二人を見て、僕は気づいた。
最初に差し伸べた手が、小さな一枚のドミノを倒したようで、今では素晴らしい連鎖反応を引き起こしていた。加藤は健全な友情によって、少しずつ自信を取り戻していた。
僕は淡く微笑みながら言った。「どうやら、とっても楽しい週末になったみたいだね」
二人は互いを見つめ、楽しそうな笑顔を見せた。
「あ!ねえ、今度機会があったら、松本くんも一緒に遊ぼうよ!」冬雲は目を輝かせ、すぐに加藤に目配せした。「松本くんも来てくれたら、きっといっぱい楽しいことがあるよ。ね、加藤さん?」
「う、うん、私もそう思います」加藤はそっと僕に向かってうなずいた。「松本くんも来てくれたら、絶対に歓迎します!」
二人とも目を輝かせて僕を見つめ、思わず笑ってしまった。
「そう?ふふ、じゃあ次の活動はぜひ呼んでくれよ。時間通りに参加するから」
僕が承諾したのを聞き、二人はまた満足そうな笑顔を見せ、すぐに次はどこへ行こうかと想像し始めた。
その後は、ずっと雑談をしていた……
帰る時、冬雲はこっそり僕にウインクし、口元で「ありがとう」と言った。わかった。これは、最初に加藤をこの輪の中に連れてきて、加藤と彼女を引き合わせ友達にしたことを感謝しているのだ。
加藤は別れ際、とても自然にこう言った。「また来週、学校で会いましょう、松本くん!」シンプルだが、彼女にとっては「日常の再会を期待する」という意味の約束だった。
「ああ、来週会おう」僕は軽くうなずき、手を振って加藤と冬雲に応え、そこを後にした。
〈来週学校で会うか……ふふ、どうやら、これからの生活はますます面白くなりそうだ……〉
そう考えながら、僕はゆっくりと駅へと向かった。
これからの学校生活は、きっと退屈しないだろう……
……
「おっ!来た来た!やっとオンラインになったね、遅いよ松本くん!」イヤホンから桜木の不満が聞こえてきた。「もう!次またこんなんだったら待たないからね!」
「松本くん、こんばんは!」璃乃の声もすぐに聞こえてきた。「何か用事があったんですか?」
「ああ、すまん、ちょうど家事が終わったばかりで、少し遅くなっちゃった」僕はイヤホンを調整し、申し訳なさそうに謝った。
「ええ~、そうなの!しょうがないな、松本くんがそんなに勤勉なんだから、今回は許してあげる!」桜木の言葉はツンデレだったが、口調は完全に僕をからかっている感じだ。
「仕方ないよ。桜木さんみたいにご飯食べ終わったら急いでパソコンの前に陣取って待ってるわけにはいかないだろ。だって僕には家事があるから」
「あっ!璃乃、聞いた?松本くんが遠回しに私をバカにしてる!」
「何言ってるの?『働かざる者食うべからず、遊び呆けてる桜木様』をバカにしたりなんて、とんでもないですよ~。バカにしてるとか、そんなのあなたの思い違いでしょう~」
「ちょっと!さっきのはまだしも、今のは完全に露骨にバカにしてるよね!」
「ふふ~」僕は返事せず、ただ軽く笑った。
「あっ!聞こえた!松本くん、私のこと笑ってる!」
「いやいや!ただ、ちょっと嬉しいことを思い出しただけだよ」
「絶対に笑ってる!」桜木は悔しそうな声を上げた。これは彼女が僕の手にかかって三度目の「敗北」だからだ。
彼女たちと連絡先を交換してから、最初は補習のことをきちんと話そうと思っていたが、しばらく必要ないという返事をもらい、それからゲームをするかと聞かれ、肯定的な返事をすると、二人が無理矢理僕をゲームに引き込もうとした……
これには心底呆れた……
てっきり補習に大変な手間がかかると思っていたのに、まさかのネットゲーム中毒少女だったとは……
ネットゲーム中毒少女でも、ゲームの腕前はたいして良くなく、暇な時しかゲームをしない「初心者」の僕ですら勝てない……しかし二人とも負けず嫌いのタイプで、僕の指導と対戦で、少しも挫折を感じるどころか、ますます勇ましく、技術も着実に上達した。
君は聞くだろう:たった一週間じゃないか?彼女たちの技術がそんなに上がるわけないだろう?
これには僕も困った。だって彼女たちはほぼ家に帰るなりオンラインでゲームをし、昨日の深夜一時まで僕をゲームに誘っていたのだから……
結果、授業中によく居眠りをし、先生に叱られ、それでもゲームを続ける……
これには、どうすることもできなかった。だって彼女たちははっきりと今は補習が必要ないと告げていたので、僕にできることはなるべく連絡を取りつつ、彼女たちとゲームをする頻度を減らすことだけだった……
本当の手助けについては、おおよその計画は立ててある。ただ時間と出来事をゆっくり待てばいい。
ところで、このギャルコンビは確かに伝統的なギャルとは違う。オフラインでの観察でも、オンラインでの会話でも、このギャルコンビに対して疑問を抱かせた。
学校では彼女たちがファッションやメイクについて話しているのを耳にし、周囲に無関心な態度もギャルとしてのイメージに合っていた。しかしオンライン上の彼女たちは完全に普通の女の子で、話し方もコミュニケーションも、周りの普通の女の子と変わらず、せいぜいゲーム中毒が少しひどいだけだ。
ここから、ひとつの結論を導き出した。このギャルコンビは、偽物だ。
実際の証拠はないが、ほぼ自分の判断を確信していた。だって僕の判断はいつも当たるから。
「はいはい!松本くん、からかわないでよ。じゃないと楓、すぐには機嫌直らないからね!」璃乃は笑いながら僕に注意した。「雑談はここまで、ゲームを始めよう!」
「ふふ~、はいはい、からかわない。真剣にゲームしよう、桜木さん」
「いやだ!私は璃乃と一緒にやる。じゃないとまた松本くんにいじめられる!」
〈こいつ……正面から言い負かせないから、わがままを言い出すんだな……〉
「はいはい~、一緒にやろう、松本くんとは一緒じゃなくて~」璃乃は優しく桜木をなだめながら、同時にプライベートメッセージを送ってきた。「すみません、楓は普段からこんな調子で。松本くん、許してね!」
璃乃の言葉を見て、僕は呆れながらも笑ってしまい、同時に心の中で確信していた推測をさらに裏付けた。
「はいはい、一緒じゃないってことなら、後で敵に追いかけ回されて助けを求められても知らないからな……」
「あっ!えへへ~、冗談だよ、本気にしないでねはは……」
「はあ_(:з」∠)_」璃乃がため息混じりのメッセージを送ってきた。僕は「わかってるよ」と返事した。
「よし!始めよう、時間無駄にしないで!」璃乃が私たちを急かし、ゲームが始まった。
……
「あっ!左左!」
「ああっ!後ろにもいる!」
「あの木の後ろ気をつけて!」
「うわ、なんでこんなに人数多いんだ!どこ行っても人がいる!」
「薬ある?少し分けて、ドリンクも全部なくなっちゃった!」
……
「慌てるな、高所を取るまで待て」
「ナイス!いいぞ松本くん!」
「いやいや~、スナイパーライフル手に入れたら、天下取ったも同然だぜ!」
「助けて助けて!死んじゃう!」
……
「右気をつけて、また車が来た!」
「援護してくれ、こっそり襲撃する」
「すごい!あと一人だ!」
「ナイス!」
僕の一発の銃声とともに、最後の敵も倒れ、私たちはこのゲームの勝利を得た。
「ふう!爽快!超爽快!このゲームってこんなに簡単だったの?」
「楓、ちゃんと戦績見てみなよ!」璃乃が桜木に注意した。
「うわ!こ、これはありえない!松本くん、マジでチート使ってない?」桜木の驚きの声がイヤホンから聞こえ、耳が痛くなった。
「ちょっと小声で話してくれよ、耳が聞こえなくなりそうだ」
「あ、ああ、わかった……でもこの戦績、ありえなくない?百人中、二十人も倒してる!」
「当たり前だろ!お前が何度も戦利品漁りに夢中で突っ走って死んでいかなきゃ、こっちもこんなに苦労しなかったんだぞ!」桜木の戦績を見て、不満をぶつけた。
「ああ……はは、わざとじゃないんだよ!そ、それに、元々下手くそだからこそ、お前の強さが引き立つんだよ!」
「はあ、一日中ゲームに浸かってるくせに、腕前が上がらないんだから。璃乃さんのことをよく見習いなさいよ?」
「ああ……わ、わかったよはは……頑張る!」
「松本くん、今回は楓を許してあげてよ!次はきちんとやるから!」璃乃がそばで丸く収めようとした。
「はあ、もういいよ!ほら!次は絶対ちゃんとやれよ!」
「了解!任務遂行を誓います!」桜木は力強い声で、僕の疲れきった声に応えた。
こうして、ゲームの時間は続いた……
……
「げほっ……もう無理、続かない!疲れたよ!」
僕は両手をキーボードから離し、痛くなった眉間を揉みながら、声もかすれそうだった。
「おっ!お疲れさま、松本くん!また勝てたね!」
「よく言うよ!最後の戦闘はお前だろ!お前が突っ走らなきゃ、璃乃さんも助けに行かずに済んだし、僕もこんなに疲れなかったんだ!」
「ああ……はは……わざとじゃないんだよ!少なくとも敵の体力をかなり削ったじゃん……」桜木の声は小さくなり、明らかに自分のミスを認識しているようだった。
「だから、一番大事な時こそ僕の指示を聞けって言うだろ!今回のランダムチームメイトが上手かったからよかったものの、そうじゃなかったら負けてたぞ!」
「あ、うん!わかった!これからは必ず松本くんの指示に従う、絶対に勝手な行動はしない!」
「お前は……げほっ……」桜木のせいでむせてしまい、考えれば考えるほど腹が立った。
「よしよし!松本くん、早く水飲みに行ってよ。
声がかれそうだよ」璃乃がまたもや現れ、僕に逃げ道を与えてくれた。
「ああ、わかった……」そう言いながら、僕は部屋を出て、階下で水を少し飲んだ。
「はあ!もう!後で絶対しっかり言ってやらないと、考えれば考えるほど腹が立つ!」僕はさっきのゲームの場面を思い返し、頭の中に繰り返されるのは桜木のアホな操作ばかりだった。
「えへん、ああ、戻ったよ」僕はイヤホンを付け直し、ゲーム画面に戻った。
「おかえりなさい、松本くん!」璃乃は元気に応えてくれた。「大丈夫?声は?」
「うんうん、大丈夫。ただ少し叫びすぎただけ。少し休めば治る」
「そう?よかった!」
「桜木さんは?」ゲームを見ると、桜木のゲームキャラはすでにゲームから退出しており、アカウントもオフラインになっていた。
「ああ、楓は用事があるってことで、ゲームをやめたんだ。松本くん、後で電話するんだけど、一緒にどう?」
「ああ、まずいんじゃない?女子の話に男が入るのはちょっと……」
「大丈夫大丈夫、普通に話すだけだし、ちょうど楓も松本くんに聞きたいことがあるみたいで、だから私が聞いてるの」
「そう?わかった、まずゲームをやめるよ」
「うんうん、じゃあスマホで話そう!」璃乃の声は少し変わっていて、喜びと興奮が感じられた。
僕はすぐにゲームを終了し、パソコンを閉め、部屋を簡単に片付けてから、璃乃が作成したグループ通話に入った。
「えへん、あの……聞こえる?」試しにそう言ってみたが、なぜか少し緊張していた。
「うんうん、聞こえるよ松本くん!」璃乃の声が聞こえてきた。「ふふ、ゲーム以外で話すのって新鮮だね!」
「そう?まあまあかな」特に感じることはなかった。これが初めてのスマホでのグループ通話だとしても。
「そういえば、桜木さんが僕に聞きたいことって何だったっけ?」
「それね、実は私もわからないの。彼女が戻ってこないと」
「そうか。じゃあ璃乃さん、よかったら僕もいくつか質問してもいい?」試しに、璃乃から役立つ情報を引き出そうとした。
「うん、いいよ。松本くんは何が聞きたいの?」
「聞きたいんだけど、璃乃さんと桜木さんはなぜ最初は僕に補習を頼んで、後でやめたの?」
「ええ……そ、それは……あの……」璃乃は躊躇し、口調にも少し緊張が混じっていた。「実は……最初から松本くんに補習を頼むつもりじゃなかったんだ……」
「そう?じゃあ声をかけたのは……」
「ああ……は、それは……楽、楽しいから……」
「やっぱりその理由か……」前にもそんな返事をもらっていたが、実際に耳にするとやはり信じがたく、彼女たちがそんなに退屈していたとは本当に思わなかった。
「そ、その、松本くん、聞いてよ!わざとからかったわけじゃないんだ……」璃乃の口調は緊張し、画面越しでも彼女の躊躇いと動揺が感じられた。
次の数分間、璃乃は簡潔明瞭に彼女たちがそうした理由を説明した。
「ああ……つまり、あなたたちがそうしたのはただ僕に近づき、友達になりたい、それどころか恋愛関係に発展させたいから?」
「ああ……う、うん……」璃乃は躊躇いながら認めた。
これには僕も困ってしまった。彼女たちがただ退屈な生活に刺激を求めて僕に接触しただけだと思っていたのに、まさか僕と良い関係を築きたかっただけだなんて……
〈いや、この二人はどんな思考回路してるんだ……〉
これには理解できなかった。彼女たちがそうすることの意味がどうしてもわからなかった。良い関係を築きたかったら、直接話しに来ればいいじゃないか。なぜわざわざ補習を口実にする必要がある?
いや……もしただ良い関係を築きたいだけなら、現在の彼女たちの性格と交流方法からして、絶対にこんな方法は取らない。よしんば……
「あの、聞いていい?あなたたちがそうするのは、ただ僕と良い関係を築きたいだけなのかな?」
「えっ!あ、うん……」璃乃の口調は依然として不自然だった。
やはり、もっと深い目的があるはずだ……
「ああ、だいたい理解した。でもなぜまた補習をやめたの?補習を通じて僕と良い関係を築くのも一つの方法じゃないか」
「ああ……それはね……私たちがそもそも勉強が好きじゃないし、補習も必要ないから。それに松本くんもゲームをやるとわかって、自然と補習の方法はやめたんだ。だってゲームを通じた方が簡単だし、もっと楽しいから……」璃乃は申し訳なさそうに理由を説明した。
「……」
なるほど、やっぱり僕が考えすぎていたようだ。
結局のところ、ただのネットゲーム中毒少女ペアだった……
「ああ、じゃあ恋愛関係に発展させたいってのは……もっと言うと目的は……」
「ああ、そ、それね……あなたが結構かっこいいから、接触してみたくなって……」口ではそう言いながらも、璃乃の口調には少しも信憑性がなかった。
「げほっ……それならはっきり言うよ。あなたたちがそうする目的は、ただ僕と友達になって恋愛関係に発展させることだけじゃないだろう?本当にそうしたかったら、もっと自然にできたはずだ。桜木さんとの何度かの交流と探り合いを合わせると、あなたたちは何か問題を抱えているんじゃないかと思う」
「えっ?」璃乃は信じられないような声を上げ、僕がそんなことを言うとは思っていなかったようだ。
「まだ隠せると思ってるなら、もっとはっきり言おう。あなたたちは何か問題を抱えている、あるいは心に何か懸念があるから、盾になる人を探していて、たまたま僕がその選ばれた人間だった。でも僕と接触して、僕が完璧な人選じゃないとわかったから、僕を諦めた。でも僕が良いゲーム仲間であり友達だと気づき、次善の策として、僕をあなたたちの小さな輪に入れ、一緒にゲームをして、ストレスを軽減するか気分を紛らわせようとした。そうだろう?」
僕は以前の推測と今夜の観察を合わせて整理し、最終的にこの結論を導き出した。
「あっ!それは……」璃乃はまたもや僕の発言に驚き、言葉も出てこなかった。
「大丈夫、答えにくければ答えなくていい。無理はしない。これもただの僕の推測に過ぎないから、面白い話を聞かせてもらったと思ってくれ」
「えっ!あ、うん……」璃乃の声はまだ迷いがちで、僕がなぜ突然こんなことを言い出すのか理解していないようだった。
「でも、もう一つ璃乃さんに答えてもらいたい質問がある。この答えは僕にとってとても重要なんだ」
「えっ!あ、うん、松、松本くん、どうぞ……」
「璃乃さんと桜木さんは、本当のギャルじゃないよね?普段のメイクと言動、それに教室での会話は、ただのカモフラージュなんだろう?」
「あっ!松、松本くん、どうして知ってるの?ど、どうやってわかったの?」璃乃の驚きに満ちた声が再び聞こえてきた。今度は声が大きく、核心を突いたようだ。
「さっきも言っただろう、これもただの僕の推測に過ぎない。でも璃乃さんの声と口調からすると、やっぱり当たってたみたいだ」
「あっ!これ……」璃乃は短い沈黙に陥った。
「もう一つ推測させてほしい。あなたたちがそうするのは、何かを隠すためだろう?それとも、ギャルを演じて外に向けて演技しているんだろう?」
「ああ……そ、それは……」璃乃の声はますます自信がなさそうだった。
「だから、もし僕の推測が正しければ、すぐに桜木さんが聞いてくる質問は、『松本くんには彼女がいるの?』だろうね?」
璃乃は何も言わず、イヤホンからはかすかな息遣いしか聞こえなかった。
「大丈夫、ただの冗談だと思ってくれ。もちろん今夜の通話内容も秘密にする。誰にも言わない」そう璃乃をなだめた。「それにあなたたちがそうする根本的な目的には、あまり興味がないし、追求もしない。それはあなたたちのプライバシーと事情だから、干渉する権利はない」
「えっ!ほ、本当?」璃乃の声は突然活気を取り戻し、口調には幾分かの疑問と期待が混じっていた。
「ああ、約束する。でももし何か手伝いが必要なら、いつでも連絡してくれ。できる限り力になるよ」
「あ、うん……あ、ありがとう、松本くん!」璃乃の返事は再び活気に満ちていた。「あなた……やっぱり私たちが今まで出会った男子とはちょっと違うね……」
「そう?たぶん……『僕』もちょっと違うから……」そう自分をほのめかしながら、内心では幾分か無力さと居心地の悪さを感じた。
「えっ?どういう意味?」璃乃は僕が何を言っているのかわからず、声には疑問が満ちていた。
「ああ、何でもない」急いで話題をそらした。
「だから、あなたたちは自分の正体がバレる心配はしなくていい。僕は誰にも言わない。でも困ったことがあったら、連絡してくれ。助けるから」
「うん!わかった!ありがとう、松本くん……」璃乃は疑問を感じながらも、私に感謝した。
「よし、今日はここまでにしよう。聞きたいことはもう聞いた。まだ疑問があればメッセージをくれれば返事する。後で桜木さんの質問は……『今は独身だけど、今のところ恋愛するつもりはない』って伝えておいて」
「あ、それからさっきの話、もし桜木さんも聞いてきたら、ありのまま話してくれ。もし彼女にまだわからないところがあったら、連絡させてくれれば答えるから」
「あ、ああ、うん、わかった」璃乃の声は少し呆然としていた。
「よし、今日はここまで。もう遅いし、早く休んでくれ、璃乃さん、それに桜木さんも、おやすみ!」
「あ、ああ、松本くんも、おやすみ!」
「うん、おやすみ!」祝福を言い終えると、僕は電話を切った。
〈ふう!一度にこんなに話すのは、やっぱり疲れるな……〉
余計なことは考えず、僕は明かりを消し、ベッドに横になった。
目は閉じず、スマホにこれまでの出来事と変化を記録した。
……
〈どうやら、これからギャルコンビとの関係は質的な変化を遂げそうだ。良くなるのか悪くなるのか……まあ、その時になってみればわかる……〉
最後の変化を記録し終えると、僕はスマホを閉じ、天井をじっと見つめ、それからゆっくりと目を閉じた。
かつて僕は、この二度目の人生は、極めて慎重なロールプレイングゲームであり、僕は完璧を目指す役者兼舞台監督だと思っていた。
規則を記録し、周囲の人物を分析し、最も合理的な攻略を書こうとしていた。
しかし、いつの間にか「観察」のレンズに、息で曇りがついていた。
冷たい規則の下に、加藤が懸命に差し出した弁当の温かさ、森島が文学について語る時に目に燃える星の火、桜木と璃乃が仮想戦場で遠慮なく笑い愚痴る姿、冬雲が春の日差しのように自然と皆を結びつける優しさ、田中が永遠にまっすぐで熱血で、呆れさせながらも安心させる騒がしさが湧き上がっていた。
それに電話の向こうで、妹が永遠に僕のために灯している小さな明かりも。
松本悠真になる?
いや、たぶん課題を間違えていたのかもしれない……
僕が今学んでいるのは、全ての座標系を失った世界で、どうやって再び「人間」になるか——誰かを思いやり、感動し、他人の笑顔を守りたいと思う、普通の「人間」になる方法だ。
システムは決して読み込まれず、チートも存在しない。
しかし僕に影響を与えたのは、どうやらこの一見取るに足らない、別の魂と衝突し、共鳴し、結びつく瞬間のようだ。
それらが集まって流れとなり、この宙に浮いた体を支えている。
最初の一週間の物語は終わった……
そして僕の生活も、彼らの物語も、これからも——そして必ず——続いていく。
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