第6話 主役団の誕生?
「おはよう、お母さん」
僕はわざわざ早起きした。特に理由はなく、ただ何となく朝食を作ってみたくなっただけだ。
「ああ~、おはよう悠真!まあ、今日はこんなに早起きして、何かあるの?」
松本さんは少し乱れた髪を整えながら、好奇心に満ちた目で僕を見た。
「別に。ただ朝食を作ってみようと思っただけです」
「へえ、そうなの?偉いね、悠真!」松本さんは僕に親指を立てた。
「はいはい、早く身支度してきてください。朝食もうすぐできますから」
「あ、そうだった……」松本さんは返事をすると洗面所へ駆け込んだ。
間もなく、二人で美味しい朝食を楽しんだ。
「ん~、美味しい!さすが悠真、腕がまた上がったね。もう私を超えちゃったかも!」松本さんは再び親指を立てた。
「そうですか?気に入ってもらえてよかったです」僕は素直に微笑んで返した。
「そういえば、悠真ってここ数日運動に行ってないよね?前は毎日行ってたのに……」
「新学期が始まったばかりだから、少しそっちに気が向いてるだけです。でも、二、三日したらまた続けますよ」
「そう?それなら良かった。悠真、ますます自立してきたね」
「もちろんです!だって、誰の息子だと思ってるんですか」朝の良い雰囲気に乗って、松本さんに軽く冗談を言った。
「ははは、褒めてくれてありがとう、お母さんとっても嬉しいよ!」
「はい。それじゃ、早く食べましょう。そのうち冷めちゃいますから」
「あ、そうだった。悠真の努力を無駄にしちゃいけないね」そう言うと、再び美味しい食事に没頭した。
松本さんが満足そうな笑みを浮かべるのを見て、僕も思わず微笑んでいた。
〈松本さん……本当に立派なお母さんだな〉
そうだ。転生したばかりの僕に対しても、今の僕に対しても、松本さんの態度は変わらない。ずっと松本悠真――この自分の子供を愛している。たとえ自分の子供にこれほど大きな変化があったとしても、変わらず悠真を愛し続けている。
ただ……
〈まあいい、いずれ話す時が来たら話そう。もしかしたら松本さんも、僕から打ち明けてほしいと思っているのかもしれない……〉
僕は打ち明けたいという思いを抑え、静かに松本さんを見つめた。
「どうしたの悠真?私の顔に何かついてる?」
「いえ、ただお母さんがまた綺麗になったなって思って」
「えへへ~、そう?実は私もそう思ってたんだよね……」
松本さんは自分の頬を触りながら、少し得意げに言った。
「あらあら~、今日の悠真は口が甘いね。いい子~」
そう言いながら、溺愛するような眼差しで僕の頭を撫でた。
僕は受け身のまま、ゆっくりと朝食を食べ続けた。
……
「それじゃあ、行ってきます」
「はい、気をつけてね!」松本さんはつま先立ち
をして、僕の頬に軽くキスをした。
「うん、わかった。じゃあね」
「うん、いってらっしゃい~!」
僕は背を向けて家を出ると、登校の道を歩き始めた。
今日の天気は格別に良く、早朝から温かな太陽が大地を照らし、春の祝福を届けてくれている。
冷たい風が顔を撫でるが、寒さを感じることはなく、むしろ気持ちを引き締め、新たな一日を迎える活力を与えてくれる。
十数分後、信号待ちをしている冬雲七海の姿が見えた。
「冬雲さん、おはようございます」近づいてから声をかけた。前回のようなハプニングを避けるためだ。
「あ、松本くん、おはよう!今日も偶然だね」
冬雲は相変わらず元気いっぱいに返事をした。
「ええ、偶然ですね」僕は淡々と答えた。
「うん、でも今回は松本くん、私を驚かせなかったね。約束、ちゃんと守ってくれてるみたい」冬雲は悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「いや、あれは偶然です。わざとじゃありません。ただ、たまたまああなってしまっただけで」
「ん~、そうかな……まあいいや、偶然ってことで、私が寛大に許してあげる!」
「事実はそうなんですけど……」目の前のこの活発な少女に、少し呆れ気味だった。なるほど、あの軽小説の主人公たちがこんな少女に手を焼くのも本当なんだ。
「ええ~、じゃあその後のことはどう説明するの?ああやって私をからかって、すごく恥ずかしかったんだよ?」
冬雲は反論を続けたが、顔には恥ずかしそうな様子は微塵も見えなかった。
「ああ、それは……すみません、謝ります……」
これは反論のしようがなかった。確かにあれは僕がその時の勢いでやったことだから。
「ふふっ、今日は私の勝ちだね、松本くん!」
冬雲さんは嬉しそうな笑顔を見せた。
「はいはい、君の勝ちです……」僕は仕方なく首を振るしかなかった。
「やった!松本くんをからかう作戦、成功!」
どう見ても活発な少女そのものだった。
しかし、クラスの男子たちがみんな彼女に惹かれるのも無理はない。こんな性格と容姿は確かに男子に人気で、特に思春期の男子には。
「おっと~、青になったよ。行こう、松本くん」
「ああ、そうだね」
こうして僕と冬雲は再び一緒に歩き始めた。
同様に、道中では様々な話題で会話が弾んだが、ほとんどの時間は冬雲が面白い話をし、僕は静かに聞きながら、時折適切な反応や返答を返すだけだった。
だが……冬雲のような明るい子と一緒に歩いていると、確かに周囲の注目を集める。
ざっと見積もると、この道のりですでに十数人から視線を感じた。
僕は冬雲さんを一瞥し、彼らがそんな反応をする理由を一瞬で理解した。
僕のことはひとまず置いておく。自分が学園のアイドル級のイケメンではないことは自覚しているから。
だが冬雲さんは確かに整った顔立ちと上品な物腰を持っており、それがクラスの男子たちが夢中になる理由だ。
「あれ?どうしたの松本くん、さっきからずっと黙ってるよ?」冬雲は不思議そうな顔で僕を見た。
「いや、別に。ただ、ちょっとしたことを考えてただけ」
「そう?何のこと?」冬雲は好奇心に満ちた表情を浮かべた。
「あの……今日は全校健康診断だっけ?」
真実は言いたくなかったので、適当に口実を作った。
「うん、そうだよ。高橋先生の朝のホームルームが終わったら、健康診断に連れて行ってくれるって」どうやら僕の言い訳を信じたようで、冬雲は真面目に答えた。
「そうか、やっぱり間違ってなかった」
「松本くん、健康診断が気になるの?」
「いや、別に。ただ、今の身長がどれくらいか気になって。だって前回測ったのは中学……三年生の時だったから」
危なかった、もう少しで「中学三年生」と言うところだった。
「へえ、そうなんだ。えっと……松本くんは170センチくらいかな……」冬雲は僕をじっくり見ながらそう言った。
「多分ね。冬雲さんは……160センチくらいかな」
隣の冬雲を見て、自分の推測を口にした。
「ふふっ、松本くん、それは外れだよ。私、今157センチなの」冬雲は何か競争に勝ったかのように、得意げな笑みを浮かべた。
「ああ……背が低いって、別に喜ぶことじゃないと思うけど……」
僕のツッコミを聞くと、冬雲の得意げな笑みは一瞬で凍りついた。
「もう!松本くん、またからかってる。さっきまでまじめだったのに」
冬雲は訴えるように言ったが、顔にはまだ笑みが浮かんでいた。
〈君にそんなこと言う資格ないだろ。最初からまじめじゃなかったのは君の方じゃないか〉
目の前の少女にまたもや呆れつつ、口では相変わらずからかっていた。
「そう?自分では気づかなかったけど」
「あ、また始まった。自分でも笑ってるくせに」
「いや、そんなことないよ。君の勘違いだ」
「あるってば!絶対ある!松本くん、言い逃れしないで」
そんな冗談めいた雰囲気の中、私たちはゆっくりと学校に到着し、からかい合いは終わった。
予想通り、教室に一緒に入った私たちは再びクラスメイトの注目を浴び、その後「尋問」を受けることになった。
僕の方はまだましだった。男子のほとんどが聞いてきたが、冬雲に特に興味を持つ数人の男子がしつこく質問してくる程度だ。
冬雲の方……状況はそれほど良くなかった。
少なくとも僕の視点から見る限り、冬雲の緊張した表情とおどおどした仕草はすでに何度も目にしており、そんな状況は私たちが何気なく目を合わせただけでさらに悪化する。冬雲が女子からどれほど詳細に尋問されているか、想像に難くない。
そちらの男子たちが冬雲の反応を見て、再び僕に質問を浴びせかけてきた。僕は仕方なく応えながら、内心では非常に面倒くさく感じていた。
〈どうやらこれからは、冬雲と一緒に登校する頻度を減らした方がいいな。毎日こんなんじゃ、彼らはともかく、こっちがうんざりする……〉
僕は心の中でそう決意し、これからの生活が少しでも平穏であることを願った。
……
「はい、記録終わりました。次どうぞ!」記録係の先生が測定した数値を書き留めた。
僕は靴を脱ぎ、測定器の上に立って待った。
「お、結構高いね。もう170センチだよ。はい……次の項目へどうぞ。次!」
予想外だった。170センチまで伸びていたなんて。てっきり165センチくらいだと思っていたのに。
僕は靴を履き直し、その場を離れて次の項目へ向かった。
「ねえ~、松本くん、身長どれくらいだった?」
桜木が突然僕の左側に現れ、両手を背中に回しながら善意に満ちた笑みを浮かべていた。しかし僕から見れば、この笑みには別の目的があるようだ。だって女子の身長測定はとっくに終わっているはずだから。
「170センチくらいです。桜木さんは?」
「へえ~、本当に高いね。残念ながら私は157センチ。でもさ……これでちょうど松本くんとバランスが取れるよね!」
桜木は僕の前に歩み寄り、指で僕の胸をちょんと突きながら、特別な意味を含んだ笑みを浮かべた。
〈もしこれがクラスの他の男子だったら、きっと彼女に夢中になっていただろうな……〉
これは間違っていない。だって桜木も冬雲と同様、クラスで一二を争う美少女なのだから。
しかし残念ながら、僕にはあまり感慨がなかった。
「そうですか?それは意外な偶然ですね」僕は淡々とした表情で返事をした。
桜木は少し驚いた様子で、それからじっと僕の目を見つめた。僕もまた無表情で桜木を見つめ返す。
およそ30秒後、桜木は笑い声を上げた。
「やっぱりね……松本くんってほんと面白い。今まで出会った男の子と全然違う」
「そうですか?それでは、褒めていただきありがとうございます」
桜木は再び僕の目を見つめた。
「桜木さん、早く来て……あれ、二人で何してるの?」
冬雲が廊下の向こうからやってきた。おそらく次の項目を受けるよう桜木を呼びに来たのだろう。
「あ、わかった冬雲さん、今行くよ。じゃあまたね、松本くん!」
そう言って、桜木は手を振って別れた。
「ああ、はい」
冬雲は私たちの様子を見て、心の中の疑問を口にした。
「えっと……松本くん、さっき二人で何を……?」
「ああ、別に。さっき桜木さんに身長を聞かれただけです。それで少し時間がかかってしまって」
「ああ、そうなんだ……」
「ええ、そんな感じです。そういえば、冬雲さんは桜木さんを呼びに来たんですよね?彼女、もう行きましたよ」
「あ、そうでした。次の項目がもうすぐ始まるから」
「それじゃ冬雲さんも早く行った方がいいですよ。そのうち他の人がまた呼びに来ますから」
「あ、そうですね。それじゃ失礼します、松本くん。バイバイ!」
そう言うと、活発な少女はその場を去った。
「なかなかモテるんだね、松本くん。いつも女の子が何人か周りにいるみたいだ」
背後から声がした。測定を終えたばかりの田中だ。
「いや、ただの普通の挨拶ですよ。大げさに言わないでください」
「そう?でも君、この二日間冬雲さんと一緒に登校してるし、桜木さんにもB組のあの子にも連絡取ってるみたいだし……疑わざるを得ないよね……」田中は悪戯っぽい笑みを浮かべてからかった。
「別に変なことはしてませんよ。普通の会話です。それに、田中さんの方がよっぽど人気があるでしょう?もう女子の連絡先を何人もゲットしてるんじゃないですか」
「おお、正面から受け答えるか。やっぱり面白いな君、松本くん。でも残念ながら僕もちゃんとした社交をしてるだけで、変なことなんかしてないよ」田中は笑いながら応じた。
「そうですか?それでは、楽しみにしています」
「おっと、松本くんに反撃されちゃった。君ってやっぱり面白いな」田中は僕の肩を叩いた。
「お互い様でしょう」僕は淡々と返した。
「よかったら一緒に行かない?これから次の項目、一緒に受けることになるだろうし」
「ええ、行きましょう」
そう言って、私たちは次の項目の場所へ移動した。
「そうだ、僕と友達にならない?彼女紹介してあげるよ」田中がそう提案した。
「彼女紹介は結構です。でも友達になるのは構いません。ちょうど私もそのつもりでしたし、田中さんに聞きたいことがあるんです」
「おお、それは意外だ。さあ、どんな質問?」
「現充代表の田中さんとして、どうやって自分なりの毎日を過ごしているのか、お聞きしたいです」
「ふふ、なかなか失礼な質問だな、松本くん……」
そんな冗談めいた雰囲気の中、僕はクラスの陽気な少年と友達になった。
その後は特に言うこともない。ただ健康診断を受けて、時折からかいや質問を挟むだけで、特に語るべきこともなかった。
……
教室に戻ると、私たちは高橋先生の指示に従い、初めての席替えを行った。仮の席はこうして私たちに見捨てられた。
意外なことに、僕の席には変化がなかった。相変わらず後ろから二列目の窓際だ。
桜木と璃乃はここから離され、代わりに冬雲と田中がやってきた。冬雲は右隣、田中は前の席だ。
「本当に偶然だね、松本くん。まさか私たちが隣同士になるなんて。これからよろしくお願いしますね」冬雲は相変わらず優しく微笑んだ。
「ああ、よろしく」僕も同じくうなずいた。
「あ、田中さんもよろしくお願いします」冬雲は礼儀正しく田中にも会釈した。
「おう、よろしく!」田中は相変わらず明るく元気な様子だが、僕から見れば、彼は単に天然なだけなのだろう……
ふふ、冗談だ……
「でもさ、この席結構いいね。これから毎日ネタに困らなくて済みそうだ」田中は真面目な顔で僕を見つめ、自分の席について真剣に評価した。
「僕を何だと思ってるんですか。ちゃんと勉強しなさいよ」
「大丈夫、君がいるから。わからなかったらその時聞けばいいし」
田中は当然といった様子だった。
「本当に参ったな……」僕は呆れ顔で首を振った。
「なんだか……二人の関係、妙に仲良さそうですね。もう友達になったんですか?」冬雲は私たちを見て、疑問を口にした。
「あ、そうだった!もう友達になったんだ。それも親友な!」
そう言って、田中は僕の肩に手を置いた。
「急に友達になるのを撤回したくなってきた……」なぜかそんな気分になった。
「おい!親友になったばかりだろ?撤回するなんて無責任だよ!」田中は手に力を込め、僕の考えを打ち消そうとした。
〈こいつ、やっぱり熱血バカだ……〉
「だからこそ、軽率だったって後悔してるんです。もっと考えてから決めればよかった……」
「それなら勝手に後悔してろ。僕が撤回なんて認めるわけないからな」田中は得意げな様子を見せた。
「はあ……」これにはただため息をつくしかなかった。
「はは、なんだか……松本くんと田中くんの組み合わせ、変だけど妙に面白そうですね!」冬雲は私たちの反応を見て笑い出した。
「だろ?だから親友なんだよ、な、親友?」田中は僕に向かってウインクした。
「やっぱりちょっと後悔してるなあ……」
「はいはい、現実を受け入れなよ。もう撤回できないんだから」田中は僕の肩を叩き、現実を認めさせようとした。
「ふふ、ほんとに面白い組み合わせですね」冬雲は笑いながら、僕と田中のコンビに最終的な定義を下した。
「そうだ!まだ連絡先交換してなかった。連絡先もないのに親友って言えないよな。よし、今のうちに交換しとこう」田中は突然そのことを思い出し、慌ててスマホを取り出した。
「できれば交換したくないんだけど……」口ではそう言いながら、やはりスマホを取り出した。
「なんだよ、親友である俺の連絡先も入れないってことは、冬雲さんみたいな女の子の連絡先だけ入れたいってことか?」
「えっ……それ私にも関係あるんですか?」冬雲は困惑した様子だ。
「え?そうじゃないの?この二日間一緒に登校してたから、もうとっくに交換してるかと思ってた」
「私の社交スキルはそこまで高くないですし。それに、何度も説明してますが、ただ道で偶然冬雲さんに会っただけですから……」僕は呆れ顔で説明した。
「そうなの?誤解だったか。でも仕方ないよな、君がこの二日間冬雲さんとあんなに近くで歩いてたから」田中は当然といった口調でそう言った。
そばで成り行きを見ていただけの冬雲は、田中にそう言われて顔を一気に赤らめ、表情もとても慌てた様子になった。
「い、いえ、そんなことないですよ。ただ道で偶然会って一緒に登校してるだけで、まだ友達でもないし……あ、松本くん、特別な意味じゃないですよ、ただ……」話しているうちに、冬雲は次第に言葉に詰まっていった。
「はいはい、冬雲さん落ち着いて。責めてるわけじゃありませんから。ただ田中の冗談ですよ」そう言って、僕は目で田中に謝るよう合図した。
「あ、そうそう!わざとじゃなかったんだ、ごめん冬雲さん」田中は僕の合図を受け取り、慌てて冬雲に頭を下げた。
「ああ……そうなんですか。よかった。でも次からは、こんな冗談はやめてくださいね」冬雲は胸に手を当てて、少しずつ気持ちを落ち着かせた。
「了解です!次からは気をつけるよ!」田中はうなずいて応えた。
「君ってさ、このおおらかな性格、本当に直した方がいいんじゃないか……」僕はこの陽気な少年の未来に一抹の不安を覚えた。
「はは、次からは気をつけるよ、教訓にさせてもらう。あ、そうだ、早く連絡先交換しよっか」
口ではそう言いながらも、友達が一人増えるのは悪くない。それに研究対象も一つ増えるのだから、やらない理由はない。
「おっ、できた。ありがとう!」田中はようやく静かになった。
「はあ、何か面白いものがあるかと思ったけど、松本のプロフィール何もないじゃん……」田中はがっかりした様子を見せた。
「別にSNSだし、君みたいにわざわざ飾り立てる必要ないでしょ……」僕は思わずツッコミを入れた。
仕方ない。だって田中のアカウントページは確かに派手だし、彼はそれにかなり興味を持っているようだ。でなければあんなに凝るはずがない。
「松本ってやっぱり普通の人と違うんだな……」
田中は少し同情したような目で僕を見つめ、また肩を叩いた。
なぜか人に同情されたような気分だ……
そばの冬雲は何も言わなかったが、私たちのアカウントに対する好奇心が目から溢れんばかりだった。
「えっと……冬雲さん、もしよかったら連絡先交換しませんか?これからよくお世話になりそうだし……」
他に使える口実が見つからず、そう切り出すしかなかった。
「お、俺も!」田中は僕の言葉に合わせ、完璧なフォローを入れた。
「ええ、大丈夫ですよ」冬雲もスマホを取り出し、私たちと連絡先を交換した。
僕は冬雲のプロフィールをざっと見たが、特に派手なところはなく、それでも僕のプロフィールよりはずっと洗練されているようだった。
「よし、ありがとうございます、冬雲さん」
「いいえ、私も松本くんと田中くんが連絡先を交換してくれてありがとうございます」冬雲は礼儀正しく応えたが、すぐにスマホに意識を奪われた。おそらく私たちのプロフィールを見ているのだろう。
田中はスマホを見て、それから僕と冬雲を見て、疑問を口にした。
「そういえば……君たち二人、まだ友達じゃなかったよね?なのに先に連絡先交換しちゃった……うん、なかなか不思議だな」
確かにその通りなのだが、田中の口から出ると何だか妙に聞こえる……
僕が冬雲の方を見ると、冬雲の顔がまたなぜか赤くなっているのに気づいた。
〈さすがクラスのマドンナ級、顔を赤らめてもこんなに可愛いんだ。道理でクラスの男子たちがみんな彼女に惹かれるわけだ……〉
僕は内心そうツッコミを入れた。
「おい松本、なんで急にぼーっとしてるんだ?」田中は僕を心の世界から揺り起こした。
「えへん、別に……えっと、冬雲さんがよければ、僕と友達になってくれませんか?」いい機会だから、自分の考えを口にした。
「ええ、いいですよ。松本くんが友達になってくれてありがとう……」冬雲はそう言いながらも、顔の赤みは全く引いておらず、むしろさらに赤くなっているようだった。
「よし!これでみんな友達だ!」田中は突然熱血バカのように意味不明なことを言い出した。
「僕のことを言うなよ。君、とっくに冬雲さんと友達になってただろ?」僕は田中に呆れた表情を向けた。
「状況が違うよ。僕たちは先に友達になってから連絡先交換したんだ。松本とは違う」田中はもっともらしく分析したが、僕はただ彼の思考回路に興味を持った。こいつは僕の話の要点を理解できるのだろうか……
〈どうやら……こいつは本当にただの熱血バカらしい……〉
僕は心の中で田中にそう定義を下した。
冬雲は何も言わず、ただそばで静かに笑っていた。それでも顔にはまだほんのり赤みが残っている。
「はい!それでは皆さんの席はこのように決まりました。後々問題があって調整が必要な場合は、職員室まで来てくださいね」高橋先生が手を叩き、席替えはこれで終了と告げた。
ちょうどその時、下校のチャイムが鳴り響いた。
「よし、それではこれで終わります。問題があれば職員室まで来てください。終わり!」
こうして、午前の時間は終わった。
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