第4話 笹原龍馬
「えっ。昨日転校してきたんですか。」
どうりでわからなかったわけか。
「あっ、昨日遅刻してきたよね。」
「うん。でもなんで目覚まし時計の事知ってたの?」
「誰か言ってたんだ。また目覚まし時計壊れたのかwって。」
そういえば、前に遅刻の理由にそんな事言ったような気がした。もちろん皆に笑われた。
「そっか...。」
そんな雑談をしながら宿題を解いていく。
「真傘君は意外と頭いいんだね。昨日遅刻してたし、問題児かと思った。」
そういう笹原は数学が苦手みたいで何回か質問をしてきた。
「まぁ...ある程度は...ね。」
人と話す事にあまり慣れていないのが滲み出る。早くこの時間が終わって欲しいと僕は強く願った。
幾分か時間もたち...
「っよし。ギリギリセーフ!
真傘君ありがとう!」
後半は笹原が僕に質問タイムと化していたが
「うん...。よかった...。」
元気よく笹原は走り去った。
授業中、天使が文字で語りかけてきた。
シャーペンが勝手に動く。
"笹原君と仲良くなったのですか?"
僕はその文の下に書いた
"いや別に。あちらから話しかけてきただけだから仲良くなったという気持ちはまだない。"
"あの...非常に言いにくいのですけど...。"
なんだろうと思った時
「おい真傘!」
びっくりして前を向く。数学の先生が怒った顔で黒板の問題をチョークで指していた。
「す、すみません。...えっと3?」
「正解だが、しっかり話を聞け!」
「は、はい。すみませんでした...。」
挙動不審になりながら下を向く。
(怖い。怒鳴られたくない...。)
ノートを見ると天使がまた何か書いていた。
"私のせいですみません。後で話します。"
"うん。"
"この会話は後で消えますので安心して下さい。"
すると天使の言う通り先ほどの会話がすっと消えてしまった。
お昼になった。
前回迷って、昼食を買い忘れたので今度は迷わないようにいつも昼食を買いにいく生徒についていこうと思ったが。
「ねえ真傘君!1人?一緒にお昼たべよ!」
出た。笹原だ。今更ながら何故僕に構うのかな?
「えっ、いや...。いいけど...。」
僕はまた表情が固まる。
昼食を買って、裏庭に来た。相変わらず騒がしい女子が遠くのベンチに座っていた。
「にしても、俺転校したばっかりだからさ、わかんないだよねー。校舎とか。あ、でもみんなもおんなじ感じかな?」
そう言いながら笹原はたまごパンを頬張る。
「僕も昨日迷った。」
「あはは。なんか真傘君て会話が単調的だよね。不思議な人だよ。」
するとまた笹原は意味ありげな表情をした。
「あんまり人と接するのが得意じゃなくて」
そう言って僕はおにぎりを一口食べた。
昼食を食べ終わるとまた微妙な会話が始まった。
「真傘君は部活動やってる?」
「やってないよ。」
「へぇー。なんで?」
よく質問するなぁ。なんて思いながら僕は答えていった。
昼休みも終わりに差し掛かった時
「ねえ、僕の人差し指触ってみて。」
って言って笹原は人差し指だけ立てた右手をこちらへ向ける。
「...へ?」
いきなり笹原が謎の要求をしてきた。
「あ、人差し指だけで触ってね。」
ニコニコしながら笹原は言う。その笑顔と建物の影が被さって、少し不気味に思えた。
「なんで...急に?」
「うーん。触られるのが怖いっていうのは後々苦労するかな、と。だから俺が克服させようかなって思ってさ!」
友達でもなんでもない、何にも知らないお前が?僕の...この...トラウマを。
「いや、無理だよ。治せるわけない。」
僕は言ってしまった。冷たい風がなびく。
脳に過去の記憶が蘇る。
[治る見込みはないのかもしれませんね。
辞めて、嫌だ!
死にました。
愛してるよ。]
「そこまで干渉しないで...ほしい。」
放った言葉の重要性を忘れていた。
そして僕は一目散にトイレに駆け込んだ。
「あっ。ちょ、待って。」
しかし笹原はそれ以上追いかけなかった。
「まだ無理か...。」
予鈴がなった。
トイレの個室は静かで僕の息遣いだけが響いた。気がつけば冷や汗をかいていた。
過去の記憶が遮る。
「おい、さとみちゃ〜ん。大丈夫ですか〜?」
狭いトイレの中地獄が始まった。
足を蹴られたから立てない。
「嫌っだ!触らないで。」
僕は触ってきた男子の手を払う。
「てめえ何反抗してんだよ!?ああ?」
怒鳴られたくない、怒鳴られたくない。痛くしないでほしい。でも僕の望みとは逆にお腹を蹴られてしまった。
「ゔっ。ゲホゲホッ。ごめんなさい。ごめんなさい。」
僕は泣きながら言った。何度も。もうこんなの沢山だ。やめて。
「可愛いでちゅね〜。お着替えの写真でも撮りましょうか〜?」
そう言って服を脱がされそうになった。やめてよ...。
「ゲホゲホッ。ごめんなさい。やめて...。」
脳裏に父親との光景が映る。やめてやめて、
やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。お前みたいなグズ。
「さとみさん!」
また、同じ繰り返し。
「...え?」
涙が出ていた。
「大丈夫ですか?急にしゃがみ込んで泣いてましたけど...。」
「ごめん...。大丈夫。」
しかし記憶にはあまり残っていなかった。
「え?早退?具合悪いのか?」
担任がいつもの事か。のような顔をしながら聞いてきた。
「はい...。体調を崩しました。」
「そうか。気をつけろよ。」
職員室を出た。あの笹原に出くわさないように周りを見て...。
帰った。鍵を閉める。そして無意識に口が動いた、意識よりも早く。
「か...。はぁ...。」
瞬時に我に戻るので変な喋りになった。
「か、なんですか?」
「なんでもない。」
天使は僕より先にリビングの方に行った。
「ああ、そうでした。...ってあれ?」
いない?さとみさんさっきまで玄関にいたはず...。
「さとみさん?」
すると寝室の方から声がした。
「...体調悪いから寝る。」
「そうですか...。」
(さっき言えなかったこと言おうと思ったけれど、しかし私から伝えてもいいのかな?
マニュアルには何もかいてないけれど...。)
マニュアル本を雑にめくる。すると、
「アヴェリー。すぐに天界に帰還せよ。」
どこからか女神様の声が聞こえた。
「り、了解しました。」
(女神様から帰還命令なんて珍しい。)
そうして私は天界の方へ飛んだ。
教室
「真傘は体調不良で早退した。HR始めるぞ」
先生がやや怠そうに言った。
(真傘君早退しちゃったなぁ...。
でも必ず、思惑通りに。)
「なあ笹原!今日暇?」
誰だこの人。真傘君以外には興味もないから話しかけないでほしいのに。
「ううん。ごめんね。これから予定入ってて。暇じゃない。」
するとその人は悔しそうに去った。
帰ろう。こういう集団行動は慣れてない。
真傘君の家に寄ったら完全に嫌われるよね...
でも行きたいな...。そんな真傘君もいいな。
「おい。キモい。」
帰り道の途中、細道で話しかけられた。
「えへっ。ついつい趣味が入りました。」
「さっきの顔も反応も思考もキモいとは。」
呆れた様子ではなしかける。
「天使なのに口悪くなーい?
もっと純粋で明るい天使だと思ったのにな」
そう。話しかけて来た相手は天使だ。
「人間の様に天使も色んな奴がいるんでな。
純粋で明るい天使じゃなくて悪かったな。」
薄暗い細道を抜けて家に着く。
「まぁべつに。」
鍵を開けて中に入る。
「これから1人暮らしか。どうしようかな。」
リビングのソファーに寄りかかる。
「親の保険金などはおりるんだろ?」
「ああ。もちろん。完璧だからね。」
ネクタイを緩める。天使も床に座ってあぐらをかいた。
「死んで当然さ。あんなゴミ。
シエナ、君には感謝してるよ。」
「それが本心ならばどう致しまして。」
天使が笑う。
「本心以外の何者でもないよ。」
そう言って俺はまどろみ、眠りについた。
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