第3話 図鑑

「あ、あの。」

と言う声に目が覚めた。

「大丈夫ですか〜?」

天使が上から覗きこんだ。

「あっ、はい。」

いきなりのことで驚く。たとえ天使でも女の子に上から覗かれるのは初めてなのだから。

「...今初めて人間らしい反応を見ましたよ」

天使がにっこりと笑う。

「そうですか...。」

動揺と動悸を隠す。

「そういえばこの数十分間、何があったんですか?」

「...なんのことですか。」

身に覚えのないことを聞かれた。何を言っているのだろう。僕はずっと天使といたのだが。 天使を見ると驚いた様に目をパチパチさせた。

「そ、そうですか。」

天使が下を向き考え事をする。

「虐待されている子供が...。」

「虐待?」

「...隣の家の...。か、変わってる...。」

「変わる?」

すると天使は真面目な顔をしてこちらを見る

「いえっ。いいんです。...以上で話は終わりです。」

天使は息を吸い込むと

「神の使者になる、つまり私と契約しますか?」

羽が差し出される。真っ白な羽。

僕は悟った。ここまで話して契約しないなんて事になれば、神聖な神の極秘任務を僕は知ったまま過ごす事になる。でもそんなの、絶対に許されない。契約する以外に選択肢は無いだろう。と。

「...はい。契約します。」

すると、真っ白な羽が舞い、首に当たって消えて何処からか、本が落ちてきた。

「おっ...と。」

慌てて落ちてきた本を取る。

「契約完了です。今日からよろしくお願いしますね。」

天使がにっこり笑いながら言った。


今日から僕は神の使者となったのだ。


しかしこの後、天界史上初の異例な事が発見される。それは絶対に起こしてはならないものだった。


「...天使でいいんですかね。呼び名って。」

「なんでもいいですよ。あだ名をつけても。ちなみに私にもちゃんと名前はあるんです!」

天使が鼻を鳴らす。

「え、あったんですか。」

「はい!アヴェリーです。」

「アヴェリー...よろしく。」

「はい!貴方は、真傘さとみさんですね!」

「そうです。やっぱり知ってるんですね。」

「もちろんですよ。」

こんな他愛ない会話をしたのも初めてかもしれないな...なんて思いながら、壊れた目覚まし時計を見つめる。

明日から何が待ってるのやら。



夜。眠りにつく。夢を見た。

「おとーさん。僕、おとーさんの事大好き。だから、殺さないで。ずっと、おとーさんの言う事聞くよ。おとーさんのお人形さんになるから。だから、だから、お願い。

痛くしないで。」


はっ。目がさめる。まだ夜だ。

「気分悪い。」

キッチンに向かう。ノイズが鳴る。

電気をつけると

「...ぇっ、」

人がいた。

「......お父さん?」

血の気が引く。手が震えている。目眩がした。ヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダヤダ。ノイズがうるさい。

「あっ。ご、ごめんなさっ。」

気づくと自分の手には包丁が握られていた。

お父さんは喋らない。でも一歩ずつ着実に進んでいる。逃げなきゃ。捕まる。捕まったら...。だが自分の足はすくんでしまった。包丁は捨て、手を握った。

「許してください。もうしません。お父さんの事嫌ったりしません。ずっとずっと好きでいます。だから、殺さないでください。」

僕は必死に唱えた。



「...とみさん!さとみさん!」

天使、じゃなくて、アヴェリーの声だ。

「...っはっ!はぁ...はぁ...。」

夢だった。息は荒く、汗をかいていた。

「大丈夫ですか?かなり怖い夢を見たんですね。なんだか祈りの手をしてましたよ。」

天使が苦笑いをする。

「......そうですか。」

「基本的にはプライベートには入りませんが、今回は苦しそうだったので...。」

「うん。助かった。」

ベットから降りて顔を洗う。酷い顔だ。

今日も学校があることを忘れてた。時間は...

7時10分だ。間に合う。


支度を済ませて、家を出た。

「ご飯いいんですか?人間は1日3食食べると聞きました。」

「今日は悪い夢見たから食欲がないです。」

「人間はやはり欲ですね。」

フヨフヨ浮きながら言った。

「皮肉と偏見が好きですね。」

「冗談ですよ。」

笑いながら言う。

なんて会話繰り返して、学校に着く。

「おっす!今日は遅刻しなかったな!」

昨日の変な趣味を抱えた人間が話しかける。

正直、名前を覚えてない。

「笹原龍馬。同じクラスメイトですよ。」

天使が耳打ちする。

「えっと笹原君ですっけ。おはよう。」

すると笹原は少しビックリして

「あぁ、おはよう。真傘君。」

とやや意味ありげな表情をして去っていく。

「助かった。」

靴を履き替えて、廊下を歩く。

その時安藤先生とすれ違った。安藤先生は僕を見るなり、別の方を向いて足早に去っていった。...何かしたかな?そんな事を思いながら教室へ向かう。ふと入る前に角に隠れて本を開いてみた。

「どうしました?」

開いただけでは、ただの白紙の本である。それを特定の人物に向ける。

すると本に一気に文字や図、その人の未来の人物像が映し出される。



名前 近藤聡 _詳細_

職業 サラリーマン _詳細_

結婚 しない

寿命 68 残り53年 _詳細_

死因 脳梗塞 気づかれずに孤独死

発見される時は白骨化 _詳細_

人生の大きな変化 性格/精神/体/顔/仕事/金/

人間関係/将来/趣味/食/

感情/生活/その他

運命 ○○大学に入るも遊びに走り、留年を繰り返す。23の時に交通事故を起こし、それをキッカケに、大学を中退。○○会社に入社。出会いがあるものの、すぐに別れ、独り身で過ごしていく。58に体調不良で退社。部長という役職で終わる。脳梗塞で死に9日後に白骨化で発見される。 _詳細_


その他

好物 行きつけの牛丼屋のねぎ玉牛丼

不好物 パセリを焼いたもの(母親の料理)

彼女 橋渡梨奈(20の時)

_詳細_

平成30年6月18日時点




「...すごいな。」

_詳細_の部分や人生の大きな変化の"性格"を押せば、その人の今後の変化がみれる。起きる年や成り立ちまで。

「一番下にサインがあります。そうすれば収集完了となり、本棚の部分に未来が貯蓄されますよ。」

天使の言われた通り、一番下を見る。サインする空白があった。


著者名

_____________


僕はそこにサインした。すると白い羽が舞い、下から白い光が出た。

「著作完了です。教室へ急ぎましょう。」

やや圧倒されながらも、予鈴が鳴ったので、教室へと急ぎ足で向かった。


扉を開けるとざわつきが広がる。

アイドルの事で騒ぐ女子や机にのってアニメの事を語る男子などちらほら見えながら、自分の席に座る。するとまた

「おっす!なあ真傘君は宿題やってきた?」

と朝から元気良く挨拶してきた笹原という男が話しかけてきた。

「...僕?...あ、忘れてきた...。」

なんて事だ。昨日あんな事があったから...。

「マジか!なら俺もやってないから今一緒に終わらそうぜ!」

「えっ。」

こんな事言われたのは初めてだ。いきなりなんだこいつは。

それに...!?

「っあ。やめて。」

反射的に僕の腕に触ってきた笹原の手を払う

「あ、ごめん...。触られるの嫌だった?いきなり話しかけたし悪かった。」

笹原は少しはにかみながら手をしまう。

僕は我に返って

「いや、触られるの慣れてなくて...。咄嗟にごめんなっ...。ね。」

僕は慌てふためく。

すると笹原は少し驚いて笑った。


ガラッ

「HRを始めるぞ〜。」

担任が入ってきた。すると笹原が慌てた様子で喋る。

「うわもうこんな時間か!後で一緒にやろうぜ!」

「あ、うん。」

今思ったが、笹原っていう人間は前からいただろうか...。

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