第2話 契約
電気をつけた。
「...意外と殺風景なんですね。人間のくせに。」
「人間に対して偏見を持ちすぎだと思いますよ。」
「大体そんな人間が多いと聞いたんだけどなぁ。貴方は少し変わり者?」
「自分が変わってるかなんて自覚できるものなんですかね。」
淡々とした会話が続く。
「すぐに私を見て天使だと信じた所かな。普通は疑ったり不安になったりするんですよ。なんで天使の私が人間の貴方より人間について詳しいんですか。」
ツッコミを入れるような勢いで喋り足をばたつかせた。
「あんまり興味を持ってないのかもしれませんね。」
部屋に沈黙がはしる。天使はキョロキョロ見回して何かを見ているようだ。
「お茶淹れますね。」
すると天使が先程キョロキョロしていた視線をこちらに向けて少し顔を歪ませた。
「お茶...たしか葉っぱですね。あれはあんまり好きではないのです。他のものは。」
「そうですか...。カフェオレならありますよ。」
天使は顔を明るくさせて頷いた。
「...。飲みかけですよ?」
天使の顔が固まり変な顔をした。
「客人に飲みかけを飲ませる奴がどこにいるんですか!天使に対し必要よ!」
ほっぺを膨らませて怒った。
「冗談です。」
すると天使は勢い良く座り言葉を吐いた。
「人間ってくだらないんですね!」
どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。でもどうやら人間と同じように喜怒哀楽がはっきりしているらしい。そして人間としての常識を知っているのかあるいは天界でもそれは似たようなものなのか...。
一息ついて天使が喋り始めた。
「本題に入りますよ。私は天使でありこれから、貴方のサポート役につく守護者となります。何故よろしくですの。」
「僕は何かするんですか?」
「はい。貴方には天界から選ばれし者として、周りの人間の未来をたくさん集める未来著者になってもらいます。未来著者はあらゆる形で他人の未来を見て、未来を集める仕事をしてもらいます。そして最終的に他の著者よりも多く他人の未来を見て世界一の著者になって下さい。」
突然だが、最近寝不足だ。だから脳が誤作動を起こす事だってある。デジャブだと思っていた事がただ脳が二回記憶をコピーしてしまったりする事だってある。でも今日は、どこかで未来を予知する話を聞いた気がする。
「...その目的と僕にとってのメリットってあるんですか。あと他にも著者がいるんですか?」
「順番に話しますね。未来を見て集める目的というのは単に天界にいる神の手伝いをしてもらいたいのです。神はあらゆる人間の未来を作り出すために様々な動きをしなければなりないのです。天界の人間が姿を変えて人間の世界で動き一人一人の人間を見る事が非常に困難であり、また把握する為に費やす時間があまりにも膨大であり処理仕切る事が出来ません。そこで天界から人間の世界で選ばれし者を募り、他人の未来を集めてもらう事にしたのです。そうすれば選ばれし者、通称、著者ですね。著者がたくさん集めてくれたのでその時間も省く事が出来て、神は人間の未来を作り出す動きが取れるのです。なんせ人間の世界の時間は早いですからね。」
「...天使は集めれないの?」
「天使も天使で役割がありなにせ人間の世界では見えませんからね。干渉が難しいのです。詳しいことは時折話します。」
「そうなんですか...。」
「次にメリットですね。まあ単純に他人の未来が見える事ですかね。人間は未来を知りたがりますから。未来を知れば変えられる事もあるし幸せになる事も出来る。それに...他人の人生を弄ぶ事もできる。人間の腐った思考ですね。」
天使がカフェオレを一口飲んだ。
「著者自身が変えていいんですか?」
「神に選ばれし者。ですからね。それが神の手伝いを行った人にとっての褒美という事です。」
「著者には一定の基準が存在しますよね。」
「もちろんです。...教えられませんが。」
なんで僕なんだ?というか人の人生を変えられるメリットがあるなんて
「著者じゃない人は不憫ですね。」
「そのかわり少しだけデメリットが生じます。」
「手伝いなのに?」
「強制ではありませんよ。言い忘れてましたが。人間社会に則り契約する形で動きます。」
「じゃあ大体の人が承諾するんですね。」
「...言えばそうですね。」
人という存在は誰かに求められたくて誰かに求めたくて生きている。
「そのデメリットとは?承諾する人が多いならデメリットは小さいんですか。」
人は誰かを支配したい。
「デメリットは。」
人は意識をしなくても自分より下の人間を作りたくなってしまう。
「自分の未来が見えない事です。」
「...でも他の著者から自分の未来が見えたらどうするんですか?」
「他の著者と協力...ですか。」
天使の口端が上がる。
「もう一つあります。デメリットが。」
一呼吸置き目を光らせた。
「著者同士での乗っ取りあいをして他の著者を潰します。」
よくわからなくなってきた。
「神に選ばれし者でも途中で変わる事や放棄する事もあるんです。それに、神は選ばれし者としての最大を褒美を全ての著者から勝ち抜いた者にのみ与えるのです。
何故か。それは一番神の為に働き貢献してくれ、それ程関心高く功績を残してくれたという事で恩を返すのです。
しかし、契約したのにもかかわらず、神に対し無礼を働くような著者ははっきり言って能力の無駄であり、迷惑と判断します。その為に著者同士の奪い合いが必要なのです。」
「最大の褒美とは?」
「もちろん、人間が一番手に入れたいもの。一度だけ何でも願いを叶えて差し上げるのです。素敵でしょう?神の願いに全力で答えた者には幸運を。願いを軽く見た者には罰を。ですよ。」
その行動に必ず自分にメリットがある。恩が返るって思って行動することは社会では当たり前なのかもしれない。
......自分は行動一つ一つに罰と恐怖があったのに...。
「大丈夫ですか?」
我に返る。またぼーっとしていたみたいだ
「あ、すいません。...あの、著者同士の奪い合いで負けた人はどうなるんですか?」
「わかりません。私はこれが初めての担当ですから。」
はにかみながらそう言った。
はぐらかした。そこで断る人間が出てくると恐れたのか。そうなると自分の命や人生に関わることに影響するのか...。
こほんっと咳払いをして話を続けた。
「他の著者はいますよ。世界中に。」
これを見てください。そう言われて、出されたものは魔法の書などでありそうな本だ。
「これは未来図鑑です。ここからどんどん未来を登録するんです。どのくらい未来が観れたかはこのランキングでみれます。」
「現代的なんですね。」
「はい。」天使が笑う。絵に描いたようにふんわりとした笑顔である。
「ちなみに世界中にいます。著者は。
しかし褒美は国ごとの著者に与えられます。平等にいかないと理不尽ですもんね。」
「そうですか...。」目が痛くなりそうな明るい電気に目をやる。
「国に神の使者がいる...か。」
ガンッ!!!!
天使が驚く。
「な、なんの音ですか!」
またか...。視界が曇る。ノイズが鳴る。
「...。隣の家、家族なんだけど、どうも虐待があるっぽくてさ...。」
立て続けに鈍い音やドンッドンッと音が聞こえた。
「...正直...迷惑して...て。」
脳が揺れるような感じがする。視界が狭くなる。
天使は言葉を発しようとしない。
「その子...男の子なんだけど...もう少しで限界になりそうなんだよね...多分。この間見た時も、手に血の跡があったし...さ。」
すると天使が壁を見つめる。
「...ふう、なるほど。本当ですね。
これはマズイ。二日後に死んでしまう。」
「そっか...。」
「契約して下さい。そしたらいくらでも助けます。」
「僕がなんで助けるの...。」
「貴方にもデメリットが起こる。あの人は悪い人間です。」
「悪い...人間...。」
ノイズと過去の記憶で脳が埋まる。
すると天使が消えた。最後微かな悲鳴が消えたが。
すると次に...
悪魔が出てきた
「よお...。昼ぶりで。」
「うるさいな。なんで今日はこうも問題が多いんだよ。」
玄関を勢いよく開ける。
「毎日が楽しくなるだろ?」
悪魔が奇妙な笑い声をあげて言う。
「冗談はその辺にしとけ。」
隣の家のドアを叩く。少し待っても出てこない。音が止んだくらいだ。
「おい。開けろ。」
「使い勝手が雑だなぁ。俺は悪魔だ。」
「なら俺は閻魔の使いだ。」
ドアが簡単に開く。家の中にいた奴らが騒ぎ始めた。
「急に入って来てなんだ!!おめえら!!」
酒、タバコ臭い。ゴミが散乱して異臭がする。そこに1人隅にボロボロの男の子が倒れていた。
すると急に父親と思われる奴が襲って来た。
「てめえ勝手に人の家に入って来てんじゃねえよ!!!!!!!!!!!!!!!!」
男の子はいつもこんな感じで殴られていたのか。こんなクズ...
「社会にとってはそこら辺にあるゴミと変わんないな。」
ゴミの右腕を弾き、足をかけて体制を崩させる。そしてすかさず急所を突くと見せかけて、首を思いっきり叩いた。
最後に急所を突く。
ゴミはもがき苦しみながらうずくまった。
「ゴミなんかいらない。人権もいらない。」
倒れた少年に近づく。血を吐いていた。
「似てるな。」
悪魔が言う。
俺は本を取り出してその場で開きサインした
「無視かよ。ちぇ。」
それを合図に紅の羽が舞った。
自分を中心に舞って、下から黒い光が出る。
先程の荒れた景色からどんどんと景色が変わる。そしてピタリ止まり景色が見えた。
しかし先程の景色とは違く、まだ新居のようだ。カレンダーを見ると2012年。丁度6年前である。男の子が倒れていたところにはベビーベッドがあった。赤ちゃんが寝ている。
「1歳くらいか。」
「そうみたいだな。人の気配はしないが...。父親はどうする?」
「このままじゃ過去が変わらないな。だから、父親を殺す。」
悪魔が不気味に笑う。
「ああ...知ってたよ。俺の出番だな。」
「行こうか...。」
工事現場に着く。どうやらここに例の父親が働いているそうだ。
「...いた。」
「えっ。どこどこ。」
ややテンション高めに悪魔が尋ねる。
「オレンジのTシャツにグレーのズボン。首に黒いタオルをかけてる...。」
「あっ。ミッケー」
子供の様にはしゃぎながら喋る。
「何がいい?」
「あれがいいな。」
悪魔は更にテンションが上がる。そして指を鳴らした。
「戻ろうか。」
物凄い音がなる。何かが上から落ちたようだ。どこからか叫ぶ声が聞こえた。いつのまにかノイズが止んでいた。
元の場所に戻る。そこは一般の部屋と変わらない風景だった。
「えっと、お兄ちゃん誰?」
振り返ると幼い子供が立っていた。
目立った傷は特になく元気そうだった。
「清掃員だ。」
そう言って、足早に去っていった。
「変なお兄ちゃん...?」
「全然集まんないねぇ〜。もっと頑張ってよ」
悪魔がふてくされながら言う。
「俺だって少しずつ頑張っている。」
俺は目が痛くなりそうな明るい電気に目をやる。
「閻魔の使者...。過去を変える、か。」
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