第1章

メールをもらった5日後、僕はいつも休日に来ていた水族館の

入り口の手前のゲートに立っていた。

「ど…どうしよう…つい浮かれすぎてて約束の3時間前

に来ちゃった…今から入ったりとかできるのかな?」

今はまだ5時とはいえ、並んでいる人くらいはいそうだが…

「人っ子一人だれもいないなんて…不気味だなぁ…」

そう言いながら辺りを見回すと、カウンターにいる従業員に

気がついた。

何をすればいいかわからなかった僕は、試しに話しかけに行くことにした。

「あの…すみません」

近づいてみると意外と屈強で石像のような雰囲気の従業員に

少し怖気付きながら声をかけた。

…そして少し流れた沈黙を破るようにして従業員は口を開いた。

「…IDは?」

そう言われた瞬間、僕の頭が高速回転し始め、脳内でIDという

単語をキーワード検索していると、あることを思い出した。

恐らくメールに添付されていた番号のことだろうと。

それに気づいた時、さながら子供が、人生で初めてのおつかいの

会計をしているくらいのスピードで画面を開いた僕は、書いて

あった数字を読んだ。

「えっと…119221044513です。」

言い間違えがあったかもと画面をもう一度よく見ている時、石像のような従業員の口が開いた。

「ID119221044513…対仮 京砂さんですね。まだ集合時間では

ないのでお引き取り願います。集合時間になったら再度

お越しください。」

その感情が少しも込められていない文章と言い方に僕は愕然とし、驚いた。

{言っておくけど、別に石像が喋ったことに驚いたわけじゃないからね。}

(まさか雰囲気だけでは無く心まで石像だったとは…今日から

石像さんって呼ぼ…)

「はぁ…適当な場所で時間を潰すか…」

そうやってとぼとぼカフェまで歩いて歩こうとしたその時。

「お待ちください。対仮 京砂さん。」

振り返ってみると絶対に動きそうになかった石像さんは音もなく、

いつの間にか後ろにいて、少しびっくりしてしまった。

「な、何ですか?」

まさか心の中を聞かれたのかと身構えていると、とても予想外な

言葉が飛び出した。

「対仮 京砂さん、あなたに司令官が用があるそうです。特別に

入構許可を出します。案内しますので付いてきてください。」

そう言われた僕は、司令官は優しい人だと思って「その時は」

笑っていた。





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2025年12月30日 15:00

「バットエンド」 ここはだれ? @kokowadare1206201139mitekurete

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