俺達の。

黒羽冥

第1話俺達の。

俺の腹の下には今……割ってはいけないものが存在している。

そう…………これは温めてそしてきっと新しい生命が誕生するであろうもの…………卵があるのだ。

卵の上で温めていると………俺はメスではないが母性本能というものが湧いてくるようだ………。

これは我が妻が必死に産み落としてくれた大切なもの。

俺は命懸けでこの卵を守らなければなるまい。

だがそんな俺達の大切な生命を狙ってくる輩もこの自然界にはとても多いのだ。

恐るべき外敵からも俺は、この身を呈して守らなければなるまい。

今日も外敵を監視しつつ卵を温める。

そんな俺がいつものように卵を温めていると………何かが迫り来るのを感じる。

俺が、じっと辺りの様子を伺っていると……目の前遠くに何者かの殺気を感じたのだ。

その時。

俺の顔に何かが飛んできた。

ヌメっとした何らかの生暖かい液体………それが俺の頬に飛んでくる。


『うわっ!!???な……………なんだこれ!?くさっ!!???』


思わず叫んでしまうほど俺は異臭に顔をしかめてしまう。

明らかに臭い粘液を顔にうけた俺。


『これは…な………なんなんだ一体!!?』


その正体はなんと、この俺と腹の下の卵を狙う肉食獣のようだった。

俺はその恐るべき狂気の野獣が目の前に涎を垂らし存在しているのだ。

フーッフーッっと荒い息をあげるその姿は俺を恐怖にたたき落とす。

だが……逃げる訳にはいかないこの状況……もうここまで来ればやれるもんならやってみな!なのである。

俺達に迫る影が大きく近づくのが分かる。

さあ…………来るなら来やがれ。

俺の卵は絶対守ってやる!!!!!

そう思い振り返っていく俺。

そして俺の目に映ったものは………………………。

なんと。

餌を口の中に溜め込み…………そして顔を膨らませ恐るべき形相の妻だったのだ。


『お…………おかえりなさい……』

『ふぅ……………お魚口に含んでたら大量過ぎて沢山とってきちゃったわ。』


そう………俺達はペンギン………共同で餌を取り温めなければ。

そして俺達の卵は無事孵ったのだった………。

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俺達の。 黒羽冥 @kuroha-mei

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