第7話 告白未遂


図書館の隅、静かに積まれた古い本の間で、

なずなは影山と並んで座っていた。


「ここが最後の手掛かりかな……」

影山の指が古い日記帳のページに触れる。


なずなは胸が高鳴るのを感じた。


これまで一緒に謎を解き、何度も肩が触れ合った。


心の奥で、言いたいことがうずうずと膨らむ。


「影山くん……あの……」


言いかけて、なずなは言葉を飲み込んだ。


影山はページに集中していて、タイミングを逃してしまったのだ。


「……なずな?」


影山の声に、なずなはぎこちなく顔を上げる。


胸の中のもどかしさがさらに大きくなった。


結局、その日は告白することができなかった。


だが、二人で解く謎の楽しさや、肩が触れる距離の時間が、

なずなの心をさらに深く影山に引き寄せていた。


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