第2話

 

日曜日の朝、ダニエルは機嫌良く、自分の車を庭で洗っていた。

ふと、ポストに目を、向けると吸い寄せられるかのようにポストに歩み寄った。

中を開けると黒い封筒が入っていた。

そして、封筒に黒い文字で自分の名前だけが印刷されているのに気付いた。

何かの悪戯だろうか?

ダニエルは洗車を終えて自分の部屋に黒い封筒を持っていき、開封した。

黒い封筒の中身は一枚の黒い便箋で呪いがかけられていた。


──汝、我と契約を交わすべし。


その途端、彼は薄黒い霧のような渦が自分を取り囲んだ気がしたが一瞬だった。


彼は、その文章を読み終えると無意識に便箋を折り畳み、ジーンズのポケットに入れた。


「ちょっと出掛けてくる。帰りは遅くなるかもしれないけど先に寝ていて」

レスリーに告げ、あとは呪いに導かれて無意識に車を走らせた。

車が着いた先は、木々が生い茂る森を抜けた黒い城だった。

まるでハロウィーンに出てきそうな古い城だった。

城の門が開き彼が運転する車は吸い寄せられて行った。


ダニエルが我に返った時は城の部屋の中だった。

ソファーに腰掛けていた。

大きくて深いラピスラズリのような青い色のソファに座っている自分に気付き、目の前には木製のアンティーク調のテーブルがある。

その向こうには木製の椅子が置いてあった。

高い天井にはシャンデリア、壁には天井にピッタリの高さの古びた焦げ茶色の幅広い書棚、には本がビッシリ並んでいる。

──ここは、一体、何処なんだ?どうして私は、ここにいるのだろうか?

妻に出掛けてくると言った。

行き先を告げたのか?

覚えていない…そもそも行き先を解っていたのか?

いや、違う。

まるで私自身の口が勝手に意識を持ってレスリーに告げた。

そうだ。

それから?

車で何処を、どう走って、ここに来た?

どうやって、この部屋に通された?


「ようこそ、いらっしゃいました。お会い出来て光栄です」

目の前に女性が立っていた。

いや、いつの間に、この部屋に入ってきたのだろう?


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