第7話
翌日。私は、倉庫で埃まみれになっていた。
「なんでここ、こんなに埃っぽいの……」
過去の部誌が参考になるかと思って来たが、どう見ても、長いあいだ誰も足を踏み入れていない。
床を踏むたび、細かい埃が舞い上がる。
「……全然、掃除されてないじゃん……」
段ボールをひとつ、またひとつとどかしていく。指先が、ざらつく。
そのとき、棚の奥に、薄い冊子が見えた。
「あ、昨年度の部誌……」
紙の色が、少し黄ばんでいる。
手に取ると、思ったより軽かった。
ページをめくる。
「どれどれ……」
…そこで、手が止まる。
「……ん?」
視界が、一瞬、理解を拒んだ。文字を読んでいるはずなのに、意味が、頭に入ってこない。
「………………は?」
紙面の一角。太字で印刷された文字。
二年D組 橘 愛由美 追悼について
「……え?」
声が、喉に引っかかる。頭が、追いつかない。
ページの間から、一枚の紙が、ひらりと落ちた。床に舞い落ちたそれを拾い上げる。
手が、少し震えている。
日付を見る。
……昨年六月。
「……」
彼女は、その時点で、亡くなっていた。
「……何が、起きてるの……?」
喉が、ひくりと鳴る。
では…今、私がやり取りしている相手は、誰なのか。
亡くなっているのに、なぜ、文芸部を続けている?
……何のために?
埃っぽい倉庫の中で、私は一人、立ち尽くしていた。
ページの間に挟まれた「追悼」という言葉だけが、やけに鮮明に、目に焼き付いて離れなかった。
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