第3話
雷銃を持って外に出る俺。不承不承ついてくる女神様。それもそのはず、女神様はもともと戦を司る神族の一人だ。どれだけ鈍ってようと、俺ぐらいじゃ剣の腕は到底及ばない。
事実、俺が雷銃の銃口からどんぐり型の球を押し込み始めると、初めて明確な不満を顔に浮かべて女神様が口走った。
「私は何でもできますよ?そのようなもので打ち倒されるわけ……ないのですが」
「はっはっは、そうだろうよ。だが……こいつに関しては一度見てもらわないと対処法が思いつかないだろうからな」
俺がそう言いつつ銃柄を握り、銃床を肩につけて構えた。狙う先はさっき駆け足で置いてきた柵……の上にあるリンゴ。今日の朝ごはんからデザートが減るが、今は女神様に雷銃を見せる方が先だ。
そのまま俺が銃柄を持つ手に力を籠める。そうするだけで、銃底から銃口まで念入りに彫られたルーンが怪しく光りだした。
「こいつぁ、構えた存在が持つ魔素に反応して、その魔素特有の発光を伴う。魔素はわかるか?」
「ええ、すべての生き物が持つ根源的な魔力です」
「そうだ、流石に知ってるか。雷銃は魔素の色に合わせた効果を持つ。ちなみに俺は紫色だ、闇に溶け込めるいい色で、相手に気づかれにくい特性を持つ」
「あの、だから何なのですか?夜討ちでは光をだしていたら気づかれるのでは?」
「そうだな。こいつはあくまで近くで使う武器じゃねぇ」
そう、近くで使う武器じゃない。俺は静かに銃口の上にある突起とはるかかなた、二百メートルは先のリンゴを重ね合わせた。そこから偏差も考えてわずかに銃口を上にあげる。
そして……俺は無造作に引き金を引いた。それだけだ。──それだけなのに、大きな音とともに銃口から紫色の光があふれる。直後、二百メートル先のリンゴが吹き飛んだ。俺が走って取って戻り、そのリンゴを女神様に見せる。
「あ……」
「こういうことだ。弓より音も光も大きいが、弓より圧倒的に遠い距離から相手の鎧を貫徹できる。単発だからって侮るなよ、こいつの球こめは簡単だからな」
俺が持ってきたリンゴは下半分が吹き飛んでいた。円形に抉られた跡が残るリンゴを女神様はじっと見つめ、雷銃と交互に見比べる。
「……なるほど、戦争も進歩するのですね」
「お、さすがはヴァリュ神族だな。理解が早くて助かるぜ。んじゃあ、さっそく女神様にも使ってもらいたい。俺の、貸すからさ」
そういいつつもう一丁持ってきた雷銃を女神様に押し付ける。俺から手渡された細長いルーンが刻まれた金属の筒を持った女神様は、見よう見まねで俺の構え方をまねる。──本当に初めて持ったにしちゃうまく構えられているが、それでも。
「女神様、ちょいと体に触るぜ」
「え?ええ」
そういいつつ俺は女神様の両肩に掌を置き、ゆっくりと揉んだ。こと雷銃において、筋肉のこわばりは命中への妨げになる。
「脱力、脱力。あともう少し脇を閉めていいな。筋肉は重量を支える以外は自然体で、下半身も力を籠めなくていい。右足を前に突き出して?そうそう」
俺の指示通りに体を使えるあたり、女神様は本当に体の使い方がうまい。いわれたとおりに構えを改善した女神様が目を閉じて、俺がやったように銃柄を持つ右手に力を籠める。
直後、まばゆいほどの赤光が雷銃からあふれ出した。やがてその光は一直線に銃口へと収束し、最終的に刻まれたルーンのみが光るのみへと落ち着いていく。
だが俺は、光の強さと色の中身に驚きを通り越して納得していた。なるほど、堕天したとはいえ神様の端くれか。
「あの、合点してないで私の色の意味を教えてください」
女神様がじれったそうに俺を催促する。彼女の声に俺は苦笑しつつ、女神様を見た。
「赤色は滅多に出ない。いまその理由を教えてやるよ。女神様、物は試しに引き金を引いてみな」
「え?でも先ほどの金属の球を入れていませんよ?」
「いいから。俺も赤く光る雷銃を見るのは初めてなんだ。早く」
知識が正しければ、あるいは。逆に女神様に最速する俺を訝しがりつつ、女神様は引き金に指を伸ばし、引き絞った。
直後、大音量と共に赤い光が銃口からほとばしる──だけでなく、赤い光の小さな球がすさまじい速さで飛んでいき……俺の家の境界を示す柵を二本、丸ごと吹き飛ばした。
「……赤色の光を持つ雷銃射手は、弾を込めなくとも己の魔素を打ち出せるんだ。もちろん使いすぎると死ぬが」
驚きのあまり声も出なかったが、女神様が出した魔素の弾丸は俺が聞き及んでいた知識のそれとは一線を画していた。リンゴの下半分を吹き飛ばすのと、木の柵を二本まるまる粉みじんにするのでは訳が違う。
しかも、だ。俺は女神様が俺の説明に発した納得に余計に言葉が出なくなった。
「なるほど、私には好都合です。ヴァリュ神族が唯一捨てなかった神能がありますから」
「ん?」
「不死です。少なくとも魔素涸れでは死にません」
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