第2話 生きた人形との生活
ピピピッピピピッピピピッと目覚ましの音がする、蒼弥は目覚ましを止めて身支度をし始めた
今日はバイトが休みの日で、父親の働くアトリエに向かう予定だ、階段を下りてリビングに行くと・・・
そこにはあり得ない光景が広がっていた、昨日骨董屋で迎え入れた人形のノアと母親が一緒に、朝食を食べているのを見た蒼弥は勘弁してくれと、思い朝食を食べる
「あ、蒼弥おはようー。」
「おはよう、二人とも、なんか馴染んでないか?ノアが?」
「ククク、俺はご婦人と少しばかりの交流をしていただけだ、まさかリリア・ニィーデイスを知る者がまだいたとはな。」
「ホントホント、しかもノアがまさかノワールシリーズの第一ドールってのは驚いたよ、七体目の更新以来、SNSが止まってるからね。」
「・・・母さん、そのリリア・ニィーデイスとノワールシリーズについて俺、何も知らないんだけど。」
蒼弥は真夜中にスルメイカを食べていたノアが言う作者とノワールシリーズと言っていたが、兄弟がいるのでは無いかと思ったが、寝る前にスマホで調べたが
出てくる情報のではー生きた人形ーと
ー吸血鬼コンセプトの男の子ドールーのこれだけしか無かった・・・
母親がリリア・ニィーデイスについて軽く説明をすると蒼弥はなんとなくではあるが理解できた
リリア・ニィーデイスは正体不明の謎の人形作家で、美少年から、青年のビスクドールばかり作っているとのこと、テレビやネットのメディアへの露出は無く自信の個人アカウントのSNSで作品の情報が見れる
そしてノアを始めとするノワールシリーズはリリア・ニィーデイスの最新作で世界に七体しかいない幻のドールとなる、しかしこのノワールシリーズを公開し終えた後SNSの更新が数年前に止まっており、ネットでは憶測が飛び交うのは今でもあるそうだ
そして、リリア・ニィーデイスは魔術師ではないかと言われており、それ以来かの人の後継者を探しているのでは無いかと、これもネットの憶測である
「ノアは魔術師が作った人形ってこと?」
「・・・魔術師、かぁ、いやその線は無いぞリリアはただの人形作家の端くれでしか無い、俺達兄弟を創り出したのは感謝しているが・・・」
「リリアは俺が知る限りでは、あれは過去の亡霊に過ぎないな。」
そうノアは言い終えると、蒼弥の母親に一礼をして蒼弥の肩に乗りだした
「うおっ!ノア!危ないだろう、完全に壊れたら直す物も直せないからな。」
「む、それもそうだな・・・我が主よ俺も出かけるぞ。」
蒼弥は長いため息をつき、仕方が無いと言いノアをトランク鞄の中に入れて、父親のアトリエに向かうことにした
しばらく歩くと昨日ノアを迎え入れた骨董屋は今日は休みになっていて、蒼弥は気にせずまっすぐとアトリエに向かった
アトリエに着くと父親が出てきて蒼弥にノアが入ったトランク鞄について聞いてきた、蒼弥は話したい事があると父親に言い、応接室でノアの事を話した
蒼弥の父親もリリア・ニィーデイスとノワールシリーズを知っていてノアも遠慮無しに口を開いた、初めて見る生きた人形を見た蒼弥の父親はこのアトリエにもノワールシリーズを知っている人が多いが、あまり外に出さない方がいいと言った
すべてのドールオーナーがノワールシリーズを欲しがると、そして違法行為をしてでもリリア・ニィーデイスの作品を獲る者もいると注意し、蒼弥はノアをトランク鞄ではないリュックに入れ替えて、大人しくするんだぞと、ノアに言った
ノアは不服そうだったが、蒼弥の言うことを聞き人形なのに人形のフリをした
今日は父親の手伝いを中心に、アトリエの営業時間が終わった後に蒼弥は昨日の続きで自信の人形を作ることにした
蒼弥の手伝いはアトリエに参加している受講者の相談役と、長いこと人形に触れてきた蒼弥は軽いアドバイスをする程度の仕事で蒼弥のアドバイスは的確かつ、どんな人形にしたいかと計画を立てるのも得意だ
一方で父親はビスクドールの製作を中心に、大手の人形メーカーや代理店の案件と人形の原型師を務めており、業界の中では有名人に入る
アトリエの営業時間が終わった頃に蒼弥は一人で人形の足回りを作っていた、そして人が少なくなった頃合いを見てノアは蒼弥にアドバイスをした
「蒼弥よ、土踏まずを広げすぎだ、これでは立てないぞ?」
「あ、そっか・・・ありがと、ノア。」
「それにしても・・・なんだこのグロテスクは、俺の方がまだ美しいではないか。」
「なっ!グロテスクは無いだろ、グロテスクは!」
「我が主よ、これが好みなのか?」
蒼弥は言葉をどう言えばいいのかわからず、でもノアになら言ってもいいかなと思い心の奥底の本音を伝えた
蒼弥は同性愛者であることと、そして対物性愛者であることをノアにカミングアウトした、中学二年の頃に気になっていた先輩に告白し、振られてその翌日に蒼弥はゲイ野郎とチクられて学校から逃げるように三ヶ月間引き籠もっていたことを話した
引き籠もっていた間は母親の手伝いでミシンで人形の服を縫い、母親とディーラー参加をして少しずつ笑えるようになったこと
そして中学三年から八年間と今に至るまで人形を理想の恋人を作ることに心血を注いで来たとノアに話した
「昔ははじいちゃんの仕事を見ていつか俺もじいちゃんみたいな人形を作りたいと思った。」
「でも・・・今では俺の恋人を作ることにすり替わっているのは、俺のエゴだ。」
「蒼弥、エゴでもいいだろう、俺の今の主は蒼弥だけだ、ならその理想の手伝いをしてやろう!」
ノアはそう言うと、指を鳴らして杖を取り出した、そして杖を軽く引き抜くと刃が出てきた、仕込み杖だったことに驚いた蒼弥はノアからこれを使えと言わんばかりと杖をヤスリのように動かすと
綺麗に削れて行くのを感じた、ノアにこの仕込み杖は何かと聞くとただのヤスリだと言った、蒼弥はヤスリにしてはかなりの質だと思ったが、今までのヤスリとは違い
かなりの速度で綺麗に整う事ができたことに蒼弥はノアにヤスリの杖を洗って返した
「でもどうしてノアがこれを?」
「これはリリアからの選別に賜ったものだ、そして俺達ノワールシリーズはドールを作る道具を持っている、俺のは仕込み杖のヤスリだ。」
日も傾きそろそろアトリエから家に帰ることにした蒼弥は父親に挨拶をして、帰路に着く、今日のこととこれからノアと暮らして行くことになった蒼弥の母親はケーキを買ってきていた、蒼弥は珍しいなと思った程度だが、新しい家族ができると母親はケーキやお菓子を買ってくることが多い
「さあ、今日はノアのお迎えパーティーを開くよー!今日はご飯を早めに食べて夜にケーキを食べよっ。」
「ククク、ならご婦人よ、紅茶の用意も頼んで良いだろうか、蒼弥に。」
「ええ!俺!?まあ、いいけど、期待しないでね。」
いつもより早い夕飯を食べて、蒼弥は風呂に入り、最初にノアが着ていた服が乾いてたので着せ替えて、ノアのお迎えパーティーを開催した
ノアは紅茶の味を吟味し、蒼弥にまあまあの出来だと言った、ちょっとカチンと来た蒼弥だが紅茶を入れるのは苦手なのにノアがまあまあの出来だと言ったのはノアからしたら、美味しいの一言だと思うことにした
ケーキは誰が食べてもいいが、ノアに最初に選択をさせてから残ったものを取ることにした
「ふむ・・・なら、俺はイチゴのタルトをいただこうか。」
「じゃあ・・・母はこれにするねー、チーズケーキ!」
「そして、俺は抹茶シフォンケーキになりましたっと。」
「パピーもいれば楽しいと思ったのにねー、ノアたん?」
「父さんは忙しいからね、あのアトリエもじいちゃんから継いだ物だしね。」
団らんしながらケーキと紅茶を食べて飲んで、蒼弥は明日アルバイトがあるため早めに眠り、ノアもトランク鞄に入り眠ることにしたーーー
誰もが寝静まる真夜中に一人で人形を作る蒼弥の父親はいつ寝ているのかとスタッフにも心配されているが、納品分の原型を作り終えて、眠る前に軽くSNSを覗くとタイムラインに妙な文章があったのを見つけた
「こ、これは・・・ドール界の一大事だぞ!」
その端末に表示されていたのは今投稿された物で、そこにはこう書かれていた・・・
ーノワールシリーズ、第八ドールの製作者を募集中、当選した方はDMにてお知らせいたします。ーと書かれていた
そして、アカウント名はリリア・ニィーデイスの文字が堂々とあった・・・
包帯まみれの人形(男)と暮らすことになりまして コヨミ @ookurui1234
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