真相(2/2)「あの時も!?」

 「もしかして、あのお茶も、あのゴミ箱も、意図的にしたことだったんですか!?」

 「その通り。何の意図もなく、そんなことをしている会社あったら、ブラック予備群ですよ。」

 オタクさんが笑いながらそう言うと、ムンクも一緒になって笑った。

 それから、勤務条件を聞いた。思ったより、休日数は変わらなかった。しかし、給料と福利厚生は、高待遇だ。いや、課長、部長も通り越して、儲かっている会社の社長くらいの豪華さだ。ただ、勤務地は、「本拠地は本社、どこでもが多い」と適当な書き方。とはいえ、

 「出張費を出すし、過労にならないよう、常識の範囲内で仕事を割り振ります。」

 と言われたので、ちょっとは安心している。一通りの説明が終わった後、ムンクが締めの挨拶をした。

 「では、追加の説明会は、これで終わります。本日、お話しした内容は、くれぐれもご内密でお願いします。内定承諾書は、来週までにご提出ください。ご検討よろしくお願い致します。」

 ムンクは、内定承諾書を僕に渡した。深く頭を下げるムンクとオタクさんを前に、僕は、内定承諾書を手に、バッグから筆箱も出した。そして、僕は、嘘偽りなく、こう言った。

 「いえ!今からでも、書いて提出させていただきます!」

 しかし、この軽はずみな決意が仇となる。

 今、僕は、マイパン国に潜入している。2013年11月22日 21時11分、政府関係者御用達のレストラン「ウエストキッチン」のVIPルームにて、国防大臣が、秘書と日本を侵攻するという話をしたのだ。

 既に、内偵部の一人が、その話し合いを録音した。その話は、具体的なものだった。日本まで飛行訓練を行う際、マイパン軍の戦闘機をハッキングさせ、日本に墜落させる。「事故だ」と訴えるマイパン国の発言は、日本には言い訳と思われ、両者の関係は悪化。そして、戦争へと発展させるものだった。

 その会話の中で、国防大臣の家に、戦争への引き金を引く記者会見のカンペがあるという情報を掴んだ。録音だけでは、ディープフェイクだとか言われ、証拠能力は弱い。そこで、僕は、そのカンペを盗む任務を受けることとなった。

 抜き足差し足忍び足、漫画でよく読んでいたこの言葉を、まさか自分自身が実践するとは。

 会話にあった通り、国防大臣は、書斎にあるデスクの青い引き出しに入っていた。鍵が掛かっているが、ピッキングの方法は、研修で学んだ。

 研修通り、開けることができた。例のカンペもあった。僕は、今、大声を出したいくらい喜びに満ちていた。ところが、

 ‘What are you doing?’

 突然現れたガードマンは、僕より姿を隠すのが上手かった。足音も近寄る気配すら気づかなかった。

 「あはははは。」

 ぎこちない愛想笑いを振る舞った後、すぐさま、カンペを持って逃げた。会社が支給したシューズは凄い。蹴れば、防弾ガラスの窓でも突き破る。高いところからの着地は、衝撃を受けない。しかも、充電が満タンの時は、リニアモーターカーよりも速く走れる。アクション漫画の主人公になった気分だ。

 後ろから、沢山の黒いスーツの人たちが追ってくる。狙いは、この僕。めちゃくちゃ怖い。だけど、楽しい。この日常、いつまで続くのだろうか。おそらく、しくじった時までか、寿命が尽きる時までか・・・。

 ちなみに、ここまで書き記したものは、「誰かに言いたい」という欲望を抑えるために書きました。お読みになった方は、他言無用でお願いします。会社にも、きつく言われているので。


〈終わり〉

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