第4話 猫と蝶々と蜜蜂と
せっかくの長期休暇だが、私は<楽園>の調査を続ける。ニコと二階層に上がると、そこにはどこまでも広がる大草原があった。私たちはまた四日かけて歩いた。
この階層にはモコモコという羊に似た魔物や、大きな角を持つバイソンに似たロロ、刀の様な針を纏った齧歯類のキバキリ、毛皮に独特のきらめきを帯びているコンジキジカ、土を掘って芋や根菜を食べる猪のクワボア、角が炎でできているヘラジカのヒノヌシ、夜空の様な毛皮のクーガーの魔物であるヨルノヌシなど、たくさんの哺乳類の魔物が群れを成した暮らしていた。[鑑定]の結果とはいえ適当すぎないだろうか。
植物の多様性は一階ほどではないが、幾ら食べられても決して無くならない草は驚異的だった。他にも低木はベリーの類が豊富で、香草にも困らなかった。噛むと甘みが出て殺菌効果もあるドンテの葉にハマった。
二階層の中心には大きな湖があり、魔物の群れの殆どは定期的にここに水を飲みに来る。また、湖には沢山の魚が泳いでいた。ニコがヨルノヌシの一頭と何かを話すと、夜空の様な毛並みを触らせてくれた。もっふもふだ。
「あなたが<楽園>の主ですね。私はヨルノヌシ。」
彼も知性がある様だ。
「私はトモ、よろしくね。あなたは......バステトって名前はどう?」
よく西洋の学者たちが何かと神話由来の名前を使う様に、私もエジプトの猫の女神の名前を拝借してみた。
「気に入りました。よろしくお願いします。この先へ行くなら私に乗ってください。」
「でも私、荷物があるけど大丈夫?」
するとニコが口を開けてこう言う。
「荷物持ちなら任せてなの!」
どうするつもりなのか不思議に思いながらもニコに荷物を渡すと、ニコは荷物をすっかり飲み込んでしまった。
「僕はこうして好きなだけものを運べるの。」
「凄い!」
これは冒険者にとっても開拓作業員にとっても革命だ。
「僕は凄いの!」
ニコがエッヘンと胸を張っているので撫でてあげる。私たちは三階に行く。
三階はサバンナ。少し乾燥していて、所々に巨木が生えている。大きな蝶々が巨木から透明な紫色の塊を運んでいる。バステトに頼んで蝶々たちを追いかけると、三階の中央部に天を穿つ様な木があった。ニコに聞くと、これは世界樹様なのだとか。
私たちが世界樹に近付くと葉っぱでできた騎士たちが降ってきた。恐らくは世界樹様の葉っぱだ。ニコが根っこの一本で葉っぱの騎士と交信すると、大きな蜂がやってきた。
「私はヒカリミツバチ。あなたが<楽園>の主なのですね。」
「そうです。トモと言います。蝶々たちは何をここに運んでいるのですか?」
「彼らはテンノハタオリ。私たちヒカリミツバチの為に精霊樹の樹液を運んでいます。その代わりに私たちは樹液を溶かして、彼らの子供たちが食べれる様にします。これが樹液を溶かした蜜です。」
そう言って、ヒカリミツバチは私に葉っぱの皿に注がれた蜜を渡してくる。[鑑定]してみると、それは精霊樹の樹液とヒカリミツバチの唾液が混ざったもので、魔石の三倍のエネルギーを蓄えた液体だった。
「これと薬草を混ぜれば薬にもなります。便利ですよ?ただここは平和なので私たちでは到底使い切れませんが。子供達には新鮮な蜜を食べさせたいので、薬にしたものも古くなった蜜も沢山あります。」
「凄いです。余ったものを譲ってもらうことはできますか?」
「もちろんです。」
ニコに頼んで蜜と薬を幾つか持ってもらった。
「それから、これはテンノハタオリの繭です。大人になった彼らはこの繭を放置するのですが、余りに美しいので沢山保管しています。」
そう言ってもらったのは絹地の一片だ。手触りは最高級のシルクをも凌駕するのではないかという上等さで、鑑定してみると高い魔法攻撃耐性を備えていた。もちろん、この繭のサンプルも頂いた。
「あなたの名前はハニ。これからよろしくね。」
「よろしくお願いします!」
三階の探索はバステトのおかげで一日で終わった。
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