第6話
カフェでの会話が頭から離れなかった。
「独り占めしたいです」
「バレバレなそういうところも、めちゃくちゃ可愛いです!」
あの笑顔が、脳裏に焼き付いている。
本当にめちゃくちゃ怖い。怖い。怖い。怖すぎる。
でも、怖いって言葉を口にした瞬間、何かが壊れそうで、私は黙っていた。
オフ日明けの体育館は、いつもよりざわついていた。
新入生が増えて、練習メニューも段々複雑になってきた。
しかし、前髪命な三年生たちは全く動かない。
「阿玖陽、あの子たち見てあげて!」
真希音さんの声に、私は素早く頷いて一年生の列へ向かう。
笑顔で極力丁寧に指導しながら、心の奥では別のことを考えていた。
――流羽のこと。
昨日のカフェでの言葉。
あれは冗談じゃない。
冗談にしては、目が真剣すぎた。
ところがどっこい!このようなことをずっと考えさせるためにわざと意味深なことを言って…?
もしかして私、流羽に、魅了されてる?
それとも洗脳か?
それとも……
「先輩!」
その声に脊髄反射で振り返ると、流羽がいた。
今日も、私のすぐ近くにいる。
距離近すぎ。
「フォーム、見てください!」
「うん、いい感じだよ。」
本当は見てないけど、綺麗事で申し訳ないけれど。
「先輩に褒められると、もっと頑張れます!」
その笑顔が、昨日と同じだった。
……いや、昨日より深い。
目の奥に、何かが沈んでいる。
明らかに昨日と違う。
レベルアップしてる。
昼休み。
部活のグループLINEがざわついていた。
【三年生A:二年生って最近イキってるよな】
【三年生B:副部長って偉そうじゃない?】
【一年生C:え、そうなんですか?】
まずは、校則違反を注意せねばならないということがあったが、では何故私も見ている?と言われると悪事が発展してしまいそうなので手を止めてグループLINEの動きを見ることにした。
あと普通に二年生とか特に私がいるグループLINEでそんなの話さないでしょ。
私にこういうのを見せつけたいからどうぞご自由にって感じだけど。
思うように手のひらで転がされるのはもう飽き飽きだからさぁ。
すると、その流れに、流羽の名前がちらっと出ていた。
【流羽:副部長は特別です。誰にも文句言わせません】
……え?
スマホを握る手が、じっとりと汗ばむ。
「誰にも文句言わせません」って、どういう意味?
その後、三年生のスタンプが無言で流れた。
空気が、静かに崩れていく音がした。
練習後、片付けをしていると、流羽がまた近づいてきた。
「先輩、今日もありがとうございました。」
「…うん、お疲れ。」
結構最上級に気まずい。毎日話しかけてきてるから流羽は平気なのか?
「……先輩、私のこと、どう思ってます?」
その言葉に、心臓が一拍遅れて跳ねた。
何が正解なんだ、?可愛い?頑張ってる?なんかとりあいず、いいね…?
「どうって……後輩として、頑張ってると思うよ、?」
「後輩じゃ、嫌です!」
真顔で言うその声が、妙に重かった。
その瞬間、背筋に冷たいものが走った。
「これは、もう普通じゃない…」
そう確信した。
そしてその時、私は流羽の真顔を初めて見た。
大脳が悲鳴を上げる顔だった。
真顔を見てもなお、性格がわからないって、どうなってるの。
これを、魅了されてるというのか…!?
私は呆然と立ち尽くしたまま没頭した。
一年生の私から見た新道中女子バスケ部は、正直、キラキラして見えた。
全国大会に行ったっていうだけで、みんなの目が違う。
「ここに入れば、私も強くなれる」って思った。
でも、入ってみてわかった。
強いだけじゃない。空気が、重い。
部長の真希音先輩以外の三年生は、なんかピリピリしてる。
「二年生って最近イキってるよな」って笑いながら言ってたけど、笑ってない目だったし。
副部長の阿玖陽先輩は、すごく優しい。
それ以外の二年生もなんやかんや言ってまぁまぁ優しい。
でも、特に阿玖陽先輩の、その優しさが逆に目立ってる。
「偉そうじゃない?」って陰で言ってる声も聞いた。
……怖いなって思った。
でも、一番怖いのは――流羽。
流羽は、いつも阿玖陽先輩の隣にいる。
練習でも、片付けでも、絶対に阿玖陽先輩の側から離れない。
「先輩って、誰にも負けないですよね」って笑って言ってたのを聞いた時、背筋がゾクッとした。
その笑顔、普通じゃなかった。
しかも、グループLINEで見た。
【流羽:副部長は特別です。誰にも文句言わせません】
……誰にも文句言わせません?
その後、三年生のスタンプが無言で流れた瞬間、空気が変わった。
文面からも汲み取れる。
笑い声が減って、流羽への視線が冷たくなった。
「これは、絶対に何か起きる」
そう思ったけど、私は何も言えなかった。
だって、流羽の目が、顔が、動作が――怖すぎたから。
そして、私はいじめられてきたからわかる——これから何か不吉なことが起こる。
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