第十章 満山紅葉と失われぬ告白

秋が箱根に訪れ、天地が最も濃い色彩で染められた。風が林を吹き抜けると、紅葉林の枝葉は深緑から淡紅へと変わり、僅か十日間で満山が燃えるような紅に染まり、二人が初めて出会った時よりも更に盛大で眩しかった。


育てた楓の木はすでに腰高まで成長し、枝々に鮮やかな紅葉が密生し、守り結界の霊気を纏って、老紅葉の木と呼応するように立っていた。紅葉露の泉の傍で、楓は毎日紅葉露を取って絵の具に混ぜ、描いた絵は一層鮮やかになり、画帖には私の姿が大半を占めて——朝の光の中の私、紅葉を拾う私、篝火の傍で本を読む私、一筆一筆に彼女の想いが込められていた。


姉の画塾は子供たちで溢れ、彼女は子供たちを連れて紅葉林の中で写生させ、子供たちの描く紅葉は純粋で鮮やかで、画塾の壁一面に飾られて、温かな雰囲気に包まれていた。祖父は毎日藤椅子を老紅葉の木の下に置き、紅葉露で淹れた茶を飲みながら子供たちの嬉しい声を聞き、時には楓と昔話をして、穏やかな日々を過ごしていた。


私は去年の紅葉祭りの道具を事前に準備し、同じ紅葉の仮面を作り直し、小豆餡の紅葉饅頭の材料を買い込み、更に一沓の紅葉灯籠を作り——去年の約束を果たし、今年はもう別離の不安がなく、ただ二人の時間をゆっくりと過ごしたい。


紅葉祭りの前夜、楓と手を繋いで紅葉に覆われた山道を歩いた。靴底が紅葉を碾るささやかな音は、初めて出会った時と同じだったが、心の中には当時の戸惑いではなく、満ち溢れる安らぎと幸せがあった。風が紅葉を二人の肩に舞い落とし、楓の栗色のカールに細やかな紅が添えられ、緑の瞳に満山の紅葉が映り込み、枝一番の紅葉よりも鮮やかで眩しかった。


「去年のこと、覚えてる?」楓は突然足を止めて振り返り、指先で私の頬をそっと撫でた。「紅葉の山の中で、あなたはぽかんと私を見つめ、手の紅葉饅頭を握り潰しそうになっていたのよ」


私は失笑して彼女を強く抱き寄せ、額を彼女の髪の頂につけ、鼻の下に漂う淡い紅葉の香りを吸い込んだ。「忘れるわけない。当時は君が紅葉から生まれた仙人のように見えて、触れるのも畏れ多かった」

「それから?」彼女は私の胸の中に埋もれ、声が柔らかく響いた。

「それから君を独り占めしたくなり、毎年の紅葉季節を一緒に過ごしたくて、永遠に側に置きたかった」私は腕を締め、声を認真にした。「去年君が紅葉に散った時、本当に二度と会えないのではないかと怖くて、林を守りながら待つ日々は、毎日君のことを思っていた」


楓は私の胸の中で頷き、涙がシャツを濡らした。「私もよ。眠っている間、あなたの声、あなたの想いがずっと耳に響いていた。あなたに会うために、神魂を凝結させて頑張ったの。絶対に醒めて、あなたを見つけると誓ったの」


彼女は顔を上げ、つま先を上げて指先で私の頬を撫で、眉間の紅の印が淡い光を放った。「蓮、去年言い残した話、今年はちゃんと言うわ。」


晩風が吹き抜け、満山の紅葉がシャラシャラと舞い落ち、二人の周りを漂った。彼女の緑の瞳には星屑と紅葉が宿り、一字一句が明確で堅い。「好きだよ、浅羽蓮。恩返しでも浅羽家との絆でもなく、楓が蓮に対して、一生を共にしたいと思う、真心からの好きよ」


心臓が一瞬にして灼熱のように熱くなり、私は俯いて彼女の眉間の紅印にキスをし、声が咽び泣き混じりながらも鮮明に響いた。「私も好きだ、楓。初めて目にした瞬間から、これからの永遠にかけて、君だけを好きだ」


紅葉が二人の抱き合う姿に舞い積もり、老紅葉の木の枝がそっと揺れ、泉の紅葉露が細やかな漣を立て、満山の紅葉がこの告白の最も盛大な証人となった。今回は別離の遺憾もなく、宿命の束縛もなく、ただ心を通わせた二人と、満山に燃える、永遠に褪せない柔らかさがあるだけだ。

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