主要登場人物

物語を彩る、愛と執着、そして運命に翻弄される主要な登場人物たちを紹介します。


主要登場人物


1. ハガル(Hagar)

立場: サラの侍女。後にアブラハムの側室となり、イシュマエルを産む。


性格・特徴: エジプト出身。黒檀のような髪と、意志の強い深い瞳を持つ。虐げられても折れない強靭な精神力があるが、神からの祝福を受けたことで一度は自尊心が肥大し、女主人サラを軽んじる若さゆえの過ちも犯す。


五感の象徴: 「ナイルの泥と、灼熱の砂の匂い」。彼女の歩みは常に大地の熱と共にあり、極限の乾きの中で「神の水の冷たさ」を最も深く知ることになる。


2. イシュマエル(Ishmael)

立場: アブラハムの第一子(侍女ハガルの息子)。


性格・特徴: 聖書で「野ロバのような人」と予言される通り、自由奔放で逞しい少年。父アブラハムの愛を一身に受けて育つが、異母弟イサクの誕生により運命が暗転する。追放後は、荒野を生き抜く伝説的な弓の達人へと成長する。


五感の象徴: 「弓を引く弦の震動と、荒野を駆ける風」。彼の声は枯れた砂漠を潤す雨を呼び、その背中は自由な民の象徴となる。


3. アブラハム(Abraham)

立場: 族長。サラの夫であり、イシュマエルとイサクの父。


性格・特徴: 神への絶対的な信仰を持つが、家庭内では妻サラと愛子イシュマエルの間で激しく揺れ動く苦悩の人。息子を追放せねばならない苦渋の決断は、彼の心を深く切り裂く。


五感の象徴: 「天幕の奥に漂う没薬(ミルラ)と、古い羊皮紙の匂い」。彼の温かな手は、追放の朝、ハガルの肩に置かれた時の震えとして記憶される。


4. サラ(Sarah)

立場: アブラハムの正妻。イサクの母。


性格・特徴: 長年子宝に恵まれなかった苦しみから、ハガルに子を産ませるが、いざ子が生まれるとその激しい嫉妬を抑えられなくなる。高齢でイサクを産んだ後、我が子の相続権を守るために、冷酷なまでにハガル親子の追放を要求する。


五感の象徴: 「冷たく光る宝石と、酸っぱいぶどう酒の匂い」。彼女の笑い声は、祝宴の席でイシュマエルを凍りつかせる鋭い「刃」となる。


5. 御使い(The Angel of the LORD)

立場: 神の言葉を伝える使者。


性格・特徴: ハガルの絶望の淵(泉のほとりや、砂漠の灌木の下)に現れる。人間の感情を超越した圧倒的な光と静寂を纏う。


五感の象徴: 「視界を白く染める光と、耳の奥で響く涼やかな水の音」。その声は、絶望した者の魂を震わせ、死の荒野に井戸を現れさせる。


勢力図・関係性

アブラハム ⇔ サラ: 信頼し合う夫婦だが、後継ぎ問題で深い緊張状態にある。


サラ ⇔ ハガル: 支配と被支配の関係。イサク誕生後は「母としての生存競争」へと変わる。


アブラハム ⇔ イシュマエル: 深い父性愛。追放の儀式は、互いの魂を分かつ最も痛烈な別れ。


ハガル ⇔ イシュマエル: 唯一無二の共依存から、荒野を生き抜く運命共同体へ。


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