それは犯人が犯人を知らないこと
解決編 最終編集日 犯行当日
指先が冷たくなった。濡れ衣を纏うというのはこういう事なのだろう、体の芯から冷えるような寒気に襲われる
「何なんだ、これ…」
おかしい、僕はこの日何も書いていないはずだ。だけど、編集日は僕の行動そのものだった。
解答編 最終編集日 犯行当日
あの日、僕は君を見下ろしていた。体の芯を刺すような寒さと手すりの無機質な冷たさがやけに重なっていたのを覚えている。
先輩は僕を見ていた。責めるわけでも、頷くわけでもない目で僕の事を反射させていた
手を伸ばせば届く、そんな距離感の中で、僕は伸ばすことを拒んだ。それだけだった。それだけで先輩は僕のことを見てくれなくなった。伸ばさなかった手の代わりに声を届けようとした。もう、届くことはないのをわかっていても。
真実は、ずっとそこにあった。僕が見ようとしなかっただけだ。それを見ようとする為ような寒気に襲われる
「何なんだ、これ…」
おかしい、僕はこの日何も書いていないはずだ。だけど、編集日は僕の行動そのものだった。
解答編 最終編集日 犯行当日
あの日、僕は君を見下ろしていた。体の芯を刺すような寒さと手すりの無機質な冷たさがやけに重なっていたのを覚えている。
先輩は僕を見ていた。責めるわけでも、頷くわけでもない目で僕の事を反射させていた
手を伸ばせば届く、そんな距離感の中で、僕は伸ばすことを拒んだ。それだけだった。それだけで先輩は僕のことを見てくれなくなった。伸ばさなかった手の代わりに声を届けようとした。もう、届くことはないのをわかっていても。
真実は、ずっとそこにあった。僕が見ようとしなかっただけだ。それを見ようとする為にぼくは、言葉を紡ごうとしたのだ。
「真実は、ずっとそこにあった。僕が見ようとしなかっただけだ。」
この一文を見たとき、ようやく僕はこの世界の台本を読めた気がした。
「落としたのは僕だったんですね、先輩。僕があなたを殺したんだ。」
絡み合った世界が、ようやく一つの糸を紡いだようだった。何かの意図に導かれるように歩みを進める。不思議と怖くはなかった。まるでそうであることが当然のようだ。
「長かった物語もようやく終わります。いや僕が終わらせますね、先輩。」
白く息づき始めた世界に似合わないような赤色に僕はむかう。あるいはそれは誘蛾灯なのか。
以上がこの事件の全容です。先輩は、僕が殺しました。
警察の方は僕を責めはしなかった。むしろ、同情するような、慰めるような視線を向けるばかりだった。警察からの取り調べの後、仕向けられたかのように瞬が面会に来た。瞬は何も僕を責めなかった。
「…なあ蓮、お前は何を見た?」
瞬の口ぶりは、何かを伝えようとしているようだった。言葉を紡ごうとして、それでも紡げなかった。僕には何かを語る資格なんてないと思った。
「蓮、これがお前の言ってた、倒叙の誤解なのかよ」
瞬はそれだけ残して去っていった。
倒叙の誤解。それは、犯人が犯人を知らないこと。
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