神崎蓮の独白その2

「…だとしても」

認めたくない、第一、僕が先輩を殺す理由がない。僕は先輩のことを慕っていて、先輩は僕のことを認めてくれていたはずだ。なのにどうして僕が先輩のことを殺さなくちゃいけないんだ?

「君は、自分の事しか考えらないんだね。」

「そういえば…」

一度だけ、先輩を困らせてしまったことがある。あれは…そうだ、先輩に初めて小説を見せた時だった。高校生が書いた、拙いミステリー小説。僕はその時探偵役に先輩をモデルにして書いた。その時に言われた言葉が何故今になってこんなにも鮮明になるのか、僕にはわからなかった。

瞬の顔が浮かぶ。今となっておもえば、あいつには全部わかっていたのかも知らない。ああいつの表情、それは全部をわかっていた者の表情だったのだ。

「この世界の探偵役はあいつ、追いつめられるのは僕だったって訳か。」

 そんな思考を振り払うように画面を見つめなおす。そこに何か、世界への言い訳を探している。

「主人公は無知を装う。そこには解釈だけが存在する。主人公の心には悔恨と自己弁護、その二つだけである。」

 その時、僕は先輩の部屋にいた。あの時、何があったのかを思い出した。階段の手すりのやけに冷たい感触、先輩の笑った顔❘ちがう、あれは泣いていた?

「主人公は無知を装う…か。」

頭の中にだれが書いたかも分からなくなった小説の言葉が反芻される。僕は何も知らなかったのではない、知らないと解釈していただけなのだ。この世界の台本を。この瞬間、世あいつの表情、それは全部をわかっていた者の表情だったのだ。

「この世界の探偵役はあいつ、追いつめられるのは僕だったって訳か。」

 そんな思考を振り払うように画面を見つめなおす。そこに何か、世界への言い訳を探している。

「主人公は無知を装う。そこには解釈だけが存在する。主人公の心には悔恨と自己弁護、その二つだけである。」

 その時、僕は先輩の部屋にいた。あの時、何があったのかを思い出した。階段の手すりのやけに冷たい感触、先輩の笑った顔❘ちがう、あれは泣いていた?

「主人公は無知を装う…か。」

頭の中にだれが書いたかも分からなくなった小説の言葉が反芻される。僕は何も知らなかったのではない、知らないと解釈していただけなのだ。この世界の台本を。この瞬間、世界は正しく形を成した。

❘❘僕は初めからすべてを知っていた。

叩きつけられた原稿用紙

のばされた手

僕を見上げる先輩の顔

赤く染まる先輩の身体

そして❘

虚ろの様相を呈するように笑う僕の顔

最後の記憶は僕の記憶なのか世界の台本なのか、それは重要ではない。ここでは僕の記憶という事にしておく。

「そうか、僕は主人公だったのか。」

答えはずっとそこにあったのだ。見ないようにしていただけだった。見たいものだけを見ていたからだ。

 僕の物語のエンディングを読み終えようとした時、書いた覚えのない文字列が目に入ってきた。書いた覚えのない。物語の続きが。

 解決編 最終編集日 犯行当日

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