第50話 因縁の母校
炎上する介護施設を後にしたタカシたちのワゴン車は、ついに因縁の母校、私立聖メロン学園の校門を突き破った。
深夜の校舎。だが、そこにはタカシの想像を超えた光景が広がっていた。下田から連れてきてしまった「志茂田景樹風ゾンビ」のウイルスが、すでに学園内に蔓延していたのだ。
「……なんだ、僕が手を下すまでもないのかな」
タカシが機関銃を肩に、血の匂いが漂う廊下を歩いていると、前方の角から一人の女子生徒が走り寄ってきた。
「タカシくん! 助けて! 佐伯くんたちが、みんな……!」
彼女の名は島田理恵。クラスで唯一、タカシをいじめもしなかったが、助けもしなかった――ただ「見て見ぬふり」を貫いていた少女だ。
「……おや、島田さん。綺麗な顔、いただきましたぁ~~」
タカシがねっとりと一徳ポーズを決めた、その直後だった。
島田理恵の背後の闇から、蛍光色のタイツを履いたゾンビが音もなく這い出した。それは、かつて彼女と仲の良かった、変わり果てた姿の友人だった。
「え……?」
島田が振り返るよりも早く、ゾンビの鋭い牙が彼女の白いうなじに深く突き立てられた。
「ギャアァァァァァァァッ!!」
生々しい肉の引き千切れる音が静かな廊下に響く。島田理恵の体は、背後から襲いかかったゾンビに文字通り「喰い殺されて」いく。彼女の伸ばした手が、助けを求めるようにタカシの靴を掴もうとした。
だが、タカシの不運がここでまたしても最悪の形で発動する。
島田理恵が流した大量の鮮血が、ワックスの効いた廊下を極上のスライディング・リンクへと変えていたのだ。
「あッ」
タカシの足が、島田の血で完璧に滑った。
彼はそのまま、島田理恵を貪り食うゾンビの群れの中へと、仰向けに滑り込んでいった。
「島田さんの悲鳴……いただきましたぁッ!!」
空中でポーズを決めようとしたタカシの顔面に、 島田のちぎれたリボンがヒラリと舞い落ちる。
タカシはゾンビと死体の山に突っ込みながら、その絶望的な光景を「一徳の微笑み」で見つめていた。
その時、廊下の奥から、腰を抜かした佐伯が這いずりながら現れた。
「タ、タカシ……! 助けてくれ! こんなの、いじめよりひどいよ!」
「……佐伯くん。いじめに、上も下もないんだよ」
タカシは、島田理恵を食い散らかすゾンビたちを椅子代わりに腰掛け、ゆっくりと機関銃の安全装置を外した。
「……最後の授業、いただきましたぁ」
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