第48話 ひだまりの家

 犯罪グループとの逃避行の途上、タカシたちが資金調達のために立ち寄ったのは、山あいにひっそりと佇む**悪徳介護施設「ひだまりの家」**だった。

​そこでは、弱者を食い物にする強欲な理事長が、入居者から搾り取った金で贅沢の限りを尽くしていた。タカシの目には、その理不尽な光景が自分をいじめていた教室の縮図に見えた。

​「……弱者をいたぶる言葉、いただきましたぁ~~」

​ タカシは、犯罪グループが職員を制圧する中、理事長室のドアを静かに開けた。

 理事長は、デスクの下でガタガタと震えながら、必死に弁解の言葉を並べ立てている。

「ま、待て! 私には高い志がある! 介護業界の未来を、言葉で変えるんだ! 私の言葉には価値がある!」

​「……言葉、ですか」

 タカシは、ねっとりとした一徳スマイルを浮かべながら、懐から錆びた工作用のカッターナイフを取り出した。かつて、自分のノートを切り刻んだのと同じ種類の刃だ。

​「……じゃあ、その素晴らしい言葉の『根っこ』。いただきましたぁ」

​「ひっ、ひいいいぃぃ!」

​ タカシは理事長の髪を掴み、その口を強引にこじ開けた。理事長が悲鳴を上げようとしたその瞬間、タカシの「呪われた不運」が、今回は「奇跡的な殺意」へと転換された。

​ 窓の外を横切ったカラスの鳴き声に驚いたタカシの足が、高級なペルシャ絨毯の上で絶妙に滑ったのだ。

​「あッ」

​ いつものコケだ。しかし、転倒するタカシの体重がカッターを持つ手に全て乗り、理事長の口の中へと正確無比に突き刺さった。

​「ギャアァァァァァァァッ!!」

​ 生々しい肉の断裂音。床に転がったのは、理事長が権力を振るうために使い続けた、醜く肥大した舌だった。

​「……あ、失礼。滑っちゃいましたぁ……」

​ タカシは返り血で真っ赤に染まった顔を上げ、一徳ポーズのまま舌のなくなった理事長を見下ろした。理事長はもう、傲慢な言葉を発することはできない。ただ、血を流しながら情けない音を漏らすだけだ。

​ タカシは、理事長のデスクにあった高級ワインを一口飲み、それを死体のように横たわる理事長の顔に吹きかけた。

​「……お口直しに、いただきましたぁ」

​ 犯罪グループのメンバーたちも、そのあまりにも「滑って成功させた」

 鮮やかすぎる残虐行為に、恐怖で言葉を失っている。

​ タカシは真っ赤に染まったカッターを捨て、再び機関銃を肩にかけた。

「……さぁ、お待たせ。次は本当に、僕の教室だ」

​ 施設の外には、彼を追い続けてきた警察の包囲網が迫っている。

 しかし、タカシの足取りは驚くほど軽やかだった。

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