第34話 機械仕掛けの追跡者
NHRを掌握し、全国民に「山田を不快にさせた者は強制徴収の対象」と宣言した山田。彼の支配は瞬く間に広がり、人々は「神」と呼ぶか「悪魔」と呼ぶかで意見が分かれた。そんな中、山田は次なるターゲットである西園寺の居場所を特定するため、かつて自分が働いていた派遣会社の本部ビルへと向かっていた。
ビルは既に山田の私設軍隊によって包囲され、西園寺は最上階の社長室に立てこもっていた。
「西園寺……逃げられると思うなよ」
山田は最上階へと続くエレベーターに乗り込もうとした。その時だった。
廃墟からの咆哮
突如、ビルの裏手にある広大な廃車置き場から、轟音と共に巨大な何かが姿を現した。それは、何百台もの廃車が溶接され、巨大なタイヤとクレーンのアームが組み合わされた**「廃車の怪物」**だった。
「なんだ、あれは……?」
怪物はけたたましいエンジン音を響かせ、鋼鉄のボディを軋ませながら、まさに山田が立っているビルへと一直線に向かってくる。その巨体はビルに激突し、コンクリートの壁を軽々と破壊していく。
「ターゲット、ヤ・マ・ダ……確保……!」
歪んだスピーカーから、機械的な合成音声が響き渡る。その声には、どこか聞き覚えのある響きがあった。
ポイントの残骸
山田は素早くデバイスを操作し、怪物の情報をスキャンした。
【警告:ターゲット『廃車の怪物(コードネーム:ジャンクドッグ)』。推定ポイント:測定不能。所有者:不明。特記事項:内部に『美波』の残存生体反応を確認】
「美波……まさか、生きているのか!?」
あの時、鼻を引きちぎられ、瓦礫の中に消えたはずの美波が、廃車の怪物と一体化しているというのか。山田の脳裏に、かつて自身が下した「査定」の瞬間がフラッシュバックする。彼女のプライドを粉砕し、絶望のどん底に突き落としたことが、まさかこんな形で山田に襲いかかってくるとは。
怪物のクレーンアームが山田めがけて振り下ろされる。山田は間一髪で回避するが、その強靭なアームはビルの壁を容易く貫通し、山田の私設軍隊の兵士たちを容赦なく潰していく。
「貴様は、私をゴミにした……! 今度は、貴様を、ジャンクとして、リサイクルしてやる……!」
美波の声が、機械的なエコーを伴って響く。彼女はもはや人間ではなかった。廃車の残骸と化した身体に、山田への怨念だけが宿っていたのだ。
無限の追跡
山田はビルから飛び降り、高速道路へと逃走を開始する。しかし、廃車の怪物はその巨大なタイヤでアスファルトを砕きながら、驚異的な速度で山田を追従する。
「このしつこさ……まさか、お前がそこまでポイントを稼ぐとはな」
山田は火薬グローブで追跡してくる怪物の足元を爆破するが、鋼鉄の装甲には傷一つ付かない。それどころか、怪物のボディから次々と小さなドローンが射出され、山田の行く手を阻む。
「逃がさない……貴様の、ポイントを、全部、喰い尽くしてやる……!」
狂気に満ちた美波の声が、夜の街にこだまする。山田は、自分が生み出した「悪意」が、これほどまでに執拗な形で自分に牙を剥くとは予想していなかった。果たして、彼はこの無限の追跡から逃れ、西園寺への復讐を完遂できるのか――。
山田は廃車の怪物と化した美波から逃れることができるのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます