第33話 受信料の終焉
美波を「無価値なゴミ」へと変えた山田が次に向かったのは、自身のルーツであるボロアパートだった。そこには、変わり果てた佐藤が震えながら立っていた。
「山田……金は戻ったけど、まだ終わらないんだ。さっきも来た……『公共の福祉』を盾に、持てる者からも持たざる者からも、強制的に命を削り取る死神たちが」
アパートの廊下には、不自然なほど威圧的な黒いスーツの集団が立っていた。
『日本放送回収機構(NHR)』。
法が崩壊したこの世界で、彼らは「放送の維持」という名目のもと、国民からポイントを強制徴収する準軍事組織へと変貌していた。
「山田様ですね。未払いポイントが蓄積しています。……現在、利息を含め計1,200,000G。即刻支払わねば、あなたの『心臓の鼓動数』を差し押さえます」
先頭に立つ男・大和田は、嫌味な笑みを浮かべながら徴収用の電子デバイスを突き出してきた。
法外な「受信」
「心臓を差し押さえるだと?」
「ええ。我々の背後には『公共』という名の絶対的な正義がある。SSランクといえど、この国のインフラ維持費からは逃れられない……さあ、そのデバイスをこちらへ」
大和田が山田の腕を掴もうとした瞬間、山田の瞳が黄金色に爆発した。
「公共だと? 妹が死んだ時、お前らのカメラは何を映していた。権藤の不祥事を隠蔽し、権力の提灯記事を流し続けていたのはどこのどいつだ」
「それは、放送法に基づく適正な――」
「黙れ。その『高い授業料』、今すぐ精算してやる」
血の解約手続き
山田の手には、いつの間にか一本の軍用ナイフが握られていた。高エネルギー火薬の熱を帯び、刃先が赤く焼けている。
「ひっ……! 暴力はポイントの減算対象――」
「俺はSSランクだ。お前を殺しても、お前のポイントが低すぎてお釣りが出る」
山田は電光石火の踏み込みで大和田の懐に潜り込むと、その厚かましい言葉を吐き出し続ける喉元へ、ナイフを深く突き立てた。
「解約だ。永久にな」
「ガハッ……!? あ、あああ……」
鮮血が壁に飛び散り、大和田の胸元に輝く「NHR」のバッジを赤く染める。山田はナイフを引き抜くと、倒れ込む大和田の腹部に、さらに何度も「物理的な督促」を叩き込んだ。
周囲の回収員たちが武器を抜こうとするが、山田は火薬グローブを床に叩きつけ、爆圧で彼らを廊下ごと粉砕した。
システムの書き換え
崩れ落ちる回収員たちの山の上で、山田は大和田のデバイスを奪い取り、システムをハッキングする。
【通知:日本放送回収機構・全徴収権限を掌握。ランク『U:不可侵者』への昇格を確認しました】
「これでお前らの『公共』は終わりだ。今この瞬間から、受信料の支払先を俺に変更する。そして――」
山田は街中の大型ビジョンに自分の顔を映し出した。
「全国民に告ぐ。今日から、俺を不快にさせた奴は全員、強制徴収(デス・ポイント・タックス)の対象だ。まずは……西園寺。お前の番だ」
山田の背後で、アパートの廊下は血の海と化し、無機質な電子音だけが「入金完了」を告げ続けていた。
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