第30話 ​罪のスコアボード:派遣社員・山田の覚醒

 物語の舞台は、法や倫理が崩壊し、**「犯した罪の重さが、そのまま人生の格差を覆すポイントになる」**という狂ったルールが支配する近未来へと変貌します。


​ 202X年、政府は経済活性化の最終手段として『罪(ギルト)・ポイント制』を導入した。弱者が強者を「処刑」すれば、その社会的地位に応じたポイントが付与され、下層市民でも一気に特権階級へ這い上がれるという、血塗られた実力主義の世界だ。

​ 山田は、雨の降る歩道橋の下で震えていた。

「……代わりはいくらでもいる、か」

 派遣切りを宣告された時の、西園寺部長の冷笑が耳にこびりついている。さらに追い打ちをかけるように、最愛の妹を飲酒運転で跳ね飛ばし、権力で事実をもみ消した政治家・権藤の顔が街頭ビジョンに映し出された。

​「あいつらの命は、何ポイントだ?」

​ 山田の腕に埋め込まれたデバイスが赤く光る。

 ターゲット:権藤(与党重鎮)。推定ポイント:  5,000,000G。

 これさえあれば、死んだ妹の名誉を回復し、自分も「神」になれる。


 ​復讐のハイウェイ

​ 権藤は、今日も酒の臭いをプンプンさせながら、高級車のハンドルを握っていた。横には、保身のために彼を匿う元・神宮寺院長の姿もある。

​「ガハハ! 貧乏人の命なんて、道路のゴミと同じだよ」

​ その時、前方の路地に人影が立った。山田だ。

彼は逃げない。手には、盗み出した「高エネルギー火薬」を充填した特製グローブを装着している。

​「止まれ、人殺し」

​「どけえッ! ゴミ屑が!」

​ 権藤がアクセルを踏み込む。時速140キロの鉄塊が山田に襲いかかる――。

​ 

 物理的な「断罪」

​ 山田は紙一重でかわすと、すれ違いざまに権藤の運転席のドアを、火薬の爆圧を乗せた拳で殴りつけた。

​ ドォォォォン!!

​ 爆発的な衝撃で車体が浮き上がり、ガードレールを突き破って横転する。煙の中から這い出してきた権藤の顔面を、山田のブーツが踏みにじった。

​「妹の、ポイントだ」

​「待て、金ならやる! 命だけは……!」

​「いらないよ。お前の命で、俺は『上』に行く」

​ 山田の右ストレートが、権藤の鼻柱を粉砕した。続いて、横で腰を抜かしている神宮寺に、かつて妹が受けた衝撃をそのまま返すような重い一撃を叩き込む。

 ランクアップ

​【通知:ターゲット殺害確認。5,000,000G獲得。ランク『SS:執行者』に昇格しました】

​ デバイスから無機質な声が響く。周囲にいたSPたちが一斉に膝をついた。ポイントの力により、山田は彼らの「主人」に書き換えられたのだ。

​ 山田は返り血を拭い、夜の街を見下ろした。

 かつて自分を切り捨てた西園寺部長が、テレビ画面の向こうで震えているのが分かる。今の山田にとって、西園寺の命など、わずか「100ポイント」の価値もない雑草に過ぎない。

​「次は、どいつを『査定』してやろうか」

 ​暗闇の中で、山田の瞳が冷酷な金色に輝いた。

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