第29話 ​破滅のカウントダウン:盗まれた火薬

 神宮寺の病院が強制捜査を受ける直前、西園寺と神宮寺は病院の地下にある「特殊廃棄物保管庫」から姿を消した。しかし、彼らが持ち出したのは金目当の薬品だけではなかった。

 ​翌朝、ニュースが衝撃的な事実を報じる。

『建設現場から大量のダイナマイト用火薬が盗難。容疑者は逃走中の元院長らか』

​ 彼らは追い詰められ、正気を失っていた。自分たちを破滅させた社会と、そして何より「佐藤」への復讐のために、最悪の爆発物を作り上げようとしていたのだ。

 潜伏先:廃墟の化学工場

​ 私は、元派遣社員としての「情報収集能力」をフル活用した。西園寺が密かに所有していた休止中の化学工場の住所を特定。警察が到着するのを待っていては、火薬に火をつけられかねない。

​ 工場の奥へ踏み込むと、そこには異様な光景があった。

 防護服を不格好に着た西園寺と、鼻に包帯を巻いた神宮寺が、震える手で導線をつないでいた。

​「ヒヒッ……佐藤、来たか。この火薬があれば、すべてを吹き飛ばせる。お前のキャリアも、俺たちの汚名も、全部リセットだ!」

​ 西園寺の目は完全に血走っている。神宮寺にいたっては、恐怖で火薬を床にぶちまけながら「俺は悪くない、西園寺さんに唆されたんだ!」と喚いていた。

 勇気ある一歩

​「リセットなんてできない。犯した罪は、一生背負うものよ」

 ​私は冷静に歩み寄る。爆発の危険がある。だが、火薬の知識も「派遣時代に資格取得の勉強」で得ていた私は、彼らの配線がデタラメであることを見抜いた。

​「西園寺さん、その導線、プラスとマイナスが逆ですよ。今スイッチを押せば、爆発するのはその足元だけです」

​「な、なんだと……!?」

​ 西園寺が動揺し、手元の起爆スイッチを落とした。

 その瞬間、私は地面を蹴った。

 最後の鉄拳

​ 逃げようとする神宮寺の襟首を掴み、腰が引けている西園寺に向かって投げ飛ばす。重なり合って倒れる二人。

​「火薬を盗んでまで逃げ切れると思った?」

​ 私は、西園寺の腹に鋭い膝蹴りを入れ、神宮寺の包帯だらけの顔面にもう一度拳を叩き込んだ。

​「これは、あなたがたが踏みにじった人たちの、心の爆発よ!!」

​ 二人が悶絶する中、私は素早く火薬の信管を抜き取り、無力化に成功した。直後、工場を包囲したパトカーの赤い光が窓から差し込む。

 エピローグ

​ 火薬泥棒という重罪が加わり、二人の再起の道は完全に閉ざされた。

 連行される際、西園寺は「どうして……どうして派遣の分際で……」と呟いたが、私はただ一言返しただけだった。

​「どこにいても、一生懸命生きている人間を舐めないことね」

​ 冬の夜空に、事件の終わりを告げる静かな雪が降り始めた。

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