第31話 幸福の査定、爆煙のウェディング

 権藤を葬り、**ランク『SS:執行者』**へと上り詰めた山田。彼の次なる目的は、単なる復讐の完遂ではない。この狂ったシステムの頂点から、さらに「澱み」を掃除することだ。

​ そんな山田のもとに、かつての同僚であり、すべてを失った男・佐藤から通信が入る。

「山田……助けてくれ。婚活詐欺に遭った。貯金も、親の遺産も全部あいつらに持っていかれたんだ……」

​ ターゲットは、表向きは「超上流階級専門の婚活エージェンシー」を謳い、裏では社会的弱者の全財産を吸い尽くす詐欺集団『エデン』。

 その代表・美波の推定ポイントは、被害者たちの怨念を反映し、3,200,000G。

 地獄の披露宴

​ 湾岸エリアにそびえ立つ超高層ホテルの最上階。そこでは、新たな「カモ」たちを祝う偽りのウェディングパーティーが開催されていた。

​「皆様の愛は、資産という形で証明されました」

​ 純白のドレスに身を包んだ美波が、シャンパングラスを掲げて微笑む。その足元に跪き、必死に金を無心しているのが佐藤だった。

「美波さん、返してくれ……あれは妹の入院費なんだ!」

「あら、ポイントの低い方の言葉は、私にはノイズにしか聞こえないの。誰か、この『粗大ゴミ』を外へ」

​ 屈強なガードマンたちが佐藤を引きずり出そうとしたその時、会場の重厚な扉が内側から吹き飛んだ。

 断罪の査定(アセスメント)

​ 爆煙の中から現れたのは、高級スーツを纏いながらも、その拳に「高エネルギー火薬」のグローブを装着した山田だった。

​「チェックインの時間だ。詐欺師諸君」

​「なっ……SSランクの執行者!? なぜこんな場所に!」

 美波の顔が恐怖で引きつる。SPたちが一斉に銃を向けるが、山田の手元のデバイスが青く明滅した。

​【権限行使:下位ランカーの武装解除を命じます】

​「カチッ」という音と共に、SPたちの電子銃が強制ロックされる。ポイント差による絶対的な支配。山田は一歩ずつ、震える美波へと歩み寄る。

​「佐藤の人生を、お前は『0ポイント』と笑ったな」

「ま、待ちなさい! 私はこの国の経済を回して……」

「黙れ。お前の価値を、俺が今ここで『確定』させてやる」

​ 山田は美波の胸元に手をかざし、グローブの出力を最大に設定した。

 爆破と昇華

​「これは、佐藤が流した涙の分だ」

​ 山田の拳が床を叩いた。

 ドォォォォォン!!

​ ピンポイントで制御された爆圧が、婚活会場の床を円形にぶち抜く。逃げ場を失った美波と幹部たちは、自分たちが積み上げた偽りの栄光と共に、下の階へと崩落していく。

​ 阿鼻叫喚の地獄絵図の中、山田は崩れ落ちるシャンデリアを背に、佐藤の肩を掴んだ。

「佐藤、顔を上げろ。お前を騙した奴らのポイントは、今すべてお前の口座に転送した」

​ デバイスから再び、無機質な声が響く。

​【通知:ターゲット無力化。3,200,000G獲得。総資産が規定値を超えました。ランク『U:不可侵者(アンタッチャブル)』への昇格を検討中……】

​「……神になるのも、案外退屈だな」

​ 山田の瞳は、もはや人間らしい感情を失いつつあった。

 夜空には、爆発の影響で舞い上がった「偽物のダイヤ」が、雪のように虚しく降り注いでいた。

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