■■

 不謹慎にも程がある。

 いや___それよりもはどれか?3人はそこに衝撃を受けた。


 なぜなら、フーカが話していたのだ。

のよ」と。

 でもこれじゃ、死んでいるじゃないか。


「……それより、フーカはどこ?」

≪答えてくれたら、教えてあげる!≫


 無茶だ。3人はフーカの母親の顔なんて知らないし、面影があったとしても、此処の首吊り死体はどれもボロボロで顔が認識できない。


「これって、魔法とか使っていい?」

≪いいよ、いいよ。見つけて、見つけて。≫


 ■■はひどく楽しそうだ。まるで幼いフーカとは思えない。


「コマ、できる?」

「……うん。」


 セイに言われ、コルマクが首吊り死体たちの中心まで移動する。


「___Ceset, bana geçmiş hayatını anlat.」


 セイのような、ケルト大陸の公用語ではなかったせいで、何語かは誰にもわからなかった。ただ詠唱を唱えると、森には一面の白い花が咲き、フーカの母親を示した。


「……この人。」


 無数の死体からコルマクが選ぶ。他とは見分けがつかず、辛うじて女性の死体であることがわかるだけだった。


≪正解、せいかーい!≫

「はぁ……教えて、フーカはどこ。」

≪知りたい?知りたい?教えてあげる。≫


 セイに冷たく問われたことなど全く気にせず、■■は奥を指さし、徐にその方向を照らす。


「……フーカちゃんッ!」


 そこには、茨で縛られ気絶したフーカがいた。意識はないが、締め上げてくる茨に苦しんでいる。


「どういうつもり?」

≪だって、だって、いつまでも認めないんだもん。向き合ってくれないんだもん。≫

「何を?」

≪■■なんだってことも、ママが死んだことも、パパが帰ってこなかったことも、ハッピーエンドなんてないことも!ぜーんぶ。≫


 ■■は腕を大きく広げて演説する。


≪ここではもう■■はハッピーエンドになれない。だからね、だからね!あっちの世界地獄で、ママと再会してハッピーエンドになるの!そしたら全部認めてくれるはずだもん!≫


 まるで悪気もなく演説を続ける。自分は正しいことをしていると信じて疑っていないようだ。


≪本当はすぐに殺そうと思ったんだけどね。貴方たちのことも大事なんだって!だからね___≫


 ■■が暗闇からどす黒い大きな鎌を取り出す。同時に3人が武器を構える。


≪___貴方たちも送らないと!≫


 3人のもとに黒い刃が向かう。それぞれが避けて、メインアタッカーがいない以外はいつも通りの連携をとる。


 最初にコルマクが魔力を込めて武器であるチェンソーを振りかざす。■■は思念でできていて実体がないため、物理攻撃は効かないのだ。


「___Sonsuz azap sana olsun.」


 直撃すると同時に、■■にデバフがかかる。動きが遅くなり、10秒間、毎秒1ずつダメージを食らう。


「___Meteori lävistää!」


 すかさず、セイが攻撃を仕掛ける。今回メインアタッカーに代わるのはセイだ。1本の大きい流星が■■の体を貫くように駆け抜ける。


「___鈴の音を聴いて!」


 幣を振り、鈴を鳴らす。セイを中心に、攻撃力と命中力が上がるバフがかかる。


≪酷い、酷いよ。悲しいな、悲しいな。≫


 突如、空から黒い雨が降る。■■が発動した攻撃魔法だ。


「___Tatlı şekerlemenin içinde」


 コルマクが防御魔法を発動する。セイと鈴凛の周りに9つの桃色の飴玉が浮かび、攻撃が当たるたびに、一つずつ溶けていく。防御しなかったコルマクには、ダメージが通り、肌が一部焼けた。


「___落ち着いて。優しい緑の中で休んで。」


 鈴凛がコルマクに回復魔法をかける。


≪■■のためなんだよ?貴方たちの大切な仲間のためなんだよ?どうして、どうして邪魔するの?≫

「きっと、フーカはそれを望んでない。___Aurinkojumala, polta!」


 赤い太陽が■■目掛けて真っすぐ落ちる。


≪痛いよ、痛いよ。何でよぉ!≫


 激怒した■■の鎌が禍々しく、より黒く、より大きく変化する。

 しかし___


「___いい加減にしてくれるかしら?」


 突如、気絶していた筈のフーカの声が降る。


≪……え?≫

「___Tuulenpuuskan lävistämä」


 傘を■■に向け、風属性の魔法を放ち、■■の体は貫かれた。

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