クイズ

「見に行った方が良いかなぁ?結界張って探知する?」


 森の外で、3人が簡易的なテントを張ってフーカの帰りを待つ。


「やめて、あげて……。フーちゃん、きっと、頑張ってる。」


 結界を張ろうとする鈴凛を、コルマクが止める。コルマクが個人に話しかけられてもないのに反応するのは珍しかった。


「僕も同感。多分、これはフーの問題なんだと思う。最近、様子がおかしかったのにも関係してるんだろうし。」


 2人は何となく、感づいていた。この依頼が、フーカの今後を決めるものだと。周りのことに疎い鈴凛だけは、ただ純粋にフーカの身を案じていた。


「待とうか。そうだな……3日。3日帰ってこなかったら結界を張ろう。でもそれは、生死を確認するためだけだ。」

「よくわかんないけど……セイちゃんがそう言うなら。」


 皆、セイの頭の良さは評価していた。セイがそう判断するのならそれが正しいのだろう、皆そう考えていた。

 幸い、今回の依頼は無期限なため、余裕自体はあった。

 そして、フーカが帰らないまま1日が過ぎた。3人はそのまま静かに待った。軽く武器のメンテナンスをしたり、非常食の確認をしたり。決してフーカには干渉しなかった。

 2日目の夜、テントの外に気配があった。3人は武器を構え、テントの外に出る。

 暗い森の入口の方を見ると、フーカによく似た、けれど幼い少女___■■が立っていた。


「……フー?」

≪違うよ、違うよ。■■だよ。≫


 名前であろう部分がうまく聞き取れない。ただ、何となく■■が幼いフーカであることは察した。

 ■■は森からは出られないのか、森の入口から動かない。


「ねえ、フーカって子を見かけてない?君によく似ていて、僕らぐらいの。」

≪知ってるよ、知ってるよ。戻ってきてほしい?戻ってきてほしい?≫

「……君が何かしたの?」


 セイがしっかりと弓を構え始める。


≪ねえ、ねえ、あの子が大事なら、あの子が大事なら、森の奥に。待ってるよ。待ってるよ。ずっと、ずっと……。≫


 それだけ言って、■■は消え去った。


「今のってぇ?」

「小さい……フーちゃんの、思念。……孤独な、カタマリ。」

「じゃあ、やっぱりここはフーに関係する場所なんだね。」

「あの子が……呼んだなら、早く、行く……べき。」


 3人は一度テントに戻り、荷物を確認する。万が一のため入念に。


「よし、行こう。どこに行くべきかは……うん。大丈夫。星が教えてくれる。」


 森の入口に立ち、セイが羅針盤のようなものを取り出す。

 テントに残っていたフーカのハンカチを羅針盤の中の液体に入れると、すぐに道は星の軌跡によって照らされた。

 この羅針盤はセイが作り出したもので、星の神の加護によって動いている。羅針盤中心の球体に対象の私物を入れれば、位置を示してくれるものだ。


 星の軌跡を頼りに3人は進む。夜であることもあり、森の中は暗かった。


 暫く何もない時間が続く。


「……うぇ、何、このにおい?」


 急な腐臭に鈴凛は鼻をおさえる。気づけば土の感触も変わっていた。


「___Tähdet, valaise pimeyttä.」


 セイが短い詠唱を唱え、辺りを照らす。


「___ッ!」


 照らされた先に見えたものは……大量の、首吊り死体だった。


「どういうことぉ?」

「この森に、こんな場所があったなんて……。」


 星の軌跡を見ると、まだ先に続いている。フーカはこれよりも先にいるようだ。


≪来てくれた、来てくれた!嬉しい、嬉しい。ありがとう!≫


 また■■が現れる。ぴょんぴょんと跳ねて、心から喜んでいるようだ。


「うれ、しい……。」


 ■■が発した言葉にコルマクが反応する。また何か考え込んでしまったみたいだ。


≪ねえ、ねえ、これ、なんだと思う?≫

「大量の首吊り死体。」

≪そう、そう!皆、ここにきてね、皆ここで首を吊って死んでいくの!≫


 喜べないことを、楽しめないことを、■■は無邪気に言う。


「この大量の首吊り死体がどうしたの?」


 セイもまた、顔を顰めることなく淡々と問う。鈴凛は既に目を瞑って、鼻を塞いでいた。


≪クイズ!クイズ!___この中で■■のママはどれでしょう!?≫

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