百合の間に挟まる男は死ねば良いってマジですか?

転入から一週間。

俺の日常は、完全に壊れていた。朝。

寮の部屋のドアがノックされる。「透ちゃん、おはよう♡」麗華先輩が、いつもの完璧な笑顔で立っている。

手には手作りの朝食トレイ。

卵焼き、ウィンナー、サラダ、そして……ハート型のトースト。

「一緒に食べましょう。妹の分もちゃんと作ってきたわ」

俺は『これ毎朝だぞ……』と思う。俺は男として生きてきたので、朝から美少女に「妹」扱いされるのは心臓に悪い。

しかも麗華先輩は本気で、俺を「可愛い妹」だと思っているらしい。

麗華は俺の髪を撫でながらいう。

「今日も髪がサラサラね。昨夜ブラッシングした甲斐があったわ」

「……先輩、俺、男なんですけど」

「知ってる。でもあなたは私の妹よ。それでいいでしょう?」

……麗華の言葉を論破できない。

昼休み。

生徒会室。麗華先輩が俺を膝枕している。

周りの生徒会メンバーは「麗華様の妹、羨ましい~♡」と大興奮。

俺は耳かきされている。

「透ちゃん、くすぐったい?」

「や、やめてください……!」

俺は『これ完全に百合の王道シーンじゃねえか……でも俺、男なのに……』と思いながら顔を真っ赤にさせていた。

放課後。

廊下を歩いていると、黒薔薇真琴先輩に呼び止められた。

「九条透。少し話がある」

場所は屋上。

風が強いし視線は冷たい。

「麗華様の妹に選ばれたことは認める。

 だが、覚えておけ」

「……何を?」

真琴は一歩詰め寄り、俺の襟首を掴む。

「百合の間に立つ男は、死ねば良い」

「待ってください! 俺、別に挟まる気ないです!」

俺は背筋が凍りながらも反論する。

「もう挟まってるだろうが」

……確かに、麗華先輩に毎日抱きつかれてるから、結果的に挟まってる。

真琴は目を細めながらいった。

「身体が女でも、心が男なら男だ。

 百合の庭を穢す者は、許さない」

「いや、俺はただ普通に学園生活送りたいだけなんですけど……」

真琴は俺の襟首を離し、背を向けた。

「警告はした。

 次は本気で排除する」

屋上を去る真琴先輩の背中を見送りながら、俺はため息をついた。

(……俺、ほんとにここで生き残れるのか?)

その夜。

麗華先輩の部屋で添い寝。もちろん強制だ、麗華は俺を抱きしめながらいった。

「透ちゃん、今日もお疲れ様。

 私の妹でいてくれて、ありがとう」

俺は心の中で『……でも、正直、ちょっと気持ちいいかも』と思った。

――鏡に映る俺は、完全に美少女だった。


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