百合に挟まる男は死ねば良い!?

月天下の旅人

転校生

聖百合ヶ丘女学園――通称「リリアナ」。

男子禁制、姉妹の誓い(Sœur)という伝統が残る、超お嬢様女学院。

ここでは上級生が下級生を「妹」として選び、卒業まで純粋な愛を誓う。

それが百合の聖域だ。そんな学園に、俺――九条透(くじょう とおる)は転入してきた。俺は男だ。

心も身体の自認も、完全に男。

ただし、身体だけは生まれつき女。

いわゆる仮性半陰陽、という奴だ。

だから、地方の男子校で普通に男として生きてきた。

適合手術は受ける気がない。

この身体は、むしろレアで面白いと思ってる。

所謂TS物の主人公を自分が体感しているような物だ。

だから、まさかこんな女学園に転入することになるとは思わなかった。

転入初日。

入学式の終わった講堂で、生徒会長・白銀麗華(しらぎん れいか)先輩が壇上に立っていた。

銀色の長い髪、完璧な美貌。

学園中の視線を一身に浴びる、文字通りの完璧超絶美少女。麗華先輩はマイクを握り、静かに言った。「新入生の中に、私の妹に相応しい者がいる」

会場がざわめく。

生徒会長の妹に選ばれるのは最高の名誉だ。

みんなが息を呑む中、麗華先輩の視線が――俺に止まった。

「九条透さん。あなたを、私の妹に指名します」

……は?俺は固まった。

周囲の生徒たちが「キャー!」「麗華様の妹キター!」と大興奮。

俺の脳内は真っ白。

(待て待て待て、俺、男なんだけど……?)

麗華先輩は優雅に歩み寄り、俺の手を取る。

冷たくて細い指。

そのまま、麗華は微笑みながら銀の指輪を俺の薬指に滑り込ませた。

「これで、あなたは私の妹よ。

 よろしくね、透ちゃん♡」

会場が割れんばかりの拍手と歓声。

俺はただ、呆然と立ち尽くしていた。

(……俺、ここで生き残れるのか?)

その瞬間、俺の隣で、黒薔薇真琴(くろばら まこと)先輩が鋭い視線を向けた。

麗華先輩の元Sœurで、今は“破戒者”扱いされている人。真琴先輩の唇が動く。

声にならない言葉。――百合の間に立つ男は、死ねば良い。俺は背筋が凍った。

(……マジかよ。俺、もう死ぬのか?)

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