第3話 恋心の芽ばえと、年齢差の痛み
ひろみの「ありがとう」という短い言葉が、
一日の終わりに灯りをつけるように温かかった。
やがて、ひろみのLINEはスタンプから文章になり、
文章は音声通話へと変わっていった。
1回のハグだけで終わるしかない恋でいいと
想っていたことが、急展開した。
夜になると自然に話すようになった。
「今日さ、うまくいかなかった…」
「わかるよ」
「聞いてくれると落ち着く」
ひろみの声はいつも柔らかく、
深夜の静けさの中では特に胸に沁みた。
そして、
認めたくなかった気持ちに気づいてしまった。
――恋だ。
けれど胸の奥では、
すぐに別の声が響いた。
「十三歳も歳が離れている」
「歪んだ形の恋をしてはいけない」
若いひろみには未来がある。
私はすでに人生の終わりにいる。
叶わぬ恋ほど、人を苦しめるものはない。
その“苦しさ”が、夜の電話の度に胸を締め付けた。
それでも、ひろみの声を聞くと、
どうしようもなく嬉しかった。
現実を考えると、どうしようもなく切ない。
胸が切り裂けるほどの動揺だった。
でも温かい。
胸の奥に確かな光が灯ってしまった。
消した方がいいとわかっていたのに、
ひろみの笑顔がその光をさらに強くした。
恋は理屈より先に落ちてしまうものだ。
彼は、もう抜け出せなかった。
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