第3話 VS沖縄のスーパーアイドル ①

 ◆ 


 光輝く朝日が街を照らし、通学路を、学生達が学び舎に向かって歩いていた。


 ――午前8時30分。


 新東京――。 龍之宮 中学校の廊下を、大空 天空はスタスタと早歩き、2年A組のドアをガラッと開けると――


「 天空くん、ボクの師匠になってください! 」


 突然、小柄な生徒 上多 真琴が興奮して近づいてきた。目の下にはわずかにクマが確認できる。

 きょとんとしたあと即答する。


「断る。かっこ悪い」


「 ガーン! 」


 ショックを受けている真琴は目の端に涙を浮かべ。


「お、お願いしますぅ〜……。ボク、天空くんみたいになりたいんですぅ……。昨日のカードバトルを見て、天空くんみたいな強いプレイヤーになりたいって思ったんですぅ……。だから、どうかボクの師匠になってくださいぃ……」


 両手を合わせて懇願する姿に、困った顔をした。


「断る。だって友達を弟子扱いできるわけないじゃん」


「そ、そこをどうか〜」


 さらに喰い下がる真琴にやれやれと嘆息して。


「ん〜〜〜。じゃあ、『あだ名』ならいいぜ」


「ほッ、本当ですかッ?」


 表情を明るくさせてつめ寄ってきた。


「ああ」


 喜びに ぴょんぴょんと飛び跳ねる。


「 やったぁ! ばんざ〜い! 師匠、師匠、師匠〜♪ 」


 複雑な笑みを浮かべ。


( ん〜〜。やっぱりかっこ悪い )


 ――ガラッと、教室の扉が開き――


「 みんなぁー、席に座ってくれ 」


 担任の龍島 龍子が、朝の授業をするために入ってきた。

 教壇に立ち龍子は。


「 今日は、また転校生を紹介するぞー 」


 周りから「連日でか?」「最近多いわね〜」とか聞こえてきた。


「じゃあ、入ってきてくれ」


 ――ガラッと教室に入ってきた転校生は女子で、オレンジの髪をしていた。

 オレンジ髪の女子は教壇の上に立ち。


「 愛媛 みかん(あいひめ みかん)です。よろし…………」


 自己紹介がピタリと止まり、席に座る天空を勢いよく指差した。


「 あああああああっ! あ、あんたは、大空 天空! ど、どうしてここに……? 」


 驚愕に震える転校生みかんに、天空はきょとんと。


「……?」


「知り合いですか、師匠?」


 真琴が後ろから聞くと、首を振り。


「いや、誰だ?」


 みかんのひたいに青筋が浮かぶ。


「 知らない 」


「へっ?」


 呆けている真琴と、首を傾げる天空に向かって怒鳴りつける。


「 あんたなんてェ、まったく知らないんだからねぇ――っ! 」


「 えええええ! でも名前を……? 」


「カンよ!」


「 す、すごいカンだ! 」


 担任の自分を無視したやりとりに大きくため息をこぼし。


「 おまえら……。授業が終わってからやってくれないか? 」



 ◆◆◆◆


 席に座る天空と、その後ろに座る真琴、そして隣に座るみかんは、1時限目の授業を、担任の龍島 龍子から受けていた。


 みかんはふて腐れ、隣に座る天空から顔を背けていた。

 こそこそと真琴が後ろから話しかける。


「 師匠、本当に知らないんですか? どう見ても、忘れられていたことを怒っていますよ? 」


 う〜んと唸り、何か考え込んでいた。


「う〜ん。あと少しで思い出せそうなのにな……」


( やっぱり……心あたりがあるんだ? )


「う〜ん。――ああッ! 思い出したァ!」


 立ち上がり叫んだ天空に、みかんは表情を明るくさせて一緒に立ち上がる。


「お、思い出してくれたの、あたしのことを……?」


「 あの『カード名』を思い出した! 」


「……………」


 みかんの表情が消えて立ち尽くした。

 スッキリとした笑顔で天空は。


「いやぁ……。こう、あとちょっとで思い出せないと気持ち悪いよな……。なあ、真琴?」


「は、はあ……」


 不憫そうに、ぷるぷると震えるみかんを見る。


「しょ、勝負よ……」


 囁いてみかんは、指先でビシッと指差した。


「 天空、あたしとモンスタートランプで勝負しなさい! 」


「ああ、いいぜ!」


「これから、バトルドームまで行くわよ! そこでコテンパンにしてやるわっ!」


「ああ、行こうぜ!」


「〜〜〜〜〜〜〜っ」


 担任を無視した第二弾のやりとりに怒りに震え――。


「 おまえらァァァッ、学校が終わってからやりやがれぇぇぇッ! 」


 怒りを爆発させ、怒号が学校中に響き渡った。



 ◆◆◆◆


 放課後――。

 龍神街にある、天空達が通う中学校から もっとも近いバトルドームの闘技場の上に、天空とみかんが距離を置いて立っていた。


「 天空、あたしが勝ったら、言うこと一つ聞いてもらうわよ! 」


 ビシッと指差した宣言に笑顔で答える。


「ああ、いいぜ」


 即答した天空に、闘技場の外にいる真琴は慌てふためいた。


「い、いいんですか、そんなに簡単に決めて! もし――」


「大丈夫だって。またカードバトルしなさい、とかだって」


 あははっと笑う天空に目をみはる。


「楽観的すぎるぅ……!」


 無邪気な天空の真上からアナウンスが。


《 それでは モンスタートランプによる対戦を始めます 》


《 先行は、愛姫 みかん選手 》


 2人の顔つきが戦闘モードに切り替わる。


「本気で行くわよ、天空!」


「ああ、全力でいくぜ、みかん!」


 わくわくする天空の姿に、みかんは懐かしさを感じてふふっと微笑んだ。


( あいかわらず余裕しゃくしゃくって感じね、天空……。変わらない。でも、昔のあたしだと思っていると痛い目みるんだからね………んっ? )


( ――って、あたしのこと覚えてないじゃん! )


「 むぅ~~っ! 」


「?」


 一方的に睨まれて、天空は首をかしげた。

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