第2話 VS関東チャンピオン 下
◆
大空 天空と伊集院 一郎は、闘技場の上で距離を置いて立った。
その周りを、たくさんのモンスタープレイヤー達が囲っていた。皆このバトルドームの行く末を案じてのことだ。
ドーム内から機械的な《アナウンス》が流れる。
《 それでは モンスタートランプによる対戦を始めます 》
《 先行は大空 天空選手 》
緊張した面持ちで上多 真琴は、闘技場の外から戦いを見守っていた。
「が、がんばれ、天空くん……」
◆◆◆◆
――さきほど、伊集院 一郎に向かって戦いを宣言した天空は――。
「 オレとモンスタートランプで勝負しろ! 」
力強い宣言に――
…………………。
ドーム内にいる全員がシーンと静まり返った。
その静寂を張本人が破る。
「あっ、やっぱり無理だ……」
え?
ドーム内にいる全員が疑問符を浮かべた。
気まずそうに頭をかき。
「オレ、モンスタートランプをやめるとき、全部のカードを友達あげたんだった……あははっ」
にが笑いする天空の後ろから 誰かが近づいていく。
「 このデッキを使ってください 」
振り向くと、真琴が真剣な表情で立っていた。
「真琴、いいのか?」
「はい……」
そしてさらに真剣な表情で告げる。
「ボクは弱い人間です……。いつも嫌なことや、怖いことから逃げてきました……。でも、あいつに挑む天空くんを見て、勇気を貰いました。ボクも天空くんのようになりたいと思いました。だからデッキだけも天空くんと一緒に戦わせてください……!」
周りで見ていたモンスタープレイヤー達が続々と闘技場に上がってきた。
「俺も」
「あたしも」
「ワイも」
「わたしくもよー」
次々と手持ちのカードを天空に手渡していく。
そして一斉に――。
「「 このバトルドームを守ってください 」」
「 ああ、まかせろ! 」
拳を突き出して応えた。
◆
《 それでは モンスタートランプによる対戦を始めます 》
《 先行は大空 天空選手 》
アナウンスが流れ、闘技場の上で向き合う2人の前に、小型ドローンが飛んできた。
《 『バトルボード』を展開します 》
小型ドローンは変形して『細長いボード』に形を変えた。
2人は、対戦用ドローン――通称『バトルボードくん』に、自身のデッキをセットして、初期手札5枚を引いた。
戦いが始まり伊集院 一郎は不敵に頬笑んだ。
「ふふふっ。クズカードがいくら集まっても、超エリートの僕に勝てないことを教えてあげるよ」
あっけらかんに天空は笑い。
「じゃあ、その超エリートに勝てば、オレが関東最強ってことなるな♪」
能天気な発言に、一郎の顔が怒りに歪む。
「 調子乗るなよ……クズが…… 」
【 1ターン目 先行 大空 天空 ライフ15 手札5 】
「 オレのターン、ドロー! 」
天空が目の前に浮かぶ、ドローン型ボードにセットしたデッキから、カードを1枚引いた。
「 オレは『レッドスライム』を召喚する 」
バトルボードにカードを置くと、フィールドにホログラム映像で創られたモンスターが出現。
【 レッドスライム レベル4 属性 炎 種族 スライム スキル? 】
「 ターンエンド 」
1ターン目は、モンスターによる攻撃ができないため相手にターンを移した。
召喚された真紅のぷにぷに生物に、真琴は喜びをあらわにする。
「あれは、ボクのお気に入りのモンスターだぁ♪」
【 2ターン目 後攻 伊集院 一郎 ライフ15 手札5 】
「僕のターン、ドロー」
一郎はデッキからカードを引き、左手に持った手札から1枚抜き取りセットする。
「僕は『スカルロイド』を召喚」
フィールドに、機械型のアンデッド族モンスターが立体化した。
【 スカルロイド レベル5 属性 闇 種族 アンデッド族 スキル? 】
「モンスターは1ターンに1体しか通常召喚できないが、スカルロイドはライフを半分支払うことによって、デッキから仲間のスカルロイドを召喚できる」
伊集院 一郎 ライフ【15】→【8】
「スカルロイド、レッドスライムを攻撃しろ」
手に持つ機械銃をドババッと乱射する。
「魔術カードを発動! 『スライムキャノン』!」
天空が手札をセットすると、フィールドにスライムの大砲が建造された。
「手札のスライム族モンスターを1枚墓地に送ることによって、相手モンスター1体を破壊する!」
墓地に送られた、魔女帽子のスライムが装填されると、爆撃音が響く。
ドガァァァァ――ンッ!
機械型アンデッド スカルロイドが木っ端微塵に粉砕させた。
「もう一体で、攻撃」
残ったスカルロイドが突進しながら機械銃をぶっ放す。
「スライムキャノンの魔術コストで墓地に送った、マジックスライムのスキル発動!」
バトルボードの墓地エリアから、さきほど墓地に送られたマジックスライムが光となって飛び出してきた。
「マジックスライムは墓地に送られた時、このターン使った魔術効果をノーコストで使用できる」
魔女帽子のスライムが呪文を唱えると、大砲が再び建造され、中に装填されたマジックスライムが発射された。
ドガァァァァ――ンッ!
「 やったぁー! 」
2体のモンスターの撃破に、真琴は喜び飛び跳ねた。
「フン。僕のターン終了だよ」
【 3ターン目 大空 天空 ライフ15 手札3 】
「オレのターン、ドロー! オレは手札から『ブルースライム』を召喚して、『合体』!」
フィールドにいるレッドスライムとブルースライムが一つとなり――。
「ライトニングスライムを合体召喚!」
バチバチと電気を帯びる、紫のスライムに姿を変えた。
【 ライトニングスライム レベル9 属性 光 種族 スライム族 スキル? 】
「――ライトニングスライム! がら空きになった相手プレイヤーに攻撃! ライトニングシュピーゲル!」
ぷよぷよの生物が電速で駆ける。
「この攻撃が通れば、天空くんの勝ちです!」
「甘いっ! 『ボーンウォール』」
魔術により、突進するライトニングスライムの前に、骨でできた巨大な壁が立ち塞がった。
「ライフを半分支払うことによって、モンスターの攻撃を無効にする」
伊集院 一郎 ライフ【8】→【4】
攻撃は弾かれ、ライトニングスライムがぽよんぽよんと戻ってきた。
「ああっ、ほしい!」
「オレのターン終了だ」
余裕の表情で微笑む天空に、真琴は感嘆する。
「で、でも、天空くん、す、すごい……。関東チャンピオンを圧倒している……。これなら……」
勝利を期待する瞳が天空に集まった。
その期待感を、一郎の笑い声が切り裂いた。
「ふふふっ、すべて計算どうりさ」
「え?」
「 これで僕の勝率は『百パーセント』になったてことさ 」
【 4ターン目 伊集院 一郎 ライフ4 手札4 】
「 僕のターン、ドロー 」
一郎はデッキからカードを引き、手札にある圧倒的な悪のオーラを放つ1枚をバトルボードにセットする。
「 僕は【ジョーカーモンスター】、デスエンドマジシャンを召喚! 」
フィールドに、黒衣を纏った死神が降臨した。
【 デスエンドマジシャン レベル13 属性 闇 種族 アンデッド スキル? 】
「じょ、【ジョーカーモンスター】!」
レベル13の邪悪なモンスターの出現に、真琴は身を震わせた。
( 強力な能力を持つかわりに、破壊されたら場合、即負けになってしまう『希望と絶望の象徴』……【ジョーカーモンスター】。ボクもほとんど使いこなせず負けてしまう…… )
「フフフっ。こいつは偏屈者でね。強力な能力を持つ変わりに召喚条件がとても難しいんだ」
自身のモンスターにやれやれと嘆息する。
「このモンスターは、ライフが4以下の時しか召喚することができない」
「へぇー。だからあんなにライフを削っていたのか?」
「だが、召喚さえできれば僕が負ける確率はゼロだ……!」
関東チャンピオンは、黒衣の死神に抹殺指令を下す。
「さあ、デスエンドマジシャン。おまえの恐怖の力をヤツに見せてやれェ!」
骨の腕に持つ巨大な魔の鎌で、ライトニングスライムに死ノ一撃を振り下ろす。
「魔術、『スライムブレイド』! レベル8以上のスライムがいる時に発動できる。相手モンスター1体を斬撃により破壊する!」
魔術が発動し、ライトニングスライムが装備した大剣が、デスエンドマジシャンを魔の鎌ごと両断した。
「やったぁー、天空くんの勝ちです!」
崩壊していくジョーカーモンスターに、ドーム内が勝利に湧き立った。
だが、崩壊が止まり、巻き戻しのように完全な状態に戻っていく。
「えっ?」
瞳を見開く真琴達に、勝ち誇った顔で告げる。
「このモンスターは、手札を1枚墓地に送ることによって『再生』できる」
「そ、そんなァ……!」
絶望感に襲われる真琴達の前で、再生された黒衣の死神が再動を始める。
「いけェ、デスエンドマジシャン、ライトニングスライムを破壊しろ!
死ノ一撃が、紫のスライムに振り落とされ、世界から存在が抹消された。
「ああッ! 天空くんの合体モンスターが……!」
「……………」
無言で立ち尽くす天空を高笑う。
「ハッハッハッ! 不死身、最強、無敵! さあ、恐怖に怯え、僕にデッキを獲られることに絶望しろ! 涙をボロボロ流して泣き喚けェ――ッ! ハーッハッハッハッハッハッ!」
「そ、天空くん………」
歪つな笑い声が響くなか、不安げに友人を見ると、
「 楽しい 」
「?」
囁いて天空は、満面の笑顔を輝かせた。
「やっぱり、モンスタートランプはめちゃめちゃ楽しいなぁ!」
無邪気な天空に、闘技場の外にいる前田 マサルはいぶかしげにつぶやいた。
「転校生のヤツ、もっと真面目にやりやがれ……! このカードバトルには、ここの運命が賭かっているんだぞ……だが……」
ニヤリと笑うと、隣にいる真琴は身を乗り出した。
「そうです! 天空くんはきっと、モンスタートランプを楽しめば楽しむほど強くなるんです! だってあんな楽しそうなんだもん!」
最強の関東チャンピオン相手に、わくわくする天空に運命を託し、モンスタープレイヤー達は勝利を祈った。
【 5ターン目 大空 天空 ライフ15 手札2 】
「 オレのターン、ドロー! 」
引いたカードを確認すると、そこには、待ち望んでいたカードが――。
「 『レジェンドオブナイト』を召喚……! 」
白聖の鎧を装着した騎士が、フィールドに颯爽と登場した。
【 レジェンドオブナイト レベル15 属性 光 種族 騎士族 効果 ? 召喚条件 相手のフィールドにジョーカーモンスターが存在する時 】
レベル15の強力なモンスターの姿に真琴は瞳を見開く。
「あ、あれは……! さっき店長が渡したカード……!」
――カードバトルが始まる前、大空 天空が闘技場の上でみんなからカードを受け取っていた時、バトルドームの経営者 剣崎 勇矢が、1枚のカードを持って近づいて行った。
『 天空くん。このカードでバトルドームを頼む 』
周りにいるモンスタープレイヤー達はざわざわとザワめき出した。
「あ、『あのカード』……アレじゃね?」
「あ、ああ……。『あのカード』だ……」
( あのカード……? )
真琴は考える姿勢を取り。
「――ああっ! 世界に52枚しかないと言われた、伝説の始まりのカード、クローバーのキング『レジェンドオブナイト』!」
カードを渡した人物に皆の視線が集まる。
「……ど、どうして、あのカードを……?」
店長 剣崎 勇矢は気不味そうに笑い。
「いや、タダ友達に借りているだけだよ」
そして闘技場の上にいる天空に声をかける。
「 天空君! 遠慮せず使ってくれ! アイツも、『蓮也』も、それを望んでいるはずだ! 」
前を向いたままうなづくと、最強の騎士に指令を与える。
「 レジェンドオブナイト、攻撃――ッ! 」
背負っていた伝説の剣を握りしめ、地を蹴り駆け出した。
「 『アルティメットスキル』を発動――! 」
スキルを遥かに凌駕した究極秘技『アルティメットスキル』
少数のモンスターしか持たない希少能力が、この状況を打破するために発動された。
「 やったぁー! 天空くんの勝ちだぁっ! 」
喜びにあふれる真琴達に――
「フフフっ」
伊集院 一郎は不敵に頬笑み。
「 アハハハハハハッ! 計算どうり! 」
手札を1枚セットする。
「 魔術『
魔術カードが発動した瞬間――。
グ サ リ ――と、【漆黒の剣】が、究極秘技を発動しようとしていたレジェンドオブナイトの胸を貫き、切っ先が背中から突き出た。
策略の成功に一郎は雄弁に喋り始める。
「この魔術は、騎士タイプのモンスターの能力を封じ込めて破壊する。それがたとえ――伝説のカードだとしてもなァ!」
「 そんなああああァ! 」
勝利への希望が絶望に塗り潰され、貫かれたレジェンドオブナイトの身体にヒビが入り、大爆発した。
「……ああ、伝説のカードが……!」
爆煙が闘技場を包み、一郎がニヤリと、剣崎 勇矢を見下ろした。
「フッフッフッ、店長。僕はあなたが伝説のカードを持っていることを、あらかじめ諜報機関に調べさせて知っていたんですよ」
「――ッ!」
「だからあのカードを賭けさせるために、わざわざこのバトルドームをパパに言って買収してもらったんです」
衝撃的な真実が語られ、天空以外の全員が動揺していた。
余裕しゃくしゃくと喋り続ける。
「そして計算どうり、あなたはここを守るために『レジェンドオブナイト』を賭け、僕が事前にデッキに仕込んでいた『
確信した勝利への甘い蜜に、愉悦に笑う。
「 アーハッハッハッハッハッ! 今日は最高の誕生日なりそうだよォ! 奪ったデッキも百個になり、バトルドームに、伝説のカードまで手に入るんだからねェ――ッ! アーハッハッハッハッハッ! 」
不快な笑い声をあげる一郎に、天空が両手を合わせ。
「じゃあ、すまん。先に謝っておくわ」
「なに?」
怪訝な顔をする一郎に にっこりと告げる。
「 誕生日プレゼントを、全部あげられそうにない。オレが勝つからさ 」
ビキッと、一郎のひたいに青筋が浮かぶ。
闘技場を包み込んでいた爆煙が晴れていき――
「 な ッ ! 」
そこには、4体のカラフルなスライムがいた。
レッドスライム レベル4 炎
ブルースライム レベル3 水
イエロースライム レベル3 土
ピンクスライム レベル1 光
「 魔術『スライムヒーローパーティ』! 」
魔術効果を説明する。
「オレはレジェンドオブナイトが破壊される瞬間、魔術カードを発動していた。効果はレベル14以上のモンスターを生け贄に捧げることによって、カラースライム4体をデッキ墓地から召喚できる」
驚愕の事実に一郎は身を震わせた。
「さ、最初から……伝説のカードを……囮にする気だったのか……!」
さらに天空は手札をセットする。
「そして、魔術『
バトルボールのデッキから光が飛び出し、フィールドに
【 フリーダムドラゴン レベル7 属性 風 種族 ドラゴン族 】
「あ、あのドラゴンは、さっきの……」
空駆ける竜に真琴は反応する。
――モンスタープレイヤー達からカード受け取った天空は――。
『よしっ! この3枚のカードを入れればデッキ完成っと』
『えっ! そのカードは? たしか……』
『 心臓の病気でモンスタートランプをやめたとき、全部のカードは友達にあげたんだけど、この3枚の大切な友達から貰ったカードだけは肌身離さず持っているんだ 』
『そ、そんな大切なカードを……』
――闘技場の上には、フリーダムドラゴンとカラフルなスライムが4体。
魔術『
空中で5体のモンスターは一つとなり――。
まばゆい閃光が地上を照らした。
「 5属性合体! フリーダムゴッドドラゴン! 」
光が収束していき、空中には、黄金の竜が舞っていた。
【 フリーダムゴッドドラゴン レベル20 属性 光 種族 ドラゴン族 スキル? 】
神々しく荘厳な姿に真琴は心を奪われた。
「す、すごい……」
主である大空 天空は、黄金の竜に最終指令を下す。
「 フリーダムゴッドドラゴン! デスエンドマジシャンを攻撃! 」
空中から体勢を変えて、伊集院 一郎とデスエンドマジシャンを睨みつける。
「ふ、フン。だが、いくらレベルが高かろうと、デスエンドマジシャンには再生能力がある……!」
あからさまに強がる一郎に、スキル効果を告げる。
「フリーダムゴッドドラゴンは相手モンスターを破壊したとき、このモンスターのレベル分のダメージを与える!」
「 なッ、なにィ――ッ! 」
「これなら、再生能力は意味はない……!」
数多の経験により関東チャンピオンは、敗北を悟り恐怖におののく。
「 うわあああああああッ! ぼ、僕の計算は完璧なんだァァッ! 魔術『デスバスター』! 」
苦し紛れのように魔術を発動させると、黒衣の死神が両手の中に、闇のエネルギーを集束していった。
「 で、デスエンドマジシャンッ! そいつを、僕に近づけるなァァッ! 破壊しろォォ――ッ! 」
闇の波動が放たれ、黄金の竜に直撃――。
上空を黒い煙が覆い尽くした。
「や、やったか……!」
黒い煙が晴れていき――
「――ッ!」
黄金の竜が無傷で現われた。
「 フリーダムゴッドドラゴンは、あらゆる魔術を無効にする! 」
竜の眼光が一郎は貫き、全身をビクッと戦慄させた。
「 ひィィィィッ! 」
恐怖に怯える一郎に言い放つ。
「 これが、おまえがクズとバカにした力だァ! 」
関東チャンピオンの頭の中によぎる。
戦いが始まる前に言った言葉が――。
――ふふふっ。クズカードがいくら集まっても、超エリートの僕に勝てないことを教えてあげるよ――
自身の慢心に激しく後悔する。
黄金の竜は開いた口に究極エネルギーを収束していき――
「
放たれた神の
「 ぐ ぎ ゃ あ あ あ あ あ あ あ ッ ! 」
敗北者の悲鳴と、黄金の爆発が巻き起こった。
フリーダムゴッドドラゴンのレベル分のダメージ、20ポイントの超ダメージを受けて、ライフは【4】→【0】になった。
戦いが終了してアナウンスが流れる。
《 大空 天空選手のパーフェクト勝利です! 》
1ダメージも喰らわずに勝利すると、パーフェクト勝利となる。
結果的には、関東チャンピオンを圧倒するバトル展開で終わった。
主役の名前がアナウンスされると――。
ワ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ッ !
大歓声がドーム内に響き渡った。
「よし、勝った!」
大空 天空は満面の笑顔でガッツポーズを決めた。
敗北した一郎はショックのあまり全身をガクガクと震わせ、膝をついた。
「……あ、ああ、あ……。こ、この僕が……。最強無敵の超エリートの……こ、この、関東チャンピオンの僕が……ま、負けるなんて……」
白眼を向いてドサッと大の字で倒れ、
「……パパに言いつけてやる……」
最後に情けない言葉を残して気絶した。
倒れた場所とズボンには、黄色いシミが広がっていた。
戦いの光景を、ドームの壁に寄りかかり見つめていた『銀髪の少女』は、闘技場で喜び合う天空達に背中を向け――。
「……見つけた、『私の運命』の……ふふふっ」
妖しく微笑み、ドームから去って行った。
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